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第6章 異世界で公爵の伴侶やってます。溺愛とは、何でしょうか。

131.オレVS医者。『オレは、あんたの本性を知っている。国王陛下の狗さん?奇妙奇天烈な芝居は、オレ向けじゃないよな?』

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‥‥‥数日間の野宿を経て、ようやくアルスたちはダンジョン都市へ到着した。

 とはいえこのダンジョンとしては帝国のものではなく、グラーダ共和国と言う国の持つ都市の一つであり、首都とかではない。

「それなのに、学園が存在するのか‥‥‥‥」
「普通、教育機関は国の中心となる都市に作られやすい。けれども、この都市はダンジョンがあり、それを利用しての科目があるからこそ、ここに共和国の学園があるのよ」
【キュル、ダンジョン、教育利用…‥‥変わっている、かも】

 ずずずっと、喫茶店内で注文したジュースを飲みつつ、僕らは今、帝国の第1皇女でもあるアリスと再会していた。

 帝都の方で色々やったからこそ、今年の夏は帰郷せずにここに留まる気らしいのだが、それでも特に気にしている様子はないらしい。

 むしろ、ダンジョンを探索できる機会が増えて楽しんでいるようだ。

「でも、護衛の騎士が増えているのはちょっと堅苦しいかな」
「そりゃ、やらかした後だしね…‥‥」

…‥‥まぁ、そもそも色々あったのだが、彼女を狙うような人はいたりするらしい。

 何しろエルスタン帝国の第1王女でもあるからこそ、権力欲とか帝国への攻撃材料とか、色々考える輩は出るからね。

 あの襲撃も、元をただせば彼女を狙った者たちによるものでもあるし…‥‥護衛を増やすのはおかしくはないだろう。

 とは言え、喫茶店の周囲を数人の騎士の鎧を着た人たちが回っているのも堅苦しいと思わないわけでもないけどね。

 
「とは言え、ハクロの故郷らしい情報ね‥‥‥‥こちらでも色々探ってみたけどね、やっぱり出ないのよ」
「出ないというと‥‥‥蜘蛛系のモンスターの情報ですか?」
「ええ、そうね。大きな群れであれば、直ぐに報告があったはずなのに…‥‥そんな情報もない。けれども、色々な証言などもあって、ココの可能性がある…‥‥そう言う事なのか、わからないわね」

 ハクロやベイドゥの話から推測すると、元々至群れの数などからかなり大きな集団だったはずである。

 特に、ハクロの母親蜘蛛…‥‥大体の予測だとマザータラテクトとかそのあたりに当たるモンスターのサイズもかなり大きいらしく、目立つそうだ。

 それなのに、このダンジョン都市の中央とも言うべき建物‥‥‥ギルド、と呼ばれるようなところの記録では、群れの情報が無かったそうなのだ。

「まぁ、気になるならやっぱり直接行った方が良いかもね、わたしも気になるし、これからギルドへ行って、探索の許可をもらいましょう」
「すぐにできるの?」
「んー、今日直ぐには無理ね。申請して、手続きが色々あって…‥‥安全の確保なども考えると、早くても明日の朝までかかるわ」


…‥‥よくある異世界転生物だと、定番の冒険者とギルド。

 大体の形としては、その定番通りと言うべき部分もあるそうだが、それでもやはり違う部分が存在しており、手続きが色々とあるそうだ。

 ダンジョン自体が国に管理されているのもあり、正式な手続きをしても明日までかかるようだ。

「まぁ、そこまで急ぎでもないから別に良いか。ハクロも急がなくていいよね?」
【キュル、良いよ。アルスと一緒なら、問題ないよ】
「なら、大丈夫ね。…‥‥とりあえず、正式な手続きをしておきましょうか」

 そう言いながら喫茶店での支払いも済ませ、僕らはそろってダンジョンのすぐそばに作られているギルドとやらへ向かうのであった。

「あ、騎士の人達も付いてくるんだ」
「わたしの護衛でもあるからね。とはいえ、帝国所属なのも変わりないので、ダンジョンへ潜るには色々と手続きも必要なのよねぇ」





…‥‥そしてギルドまでの道中で、ダンジョン都市内を見渡しながら歩いていたが、ある事に気が付いた。

「そう言えば、ダンジョン産なのか、魔道具の数が多いような…‥‥」
「あら、そうよ。ダンジョンから出る魔道具はここですぐに消費されていたりするのね」

 ダンジョンでは、何故か魔道具が出現することがある。

 モンスターが湧くので定期的に狩る必要があるのだが、その最中に出てきたりして、何かと便利なものが多いようだ。

 今のこの世界にも魔道具を作る技術は存在するそうだが、それでもダンジョン産の魔道具の方が性能が非常に高く、動力源としては人が持つ魔力やモンスターからとれる魔石が利用されるようで、ダンジョンが存在するからこそここでの生活に根付きやすいそうである。

