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第6章 異世界で公爵の伴侶やってます。溺愛とは、何でしょうか。

113.動いている的と、止まっている的。どちらが狙いやすいでしょうか?

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「神子様ー!返事してください。」
と医者の妹。

あのな、医者の妹。

クロードとオレの結婚式だから。

神子様の記者会見でも、コンサートでもないぞ。

「オレとクロードの結婚式だぞ。」
オレは、司祭に、進むように促す。

「退いて、退いて。私は、神子様の侍女なんです。通して、通して。ちょっと、神子様の侍女の邪魔をしていいと思っていないわよね?」
ぐいぐい体を押し込んでいる様子が、うかがえる。


「国王陛下が、あの子を任命したんだよ。
ぼくはクビにしたかったのに、ぼくには、遠ざける権利しかない。」
と神子様。

神子様に、誰を使用人としてつけるかは、国王陛下の権限だからな。

医者の妹に、国王陛下の息がかかっていると分かった以上。

追いつかると危険だな。

ならば。

オレは、くるりと振り返った。

「医者と医者の妹。
二人は、公爵の伴侶たるオレと、公爵家を侮った。
公爵の伴侶たるオレは、二人が公爵家の敷居をまたぐのを禁止している。
ここは、公爵領。
出ていけ。
二度と、足を踏み入れるな。」

「神子様の侍女に、そんな口をきいても、いいと思っているの!」
と医者の妹。

「オレは神子様の友達だから、侍女より上だなー。二人とも、今すぐ、出ていけ。」

オレは、その場で、立ち止まって、医者の妹と向き合う形になっていた。

その時。

オレは、口しか動かしていなかった。

英雄クロードと神子様からオレだけ、半歩以上前にずれていたことにも気づけなかった。

オレは、神子様から、警告されたとき、恐ろしい話だと、警戒した。

オレは、警戒していたけれど、認識が甘かった。

その時。
オレは、医者の妹に気を取られていた。

周りも、神子様の侍女だと騒ぐ医者の妹に注意を向けていた。

医者の妹は、騒ぎながら、近付いてくる。

オレに、近付いてきた。

なんで、医者の妹は、近付いてこれる?

医者の妹は、周りの群衆を押しのけるほどの怪力の持ち主?

分からんが、お茶会で、公爵家のモノを壊してはいなかった。

医者の妹が強いんじゃなく、周りが弱いんだ。

医者の妹の周りにいた人、弱そうだったかな?

ピンポイントで、医者の妹の通り道だけ、医者より弱い人が集まっている?

そんな偶然あるかな?

偶然?

偶然じゃなかった、としたら?

そうであるように、仕組んだ?

医者の妹は、一人で、何をしようとしている?



うん、医者の妹一人で?

もう一人いたはず。

医者の妹の隣にいた医者はどこだ?

オレは、医者の姿を探した。

医者がいない!

オレが、医者の妹から、目を離すのはまずい。

オレは、両手を伸ばした。

クロードと神子様に向けて伸ばしたオレの手は、空を切った。

「クロード、神子様。」
オレは、医者の妹から、視線を外さないままで、クロードと神子様を呼んだ。

医者の妹は、オレに近付いてくる。

オレは、何が出来る?
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