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第6章 異世界で公爵の伴侶やってます。溺愛とは、何でしょうか。
123.自分の中に、嫉妬の炎が燃え盛っていることを知りました。嫉妬の炎は一度火がついたら、消えることはないのでしょうか?
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クロードが、オレの名前を呼んだ。
それだけのこと。
オレは、笑っていた。
嬉しい。
気付いてくれた。
オレのこと。
動かない神子様と、元気なオレがいて、神子様を心配するのは、良く分かる。
オレも神子様を心配していた。
だけど、見てしまった。
神子様への純粋な心配が、全て、真っ黒に塗り替えられていった。
嫉妬。
オレ、嫉妬している。
神子様に。
仲良く笑い合っていた神子様に。
クロードをとらないで。
クロードには、オレを見てほしい。
他の誰かじゃなくて、オレだけを。
クロードと友達以上恋人未満だった神子様に駆け寄ったクロード。
オレに見向きもせず、部屋を走り出たクロード。
クロードが冷たくしながらも、嫌い合っていた関係じゃなかったクロードと神子様。
今まで、二人の過去を気にしたことなんて、なかったのに。
オレの目の前で、二人の繫がりを目の当たりにしたからかな?
クロード、今、オレのことを忘れていなかった?
オレは、ここにいるよ。
クロードの伴侶は、オレだよ?
さざ波が起こる心を隠して、神子様の近くにいったオレ。
クロードのしたことは、神子様の命を救う行為なのかもしれない。
でも。
クロードは、オレの。
クロードの全ては、オレのなのに。
そう思ったら、もう、止まらなくなっていた。
クロードが神子様を抱きかかえている姿が。
クロードの口が、オレも知らなかった神子様の名前を呼んでいる光景が。
クロードの唇が、神子様の。
クロードが慌てて、動いたような気がした。
オレは、ドンと強い衝撃を感じた。
「ヒサツグ」
とクロードの声がして。
オレとクロードは、床に転がっていた。
「オレ、生きている?」
「私は、ヒサツグを離さないと言った。嘘ではない。」
クロードは、勢いよくオレに体当たりしながら、オレを引き寄せて転がり、医者の振り下ろされた腕から見えた凶刃を避けていた。
オレは、助かった。
助かったのに、喜びを罪悪感が上回る。
クロードが、神子様じゃなく、オレの側にとんできてくれた。
オレの心は、幸福に満ち足りていてもおかしくはないのに。
オレが助かったのは、クロードが神子様を投げ出した結果で。
クロードが、オレを選んでくれた安堵はすぐに、神子様を投げ出させた後悔に入れ替わる。
オレは、自覚している。
オレは、選ばれたから、クロードに神子様を投げ出させたことを後悔する余裕があるんだ。
もし、クロードが、オレのところに来てくれなかったら。
オレは、絶望しながら、自分で避けただろうか?
クロードが神子様を大事に抱える姿を目に焼き付けながら?
何もかも投げ出して、凶刃を受けただろうか?
分からない。
分からないけれど。
嫉妬は、苦しくて、もどかしくて、自分の行動さえ、ままならなくする。
オレは、自分が恋に溺れるタイプじゃないと思っていた。
違った。
感情も行動もコントロールを失うくらいの恋をしてこなかったんだ、オレ。
オレは、余裕じゃない。
余裕なんか、全然ない。
クロードが、オレじゃない誰かを優先するとなったら。
オレは、また嫉妬してしまう。
嫉妬に狂って、呼んでしまう。
何度でも。
嫌われたら、どうしよう、と心配しながら、試してしまうと思う。
オレに、こんな一面があったなんて。
医者は、騒ぎを聞きつけた武官に取り押さえられている。
そうだ。
クロードに、謝らないと。
オレの嫉妬心がしでかしたことを謝らないと。
でも。
同じ局面になったら、オレは、また同じことをする。
こんなオレだけど、まだ愛してくれるかな?