「とは言え、全部きちんと、国に届け出をして許可を取らないといけないのよね。どこの国でも同じだけれども、理由としては時に危険なものも出るのよ」

 ダンジョン産の魔道具だからこそ、どの様なものが出るのかがわからない。

 大型の爆弾だったり、モンスターを引き寄せるお香だったりするなど、非常に危険な例も存在したようで、だからこそ届け出をして使用の許可をもらう必要があるそうだ。

「そういうものか…‥‥ギルドでも、魔道具を見れるのかな?」
「ええ、そうね。と言うか、ダンジョン探索‥‥‥いえ、見学用にも色々とあるのよ」

 取りあえず、説明するよりも見たほうが早いようで、ここで詳しい説明を省くらしい。

【‥‥‥魔石、ね】

 っと、都市内で多くの魔道具を見かけている中で、ふとハクロがぽつりとつぶやいた。

「ん?あ、ハクロもモンスターだし…‥‥魔道具の動力源に魔石が使用されるのは気になるの?」
【気になると言えば、気になるけど…‥‥あれって、私とか、モンスターの中にある石だよね?なのに、どうやって魔道具が動くのか、不思議に思えるの】

 普段体内に存在しているが、そこまで気にすることは無いらしい。

 だからこそ、人がこういう形で利用するのは、モンスター側からするとどうやって動力を得ているのかが不思議に思えてしまうそうだ。

【体の中に、ある。けれども、普段気にしない…‥‥そんなものを、どうやって利用するって思いついたのか‥‥‥気になるかも】
「言われてみればそうかも…‥‥モンスターの魔石って、魔道具の存在を知らなければただの宝石のように見えたりするからね」
「そのあたりは、実はまだわかっていないこともあったりするのよねぇ。そもそも、今でこそモンスターの魔石を動力源にして動かしたりするけれども、最初に誰がこんな利用方法を思いついたのか、謎に包まれているのよね」

 まだまだ世界には謎があるというか、自然に使っていても疑問に思うと謎になるものもあるようである。

 気になりはするけれども、今はまず、ギルドとやらへ向かって手続きをすることにするのであった‥‥‥‥










‥‥‥ダンジョン『ゲードルン』の側にある建物、ゲードルン支店ギルド。

 ここでは、ダンジョン内に国から派遣されて定期的に狩りを行う騎士以外にも、ダンジョン内に挑む冒険者たちが滞在していた。

 基本的に、ダンジョン内は国がしっかりと管理して、その中身があふれ出さないようにしつつ、資源を採取することが多い。

 けれども、中には目にも見たことがないお宝が眠っていることもあり、それを求めてダンジョン内を探索する人たちもいるのだ。

 とはいえその命は一度限りであり、挑むのであればそれなりに心しなければならない。

 自己責任でもあり、入るためにはきちんと保険もかけたりと、何かと手続きがあるのだ。

 それでも、得られるかもしれない利益を夢見て挑む者たちは絶えず、また、ダンジョンの中には美しい光景が広がる場所も存在していることもあるので、観光地化してそこまでの護衛として職を得る人たちもいるのだ。

 ダンジョンひとつで、ある程度の資源確保と利益の確保が可能であり…‥‥だからこそ、こうやって冒険者たちを制御するようなギルドができるのも当たり前であった。

 なお、アルスの前世のラノベにあるようなギルド内のテンプレなどに関しては、数が少なかったりする。

 と言うよりも、問題を起こすような類の人ほど命を落としやすいのもあって、わりとスッキリとしているのだ。


「‥‥‥しかしねぇ、今日も騎士様方は狩りに行ったが、お宝と言うのは巡り合いにくいな」
「ああ、既に出土している魔道具だったりするし、中々珍しいのはないんだよなぁ」

 そんな中で、とある冒険者の二人組は、ギルド内に設けられた休憩所で愚痴をこぼし合っていた。

 一獲千金を夢見て冒険者として来たのは良いのだが、中々そう容易くはいかない。

 それでも、夢見る豊かな生活のためにも、諦めずにここに足を運んでいた。

「大抵、騎士たちが排除しているから楽に進めたりはするが‥‥‥その分、美味しい物はそうそうないからなぁ」
「ダンジョン内で自然発生するけれども、タイミングよく出くわしにくいしな」
「もっとこう、美味しく生きたいけど、そううまくいかないなぁ‥‥‥」

