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第5章 いつになったら、日本に帰れますか?

74.『公爵、魔王討伐の英雄を辞めて、オレの英雄になりにこい。待っているぞ?』誘拐されたままです。オレと七人の配下は、理解し合えません。

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オレは、部屋の中にいるオレ以外の男共の体躯を目視で確認する。

男共は、公爵家の分家の男を含めて七人。

せめて、一人ならな。

不意をつけたら、なんとか、さ。

七人は、な。


オレは、運動を真剣にやったことはない。

日本にいたときは、やりたいと思ったこともない。

誘いにはのるけど、熱意も才能もないので、体験一回で終了。

この世界に来てからは。
運動は、公爵と一緒に、ラジオ体操や柔軟ぐらい。

オレに、体力自慢はできない。

スケボーとか、無理な人だから。

キックボードも、スピード出すと、転ぶ。

ローラースケートは、靴を履いたら、立てないで、ズルっといく。

そんなオレがすることは一つ。
公爵が来るまで、体力温存。

公爵がオレに会いにきたときに。
『迎えが遅い。もっと早く会いにこい。』
と言ってやるんだからな。

早く来いよ。
オレの伴侶なんだろう?
英雄なんだろう?

なあ、公爵。
魔王討伐の英雄は辞めてさ。
オレの英雄になりにこい。
待っている。



オレが、微動だにしないで男共を見ていると。

七人の男共は、動き出した。


ああ、始まるのか。

嫌だな。

男共は、オレの服を破く勢いで剥ぎ取っていく。

体力温存を第一にしたオレは、抵抗しなかった。

抵抗した方がましになる?

分からないけれど、オレの体力が削られるのは確実。

抵抗しても、しなくても、抑え込まれる。


オレは、抑えめに息を吐いた。

伸ばされてくる何本もの手を払い除けたい。

両手で耳を塞ぎたい。

「落ちぶれるのは、いっしゅんですなあ。」
という公爵家の分家の男の粘っこい嘲笑なんて聞きたくない。

『触るな、近寄るな』
と叫んで、助かるなら、いくらでも叫ぶのに。


オレは、口を閉じて一言も発さない。

目は閉じない。

七人の男共に怯えて見せたりしない。

毅然とやり通す。

逃げ惑わない。
許しも請わない。

力で押さえつけられることをよしとしない。

屈伏はしない。

あんた達に服従しないのが、オレの矜持だと示す。

態度で。

オレは、オレで、公爵の伴侶だから。


本当に、待っているから。

早く来いよ。

オレは、公爵の家族だろ?

公爵は、オレの夫だろ?

オレを助けにこれるのは、公爵だけだぞ?


「公爵とは、週何回なんですか?」

「在宅勤務って、ずっとヤリっぱなしなんですか?」

「世間知らずを掌とテクで転がしちゃって、玉の輿だったのに、残念だったねえ。」

抵抗しないオレに、男共は、体で公爵を籠絡した男というイメージを当てはめたようだ。


こいつらには、オレが、百戦錬磨に見えるのか?

公爵とオレは家族だぞ。
ナデナデと抱擁以上は、していない。

オレと公爵の間に、色気も艶事も、あってたまるか!

オレは、公爵の保護者なんだ。


オレは、裸に剥かれて、じろじろと遠慮なく、裸体を観察されている。

果てしなく気分が悪い。

「体中、跡だらけかと思ったら、全然ですね。」

「ぬるま湯育ちじゃ、定番以外のプレイはしないだろうねえ。」

「アレだけ、べたべたしておきながら、夜の生活は、淡白なんですか?」

どっと笑いが起きる。



公爵が、オレにべたべたしているのは、オレの隣にいるのが安心できるからだよ!

あんた達が、クズのお陰で、王城は、公爵にとって居心地の良い場所にならなかったんでな!



オレは、オレのやったことを間違いだとは言わない。

オレのやり方は、性急すぎて、失敗したが。

オレのやり方は間違いでも、オレのしたことは、間違いじゃない。

公爵とオレのために、必要だった。


オレは、言い返す労力は使わない。


こいつらは、何を言っても、オレの言うことは聞かないんだ。
オレは、昨日の顔合わせで知っている。



オレの裸体の観察時間は、終了したようだ。


「お待ちかねでしょう?
そろそろ、始めましょうかねえ。」
公爵の分家の男が、開始の合図を出した。


ああ、嫌だなー。

男達は、感情を隠しもしない。

こいつらの腹にあるのは、性欲じゃない。

オレに性欲は感じなくていいんだけどさ。

こいつらにあるのは。

権力者を自分達の手で、引きずり落とせる仄暗い喜び。

征服欲。

公爵の伴侶に狼藉をはたらくなんて、平時では出来ないもんな。

しかも。

公爵の伴侶より、偉い人のお墨付き。

こいつらの行動には、正当な理由が作られているから、誰にも咎められない。


こいつら視点だと。

雲の上にいる存在に糾弾されてムカついていたら、雲の上にいる存在より上の存在が、雲の上にいる存在のことを好きにしていいよ、と引き渡してきた。

こんなところだろうな。

雲の上の存在が、今のオレ。
雲の上の存在より上の存在
が、神子様と国王陛下。

しっくりくる構図だよなー?

実際は?

大きく外してはいないと思う。


「試してみますか。色々と。」

「今、話題の公爵の伴侶。公爵を騙して、公爵を言いなりにし、公爵を操る悪い男。」

「明日には、国中が、真実を知ることになるんですねえ。」

「そんな男の相手をしなくてはいけない歓迎会なんて、身が保ちますかなあ?」


オレは、同意だ、和姦だと言われたくない。

オレの意見として、誘拐された時点で、和姦はあり得ない。 

こいつらの視点は違う。

和姦かさえ、どうでもいい。

オレの姿を公爵に見せつけられたら、それでいい。

公爵の伴侶と公爵の両方を絶望させたいんだ。


十四本の手が、探るようにオレの体の至る所を這い回る。


気持ち悪い。

公爵はな、ぎゅうぎゅう抱きしめてくるんだぞ?

全力で、甘えてくるんだぞ、うちの公爵は。


あんた達なんか。

公爵の両親じゃなくて。

あんた達が、魔王に消失させられていたら良かったのに。
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