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第7章 オレは、英雄公爵と並んで歩いています。始まりは、一人と一人でしたね。道なき道を切り拓きます。
186.『クロードを見たとき、汚泥に咲く蓮の花を見つけた、と思ったんだよ。クロードは、ぼくにはずっと、英雄公爵クロードだったんだよ。』
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オレと神子様は、密談をしている。
神子として、大事にされているという感覚は、そう思うように仕向けられてきたと知った神子様。
「ぼくは、こちらの社会について、何も知ろうとしてこなかった。
神子として招かれるんだから、特別大事にしてもらえるものだと信じていた。
ぼく自身で、何かをする必要があるなんて、考えたこともなかった。
思い返したら、女神様は、ぼくに、綺麗事は言わなかった。
約束だからかな。
ぼくは、自分に都合よく解釈して、神子になった。
神子として、こちらに来てからのぼくは、こちらの住人に怒りが湧いて仕方がなかった。
ぼくの身の回りには、俗物か愚物しかいないって、嘆いては、軽蔑してきた。
クロード以外は。
クロードだけは、他と違った。
クロードに会ったとき、ぼくは、汚泥の中に、蓮の花を見つけた、と思ったよ。
ぼくは、神子として生きるための全てが、保証されていて、神子としてこちらに来たら、悪いことは何も起きなくて、幸せになれるんだと思っていた。
全部、ぼくの思い込みだって、知った。
ぼくといたクロードは、ぼくが神子だから、ぼくには英雄として振る舞っていたんだ。
ぼくが恋い焦がれていたのは、英雄公爵クロード。
ぼくは、クロードが、皆に見せていた一面を好きになったんだ。
クロードは、英雄になりたかったわけじゃない。
神子のぼくが選んだから、クロードは、英雄になった。
クロードは、英雄公爵として、色んな人から求められてきたけれど、クロードの本質は、英雄じゃなかったから、クロードは、誰の好意も受け取らなかった。
クロードが、迷わずあなたを選ぶ直前まで、クロードが選ぶのは、ぼくだと信じていたから。
目の前の光景が信じられなかった。
直前まで、あんなに、優しくしてくれていたのに、どうして、ぼくを選ばない?
ぼくは理解が追いつかないままだったけど、国王陛下が、あなたを殺そうしたから、国王陛下を止めているうちに、クロードとあなたはいなくなっていた。
あの後から、国王陛下のぼくに対する扱いは、悪くなったと思う。
計画が思い通りにいかなかったせいで、国王陛下の機嫌が悪いんだ、と、思ったぼくは、深く考えていなかった。
ぼくの神子としての価値は、英雄公爵クロードが選ばなかったときに、国王陛下の中では、ないに等しいものになっていたんだよ。
神子のぼくが国王陛下と対等だったのは、神子と英雄が、魔王を討伐するまで。
後は、下り坂。
あなたは、気づいたんだよね?
ぼくが、気づいていないことも含めて。」
と神子様。
「オレは、最初、知らない町にいて、その日暮らしだった。
理由も状況も分からない。
自分以外は信用出来ないと思っていた。
出発点の違いが、考え方を左右したとオレは思うぞ。」
「ふーん。」
神子様は、理解しつつも、素直に頷きたくない様子。
「オレが来たのは、魔王討伐の後。女神様に会っていないオレは、魔王がいたことは勿論、クロードが英雄だということも知らなかった。
クロードが、英雄になりたくないと思っていたんだったら、オレがクロードは英雄だと知らない点が、クロードにとって、大事なきっかけになったかもなー。」
神子様は、悔しそうに口を噛み締めている。
「前から思っていたんだけど、オレも神子様もクロードも、オレ達三人は、誰も悪くないからな?
女神様が、人選を誤った、これに尽きる。」
神子様は、ぽかんと、オレを見た。
「女神様の人選?」
神子として、大事にされているという感覚は、そう思うように仕向けられてきたと知った神子様。
「ぼくは、こちらの社会について、何も知ろうとしてこなかった。
神子として招かれるんだから、特別大事にしてもらえるものだと信じていた。
ぼく自身で、何かをする必要があるなんて、考えたこともなかった。
思い返したら、女神様は、ぼくに、綺麗事は言わなかった。
約束だからかな。
ぼくは、自分に都合よく解釈して、神子になった。
神子として、こちらに来てからのぼくは、こちらの住人に怒りが湧いて仕方がなかった。
ぼくの身の回りには、俗物か愚物しかいないって、嘆いては、軽蔑してきた。
クロード以外は。
クロードだけは、他と違った。
クロードに会ったとき、ぼくは、汚泥の中に、蓮の花を見つけた、と思ったよ。
ぼくは、神子として生きるための全てが、保証されていて、神子としてこちらに来たら、悪いことは何も起きなくて、幸せになれるんだと思っていた。
全部、ぼくの思い込みだって、知った。
ぼくといたクロードは、ぼくが神子だから、ぼくには英雄として振る舞っていたんだ。
ぼくが恋い焦がれていたのは、英雄公爵クロード。
ぼくは、クロードが、皆に見せていた一面を好きになったんだ。
クロードは、英雄になりたかったわけじゃない。
神子のぼくが選んだから、クロードは、英雄になった。
クロードは、英雄公爵として、色んな人から求められてきたけれど、クロードの本質は、英雄じゃなかったから、クロードは、誰の好意も受け取らなかった。
クロードが、迷わずあなたを選ぶ直前まで、クロードが選ぶのは、ぼくだと信じていたから。
目の前の光景が信じられなかった。
直前まで、あんなに、優しくしてくれていたのに、どうして、ぼくを選ばない?
ぼくは理解が追いつかないままだったけど、国王陛下が、あなたを殺そうしたから、国王陛下を止めているうちに、クロードとあなたはいなくなっていた。
あの後から、国王陛下のぼくに対する扱いは、悪くなったと思う。
計画が思い通りにいかなかったせいで、国王陛下の機嫌が悪いんだ、と、思ったぼくは、深く考えていなかった。
ぼくの神子としての価値は、英雄公爵クロードが選ばなかったときに、国王陛下の中では、ないに等しいものになっていたんだよ。
神子のぼくが国王陛下と対等だったのは、神子と英雄が、魔王を討伐するまで。
後は、下り坂。
あなたは、気づいたんだよね?
ぼくが、気づいていないことも含めて。」
と神子様。
「オレは、最初、知らない町にいて、その日暮らしだった。
理由も状況も分からない。
自分以外は信用出来ないと思っていた。
出発点の違いが、考え方を左右したとオレは思うぞ。」
「ふーん。」
神子様は、理解しつつも、素直に頷きたくない様子。
「オレが来たのは、魔王討伐の後。女神様に会っていないオレは、魔王がいたことは勿論、クロードが英雄だということも知らなかった。
クロードが、英雄になりたくないと思っていたんだったら、オレがクロードは英雄だと知らない点が、クロードにとって、大事なきっかけになったかもなー。」
神子様は、悔しそうに口を噛み締めている。
「前から思っていたんだけど、オレも神子様もクロードも、オレ達三人は、誰も悪くないからな?
女神様が、人選を誤った、これに尽きる。」
神子様は、ぽかんと、オレを見た。
「女神様の人選?」
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