「クロード。
オレは、逃げなかった。
オレは、神子様に嫉妬した。
神子様じゃなく、オレを選んでほしくて。
わざと動かなかった。
ごめん。
でも、同じ局面がきたら、オレは、同じことをする。
嫉妬に狂って、クロードの愛を試したオレをクロードは、まだ愛していると言ってくれるかな?」
オレは、クロードを見ていた。
オレは、不安で、怖い恋なんてしたことがない。
クロードの返事を聞くためには、勇気が必要だった。
「クロード、返事してくれ。」
それだけのこと。
オレは、笑っていた。
嬉しい。
気付いてくれた。
オレのこと。
動かない神子様と、元気なオレがいて、神子様を心配するのは、良く分かる。
オレも神子様を心配していた。
だけど、見てしまった。
神子様への純粋な心配が、全て、真っ黒に塗り替えられていった。
嫉妬。
オレ、嫉妬している。
神子様に。
仲良く笑い合っていた神子様に。
クロードをとらないで。
クロードには、オレを見てほしい。
他の誰かじゃなくて、オレだけを。
クロードと友達以上恋人未満だった神子様に駆け寄ったクロード。
オレに見向きもせず、部屋を走り出たクロード。
クロードが冷たくしながらも、嫌い合っていた関係じゃなかったクロードと神子様。
今まで、二人の過去を気にしたことなんて、なかったのに。
オレの目の前で、二人の繫がりを目の当たりにしたからかな?
クロード、今、オレのことを忘れていなかった?
オレは、ここにいるよ。
クロードの伴侶は、オレだよ?
さざ波が起こる心を隠して、神子様の近くにいったオレ。
クロードのしたことは、神子様の命を救う行為なのかもしれない。
でも。
クロードは、オレの。
クロードの全ては、オレのなのに。
そう思ったら、もう、止まらなくなっていた。
クロードが神子様を抱きかかえている姿が。
クロードの口が、オレも知らなかった神子様の名前を呼んでいる光景が。
クロードの唇が、神子様の。
クロードが慌てて、動いたような気がした。
オレは、ドンと強い衝撃を感じた。
「ヒサツグ」
とクロードの声がして。
オレとクロードは、床に転がっていた。
「オレ、生きている?」
「私は、ヒサツグを離さないと言った。嘘ではない。」
クロードは、勢いよくオレに体当たりしながら、オレを引き寄せて転がり、医者の振り下ろされた腕から見えた凶刃を避けていた。
オレは、助かった。
助かったのに、喜びを罪悪感が上回る。
クロードが、神子様じゃなく、オレの側にとんできてくれた。
オレの心は、幸福に満ち足りていてもおかしくはないのに。
オレが助かったのは、クロードが神子様を投げ出した結果で。
クロードが、オレを選んでくれた安堵はすぐに、神子様を投げ出させた後悔に入れ替わる。
オレは、自覚している。
オレは、選ばれたから、クロードに神子様を投げ出させたことを後悔する余裕があるんだ。
もし、クロードが、オレのところに来てくれなかったら。
オレは、絶望しながら、自分で避けただろうか?
クロードが神子様を大事に抱える姿を目に焼き付けながら?
何もかも投げ出して、凶刃を受けただろうか?
分からない。
分からないけれど。
嫉妬は、苦しくて、もどかしくて、自分の行動さえ、ままならなくする。
オレは、自分が恋に溺れるタイプじゃないと思っていた。
違った。
感情も行動もコントロールを失うくらいの恋をしてこなかったんだ、オレ。
オレは、余裕じゃない。
余裕なんか、全然ない。
クロードが、オレじゃない誰かを優先するとなったら。
オレは、また嫉妬してしまう。
嫉妬に狂って、呼んでしまう。
何度でも。
嫌われたら、どうしよう、と心配しながら、試してしまうと思う。
オレに、こんな一面があったなんて。
医者は、騒ぎを聞きつけた武官に取り押さえられている。
そうだ。
クロードに、謝らないと。
オレの嫉妬心がしでかしたことを謝らないと。
でも。
同じ局面になったら、オレは、また同じことをする。
こんなオレだけど、まだ愛してくれるかな?
「クロード。
オレは、逃げなかった。
オレは、神子様に嫉妬した。
神子様じゃなく、オレを選んでほしくて。
わざと動かなかった。
ごめん。
でも、同じ局面がきたら、オレは、同じことをする。
嫉妬に狂って、クロードの愛を試したオレをクロードは、まだ愛していると言ってくれるかな?」
オレは、クロードを見ていた。
オレは、不安で、怖い恋なんてしたことがない。
クロードの返事を聞くためには、勇気が必要だった。
「クロード、返事してくれ。」
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