 夢見つつも厳しい現実に、溜息を吐く冒険者たち。

 それでもあきらめることはせず、武器の手入れなどもしていた時に‥‥‥‥ギルド内が突然、騒がしくなった。

――ざわざわっ、ざわっ
「おい、あれって皇女様だよな‥‥‥」
「ああ、帝国からので、たまに来る方だが‥‥‥」


「‥‥‥ん?なんか騒がしいな」
「話し声からだと、皇女様‥‥‥ああ、帝国から来たという方か」

 エルスタン帝国の皇女の名は、このギルド内ではそれなりに知れ渡っていた。

 と言うのも、先日のモンスターの突然の発生で行方不明になった話などがあり、無事を祈っていたらきちんと帰ってきたなどと言う話などもあるので、そこそこ有名になっているのである。

 また、学園の科目で生徒たちがここへ訪れることもあり、その生徒たちの中でも皇女という肩書は目立つので、何かと注目はされていた。

「でも、ここまで騒ぐほどだったか‥‥いや、違うな、皇女様だけじゃないぞ、ありゃ」
「んんん?どれどれ…‥‥おうっふぅ、なんだ、あの美女‥‥‥」



‥‥‥ここに訪れたのが、皇女とその護衛の騎士だけであれば、そう気に賭ける事もなかっただろう。

 一国の皇女と言う身分がいるのは驚きだが、それでも国際問題にならないように、それなりに気が使われるからだ。

 だがしかし、今回は彼女だけではないようで…‥‥何やら誰かとともにいる様子。

 一緒にいる小さな少年は彼女の友人なのか、親戚なのかはわからないがそちらはどうでもいいとして‥‥‥彼らの目に着いたのは、その彼の後方について歩く美女だろう。

 大きな白い蜘蛛の身体が腰辺りから生えているように見えつつも、その容姿は絶世の美女。

 くびれた腰に、すらっとしたら体に、豊満な胸。全体的に白い清楚な印象を持たせつつも妖艶さも兼ね備えており、それでいてどことなく可愛らしさもにじみださせている様子。

 モンスターであるようで、そんな物はこの都市だと馬車の牽引などに利用されているシーホースやメタルホースなどを見るのだが‥‥‥明らかに比較するのばかばかしいほどの美女でもあるようだ。


「‥‥‥本当に、誰だあの美女。皇女様と親しく話しているようだが、あの少年にも懐いているというか‥あ、美女と言うよりもなんか猫っぽい」
「可愛らしく美しく‥‥‥そう言えば、今朝から何か噂のように流れていたものがあったが、もしやあれか?」
「と言うか、皇女様の友人なのだろうか‥‥‥どこかの部族の姫だとか聞いても、おかしくはねぇぞ」
「そう言えば、エルスタン帝国の方で美女のモンスターが‥‥‥と言う噂もあったような‥‥‥眉唾物だと思っていたが‥‥‥本当だったのか?」

 色々と声が飛び交うも、彼女達に声をかけられない。

 皇女がいるというのもあるし、ギルド内では見ることが無いような美女であるし、声をかけづらい。

 ただ一つ言えるのであれば、時折少年の方にくっ付きつつ、甘えている様子も見せるのは可愛らしくもあり、どことなく守ってあげたくなるような心を抱くことぐらいか。


 何か手続きをしていたようで、ほんの十数分程度の滞在ではあったが、感覚としては何時間もいたような気がする。

 その美しい容姿に見惚れ、気が付けばいなくなっていた。


「‥‥‥何だったのだろうか、あの美女は。いや、もしやこれが、白昼夢と言うやつか?」
「おい、夢じゃないことを証明させろ。お前を殴って手が痛くなれば、夢じゃない」
「さらっと殴るな!!」

 とにもかくにも、突然現れた美女に驚愕させられ、詳細を聞く機会が無かった。

 けれども、あれだけの美女はなんとしてもお近づきになりたいような気持も沸き、どの様な人だったのか思い思い心の中で光景を思い出していく。

‥‥‥何かとテンプレのような悪い人はおらず、それなりにすっきりした人はこのギルド内に多いのだが、それでも突然の美女への対応は、誰もが不得意のようであった。


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