《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
187 / 667
第7章 オレは、英雄公爵と並んで歩いています。始まりは、一人と一人でしたね。道なき道を切り拓きます。

187.女神様は、なんで、オレを異世界転移させたのですか?他にも条件に合う人はいましたよね。

しおりを挟む
「神子と英雄は、異性というのが通例なら、神子様が神子様を承諾するより前に、神子様に確認しないとダメだろう。」

「ぼくは、どっちでもいけるよ。
でも、女性限定なら、選ぶ前に知っておきたかった。
そうすれば、最初から、女性の中で探したのに。

国王陛下も候補に入っているし、他にも男が候補にいるから、どちらでもいいのかと思っていた。

ろくなやつがいないと思ったら、クロードが来たんだよ?

クロードを選ぶに決まっている。

クロード一択だよ。」
と神子様。

神子様は、どっちもアリだったのか。

経験豊富そうな気はしていた。

「メンバーを聞いたら、選ぶ余地がなー。

女神様が、そのメンバーに合いそうな相手を神子として連れてきたら良かったんだ。

神子様が来る方が、魔王の出現より後なんだから。
英雄候補の選出も済んでいただろうに。」

オレは、はあ、とため息をついた。

「女神様が、オレを異世界転移させたのもなー。」

「あなたは、クロードが選んだんだよ?」
と神子様。

神子様は、何を贅沢言っているのか、と言わんばかりに、オレを見ている。

でもなー。

「クロードに選ばせるなら、オレである必要はあったかな?」

「どういう意味?」
と神子様。

「クロードがオレに惚れた理由は、クロードを頼るんじゃなく、クロードを受け止めて、支えて、引っ張れるからだ。
クロードが英雄だと知らないことよりも、相性が問題だと思う。

クロードは、24歳で、突然両親を失い、その両肩に責任と仕事がおりてきた。

クロードに嫁取りさせたいなら、クロードと同じか、それ以上に仕事をすることができて、クロードが安心して甘えられる相手であることが、前提だ。

こちらには、オレしかいなかった。

でも。

日本になら、いるだろ?

オレは、日本の生活に不満なんて、なくはないが、我慢できる程度だった。

こちらに来てからは、不満がいっぱいだぞ?

そもそも、こちらに来たくなかったんだから。」

オレは、ずっと疑問に思っていて、誰にも打ち明けたことがない一言を初めて吐露した。
「なんで、オレだったんだよ。」
と。

「あなたは、本当に、来たくなかったんだ?」
と驚く神子様。

「オレは、会社関係者や家族、隣近所の人や友達に、腹を立てることはあっても、会いたくない、とまでは考えたことがなかった。
いなくなりたい、とも思ったことはない。

腹立つことが続いた後、事態が好転して喜んでいたところだったんだ。
早く戻りたくて、戻りたくて、ずっと必死だった。

なんで、オレは、戻れない。

考えていたことがある。

神子様は、色々経験したけれど、この世界にいたいと思うか?

日本で暮らすよりも?」

「ぼくは、こちらに、というより、元の世界にいたくない。」
と神子様。

「オレは、日本に残してきたものが、心残りが、たくさんある。日本に帰れるなら、帰りたい。」

「あなたが、帰るのは、できないんじゃなかった?」
と神子様。

「試したいんだ。試さないと諦めきれない。」

「失敗したら、変わらないけれど、うまくいったら?クロードは?」
と神子様。

「戻って来る。必ず戻って来るから、一度帰りたい。盆と正月は、帰る習慣にしたい。」

「そんなに帰りたいんだ?」
と神子様。

「強制的に、オレの29年の人生を投げ出すことを余儀なくされたけれど、オレは投げ出すことに、納得していない。」

「未練があるの?」
と神子様。

「未練しかない。」

「ぼくと正反対。ぼくは、元の世界なんて全部いらないのに。うまくいかないよね。」
と神子様は、残念そうだ。

「神子様は、元の世界にいたくない、こちらにいたい、ということだよな。
オレは、日本に帰りたい。 
神子様、今から話すオレの提案に乗らないか?」
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

BL短編まとめ(現) ②

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...