《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

第6章 異世界で公爵の伴侶やってます。溺愛とは、何でしょうか。

176.友情を秤にかける友人の実像にショックをうけても、ショックを言い表す言葉を知らないんです。この束縛は、不安感からきているんですよ。

オレは、医者と司祭から、情報収集したり、打ち合わせをして、二人を隔離した客室へと案内するように指示した。

医者と司祭は、オレと国王陛下の綱引きの優位な方につくと、オレは、クロードに説明した。

医者と司祭は、友情よりも、愛に生きている。

医者より、司祭の方が、持っているものが多い分、情勢に敏感だ。

医者は、政争に負けても、傷を負わないが、司祭は瀕死の状態になるからな。


司祭によると、英雄は女神様と話ができる。

クロードは、女神様と話をしたことがない。

クロードは、女神様と話せると知らなかったから、女神様と話す発想がなかった。

でも、それだけかな？

女神様は、オレの前に顕現している。

オレに加護を与えるために。



今、オレは、クロードの腕の中にいる。

場所は、夫婦の寝室のベッドの上。

なー、クロード。

今から、夜の部が、始まったりしないよなー？

昼の部、夜の部の二部制とか、まさかな？

オレは、一日、二回も舞台に立つ体力はないぞー？


クロードは、オレを抱え込んだ。

ああ。
夜の部は、心のよしよしだな。

クロードの周りは、クロードが思うよりも、友情に厚くない。

クロードとの友情と何かを秤にかけると、クロードとの友情は、羽根のように軽い。

クロードの周りの友人は、羽根のようにクロードとの友情を指でつまんで捨てることをためらわない。

今日、クロードは、初めて友人の中にあるクロードへの友情の重さを実感した。

司祭は、国王陛下よりも良心的だと思う。

互いに、利のある関係が続くなら、今後も友好的でいる、と示唆してきた。

友人の皮を被った敵より、ずっとやりやすい、と思うけど、そういう判断を下すのは、オレが司祭に友情を感じていないからだ。

オレも司祭も、シビアに相手を見定めて、一応の合格点を出しあった。

クロードは、『ケレメイン公爵』と言いながらも、友人の友情の表れだと喜ぶ気持ちがあった。

でも、クロードの友人は、友情を秤にかける友人だ。

友人の言動に振り回されて窮地に立つことをクロードが繰り返さないため、味方でいるうちに、友人の実像をクロードに認識させておきたかった。

味方のうちに見せてくる姿は、悪辣にはならない。

ショックを受けるのは承知の上で、クロード自身の前で、オレは、友情ではなく、オレに肩入れしにきたのだと断言した。

国王陛下のように、徹底的にこじれて、敵対してしまっては、もう、どうにもならない。

だけど、司祭は、オレ達が勝てば、クロードの友人で居続ける。

今のクロードには荒療治だけど、クロードが、国王陛下に勝利するには、避けては通れない。

オレは、オレとクロードの未来のためにも、勝ちにいかないとな。


「クロード、今日も、たくさん頑張って、偉かったなー。たくさん頑張ったクロードをよしよしするぞ。」

オレは、クロードの頭から顔から、肩から、手の届く範囲を何度もよしよしした。

クロードは、ショックを受けても、ショックを表現する言葉を知らない。

どう受け止めていいかも分からない。

どう対処していいかは、もっと分からない。

自分自身の傷ついた心をどうすれば良いか分からなくて、安心感を求める気持ちが、オレの束縛に繋がっているんだろうな。

今は、束縛されてやるよ。