《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第5章 いつになったら、日本に帰れますか?

67.神子様が押しかけてきました。『神子様に逆らうな、神子様の機嫌を損ねるな。』それは、決まりなんですか?誰が、公爵に、そう言ったのですか?

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在宅勤務を勝ち取った翌日の清々しい朝。

今日は、朝、公爵家の屋敷で仕事をしてから、出勤を予定していた公爵とオレ。

午後からは、昨日、オレの下に配属が決定した部下との顔合わせを予定している。

予定が詰め込まれていないので、公爵もオレもゆったりしていた。


突然、屋敷内が騒がしくなった。

「何だ?」
と公爵。

誰か、怪我でもした?

「神子様がおいでです。」
とヤグルマさん。

「先触れは?」
一応確認する。

「ございません。」
とヤグルマさん。

朝、ゆったりしているとはいえ。

まだ、八時半。

小学生や中学生、高校生は、登校して、学校に着いている時間かもしれない。

大学生は、どうかな?
登校中?


在宅勤務の公爵とオレは、九時から就業予定だったから、だらーん、としていた。

神子様、神子様、朝の八時半は、アポなしで、他所のお家に来る時間かなー?

ふう。

オレは、ヤグルマさんに、神子様を応接室に案内するように頼んだ。

「とりあえず、話は、聞くけどなー。

神子様の用件の見当がつかないまま、つっけんどんな返しは、よくない。

公爵、自分の口から、神子様に、言えるか?

『英雄公爵は、神子様より下ではない。』
って。

神子様と公爵は、対等か、それ以上。

神子様には、公爵に対して、今日から、公私ともに、礼儀正しく振る舞うように要請する。

手始めに、
『アポなしで、早朝に押しかけて、ごめんなさい。』
を神子様に言わせたいぞ、オレは。」

びっくりしている公爵をオレは諭す。

「公爵が、今まで通りの神子様の態度を許していたら、さ。

公爵は、今までと何にも変わっていないから、対応を変えなくても平気だと考えた王城の連中が、公爵の扱いを今まで以上に軽んじてくる。

今日は、一日、毅然とした姿を見せて、きっぱりと対応する日だ。

さもないと。

昨日の努力は、すぐに元の木阿弥になるぞ?」

神子様が、公爵と仲良くなろうとする過程で、再び、公爵が精神的に追い詰められていったら、元も子もない。

公爵が、神子様に真実の愛を捧げる日は遠のくばかり。

オレが、日本に帰る日もなー。


公爵は、ためらいながらも、オレに告白してくれた。

「私は、神子様に、何を言ってよいか、言ってはダメなのかが、分からない。

神子様の言うことは基本的に肯定するか、否定しない。」
と公爵。

なーんーじゃーそーりゃー。

神子様に会う前に、公爵と認識のすり合わせだ!

「神子様のことは、肯定して、否定するな、と言われたのか?」

「神子様に逆らうな、神子様の機嫌を損なうな、だ。」
と公爵。

「誰が、公爵にそう言ったか覚えているか?
誰が言い出したか知っているか?
誰が決めた決まりか分かるか?」

「国王陛下だ。
私にだけではなく、私の友人を集めた場で、神子様の紹介と共に、そのように下知された。

誰が決めた決まりというのは、国王陛下が決めたということになるか?」
と公爵。

オレの知りたい答えじゃないな。

「国王陛下が、話をした内容が、この世界のルールかどうか、が知りたい。

国王陛下が話をする前に、神子様の扱いは決まってなかったのか?」

「私が、神子様について知っていることは、三つある。

魔王が現れる予兆は、どの国にもなかった。

神子様が現れるタイミングも、毎回同じではない。

神子様は、現れた国で一生を終えている。」
と公爵。

「神子様がいないと魔王討伐は、成功しないくらい、神子様は、重要か?

魔王討伐後、神子様は、元の世界に帰らないのか、帰れないのか、分かるか?」

神子様が、帰らないか、帰れないか。

神子様の選択肢も、神子様の転移先の国の選択肢も増えるよなー。

「魔王討伐のために、異世界転移してきた神子様は、女神様の力を使える。

神子様は、この国の国民ではないから、魔王の消失対象ではない。

神子様は、魔王討伐に必須の力をお持ちだが、魔王に遭遇しないため、魔王討伐は出来ない。

魔王討伐が可能なのは、魔王の消失対象のみ。

女神様の力を持つ神子様と魔王が出現した国の民が力を合わせて、魔王を討伐する。

この国の民が、神子様が持つ女神様の力を使って、魔王を討伐する。

魔王を倒した国の民は、英雄になる。」
と公爵。

「英雄だから、公爵は、英雄公爵なのか。

国を救った英雄のわりに、公爵の待遇、悪くないか?
神子様と比べてさ。」

「神子様は、異世界から女神様のお力をお持ちになって、この国におりてこられた。」
と公爵。

「神子様は、女神様の関係者扱いになる?
神子様が持つ女神様の力は、魔王討伐後も減らないのか?」

「女神様のお力については、神子様でないと分からない。
魔王討伐後の国が、復興する前に滅ばなかったのは、魔王が現れた国に神子様が残られたから、とされている。」

神子様は、異世界転移者で、国王陛下と並ぶ地位。

神子様は、国賓というか、女神様の力を使える、この世界の最終兵器なのか。

神子様のVIP待遇の理由は、分かった。

でも、神子様が、人格者じゃなかったら、国政を左右しそうな魔王が誕生するぞ?
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