《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第7章 オレは、英雄公爵と並んで歩いています。始まりは、一人と一人でしたね。道なき道を切り拓きます。

192.二人の出会いが日本だったら、今頃は、どうしていたでしょうか。異世界で、幸せが立ち消えてしまった後のことを考えてしまいます。

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オレは、オレの煮えくり返る腹の中をなだめるために、クロードに寄り添う。

クロードは、いつまで、オレを頼りにしてくれるかな?

オレは、いつまで、クロードの守り手でいられるだろう?

クロードの側にいたい気持ちが強くなるにつれて、クロードとの別離への不安が高まる。

ウェディング・ウォークなのに。

幸せの絶頂にいるはずなのに。

オレは、今の幸せを信じきれなくなっている。

オレは、クロードの惚れた男であり続けたい。

日本にいたら。

オレとクロードが出会った場所が日本で。

日本で、恋人になっていたら?

オレは、オレ自身についてこんなに不安にならなかった。

日本で暮らしていたなら、オレは、ずっと、年上の余裕を保てたと思う。

家族や友人に祝福されていたかどうかは、不明だけど。

恋人や結婚について、家族とは、突っ込んだ話をしてこなかった。

いつか。

時が巡れば、良縁に恵まれる、とのんびりしていた。

良縁には恵まれたけどなー。

受け入れてもらえるかどうか、分からなくてもさ。
家族に、知らせたかった。

結婚したよ。

愛して、愛されているよ。

夫の愛は嬉しいけれど、家族に会えないのが、寂しいな。

元気にしているから、元気でいてな?

オレ、電話一本で、駆けつけることは、もうできないんだ。

オレの脳裏に家族、親戚、友達の顔がチラつく。

オレ、おめでとう、と言われたいなー。

結婚って、めでたくて、嬉しいものだと思っていた。

どうして、こんなに胸が締め付けられるんだろう。

公爵領にいたときは、こんなに感傷的にならなかったのに。

あ、公爵領にいたからか。

公爵領では、クロードを粗雑に扱う人はいなかった。

公爵の伴侶である、オレについても、クロードが、毎日オレに好き好きビームを出しているからな。


公爵の伴侶さまさま、と大事に扱われてきた。

お医者さんごっこをした妄想プレイルームは、公爵の伴侶がおねだりしたことになっていた。

それって、オレが
『普通のプレイじゃ、満足できない。』
みたいに思われていないか?
恥ずかしすぎる!

そういうところも含めて、オレは、大事にされてきた。

この温かさを知ったら。

こちらに来たばかりの頃のどうしようもなく心細くて、自分しか信じられなかった生活を、もう一度、最初から始めるなんてできない。

でも。

クロードとオレの仲が、うまくいかなくなったら、そんな未来は、遠からず、やってくるんだ。

オレは、誰かに、すがりたいんだと思う。

消えることなく、ふくらみ続ける不安が、破裂する前に、相談して、不安を解消したい。

日本にいたときは、そうしてきた。

そうやって、ちゃんと、生活してきた。

こちらにいると、オレが相談できる人は、一人もいない。

仕事のことに関しては、いる。

でも、オレの心の不安や、疑問を、オレは、一人で抱えて、一人で解決しないといけない。

オレの心の内の、柔らかくて深い部分を明かせる相手がいないから。

クロードには、話せない。

オレは、クロードの頼れる男でいたい。

クロードは、オレが寄り添うと、包み込むようにして、体温を感じさせていた。

安心する。

このぬくもりが、ずっとオレのものだと言えたらな。


王城の門の門番の顔が、判別できるくらいまで、オレとクロードは、目的地に近づいてきた。

王城の門番の顔には見覚えがある。

オレが、門から押し出されたとき。
門を開けなかったなー、あいつら。
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