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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。
56.『あ、若様だ。』公爵は、領地で若様と呼ばれて愛されています。
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「今日の割当は、終わった!」
「本日は、お疲れ様でした。明日も同じ時間に。」
と公爵領の文官。
オレが拳を上にあげると、文官が拍手してくれた。
公爵も、心なしか、楽しそうだ。
「良く働き、良く稼ぎ、良く遊ぶ。」
オレは、公爵と文官と三人で、廊下を歩く。
「公爵、オレは、来たばかりだから、まず、この建物の周辺から活動範囲を広げていきたい。
今から、建物の外を二人で歩き回るぞ。
デスクワークの後は、運動をすると、肩こり解消になるんだ。」
「肩こり?」
公爵に不思議そうな顔をされた。
公爵は、肩こりに悩まされないのか。
「肩こり解消じゃなくても、日常的に、軽い運動をすると、健康にいい。公爵は、ずっと仕事が詰まっていたんだから、少しずつ、体を動かすのに慣れるところから始めたらいいんじゃないか?
オレも体を動かしたかったし。」
「一緒に。」
と公爵。
「一緒にしよう。二人で軽く準備体操してから、行こうか。」
オレと公爵は、オレが教えながら、ラジオ体操とアキレス腱伸ばしをした。
ラジオ体操に、生まれて初めて、というくらい、真剣に取り組んだぞ。
体育の授業なんて、比べようがないくらいに、真面目に取り組んだ。
公爵を床に座らせようとしたら、使用人が、とんできて、床に絨毯を敷いた。
ヨガマットを敷いているみたいな感じになったけど、ヨガは知らないから、絨毯の上で、柔軟とストレッチもした。
足を伸ばして座る公爵の背中をオレが押した後は、オレの背中を公爵に押してもらったり。
気づけば、運動公園で、トラックを何周もするアスリート並みに、準備運動をしていた。
公爵と、公爵の伴侶相手に、
『出発時間もありますし、そろそろ、切り上げてもいいんじゃないですか?』
と止める人は、いなかったのだ。
明日は、時間を教えてもらうように頼んでおこう。
「今日は、手始めに散策するぞ。」
オレが誘うと、公爵はニコニコとオレの隣に並ぶ。
オレ達は、建物を出て歩き出した。
すると。
「「あ、若様。」」
「「若様だよー。」」
「「若様がお見えだ。」」
「「若様、どこ行くの?」」
一歩踏み出す事に、声がかかる。
公爵は、若様と呼ばれて、領民に親しまれているようだ。
公爵の雰囲気が、王都にいた時より、柔らかい。
公爵は、領地と領民が好きなんだな、と一目瞭然。
行き先を聞かれた公爵は、うーんと考えている。
オレの要望を出しておこう。
「歩いて、夕ご飯までに帰ってこれる距離がいい。腹を空かせながら、走って帰りたくない。」
「そうだな。」
と頷く公爵。
「ファミリー初心者向けの行き先で、夕飯までに徒歩で帰れるオススメはないか、街の人に聞いてみてくれ、若様。」
オレが、公爵をツンツンとつつきながら頼むと、公爵は、驚いた顔をした後、笑った。
確かに、笑ったんだ。
はにかむように。
オレは、公爵の笑顔を初めて見た。
オレは、公爵と出会った日から、公爵の笑顔を見たことがなかった。
公爵とオレは、夫婦といえど、接点がなかった。
互いに気づかないことは、今もある。
でも。
公爵の笑顔を見たことがない、なんて。
どうして、今まで、気づかなかったのか。
そのことに、オレはショックを受けた。
公爵?
ひょっとて、笑えなかったのか?
仕事に忙殺されて?
魔王を討伐した英雄と崇められている24歳が?
働きすぎだ。
過重労働じゃないか!
衝撃を受けたオレは、公爵領にいる間は、公爵に家族孝行をしてやることにした。
その日、五人くらいの領民が、近場の花畑へ、オレと公爵を案内してくれることになった。
気遣いのできる文官が、オレ用に、ガイドを一人、つけてくれた。
ありがとう。
お花畑への道。
公爵は、ずっと領民に話しかけられて、楽しそうにしている。
オレと公爵は、隣り合わせで歩いているが、オレ達の間に会話はない。
オレは、公爵が、領民に囲まれて、寛いだ表情を出し始めたのを見て、散策の成功を確信した。
オレのガイドが、公爵と反対側で、行き先の解説をしてくれる。
お花畑は、近隣の領民が、植えたい花を好きなだけ植えていく場所だという。
フリーダムだなー。
お花畑には、多種多様な花が咲き乱れていた。
「見ていて、楽しい花畑だなー。」
ガイドは、誇らしそうにしている。
ガイドによると。
『まとまりや美観は気にしないで、植えたいものを植えて、花畑を楽しもう。』
と先代公爵夫人、公爵の母親が始めたそうだ。
先代公爵夫人は、美的センスが壊滅的だったらしい。
美的センスが、なくても、美しいものに携わりたい、と考えた先代公爵夫人は、美しいと感じる花を手当たり次第に植えていき、花畑を作ってみた。
先代公爵夫人の花畑は、格式を取っ払っているため、いつしか、領民に親しみやすい場所となり、領民の憩いの場へと発展した。
先代公爵夫人が、魔王により消失した後は、領民が、先代公爵夫人の遺志を守って、花畑に花を植え、憩いの場を維持してきた。
いいなあ。
「この景色と、文化を守りたいなあ。」
「本日は、お疲れ様でした。明日も同じ時間に。」
と公爵領の文官。
オレが拳を上にあげると、文官が拍手してくれた。
公爵も、心なしか、楽しそうだ。
「良く働き、良く稼ぎ、良く遊ぶ。」
オレは、公爵と文官と三人で、廊下を歩く。
「公爵、オレは、来たばかりだから、まず、この建物の周辺から活動範囲を広げていきたい。
今から、建物の外を二人で歩き回るぞ。
デスクワークの後は、運動をすると、肩こり解消になるんだ。」
「肩こり?」
公爵に不思議そうな顔をされた。
公爵は、肩こりに悩まされないのか。
「肩こり解消じゃなくても、日常的に、軽い運動をすると、健康にいい。公爵は、ずっと仕事が詰まっていたんだから、少しずつ、体を動かすのに慣れるところから始めたらいいんじゃないか?
オレも体を動かしたかったし。」
「一緒に。」
と公爵。
「一緒にしよう。二人で軽く準備体操してから、行こうか。」
オレと公爵は、オレが教えながら、ラジオ体操とアキレス腱伸ばしをした。
ラジオ体操に、生まれて初めて、というくらい、真剣に取り組んだぞ。
体育の授業なんて、比べようがないくらいに、真面目に取り組んだ。
公爵を床に座らせようとしたら、使用人が、とんできて、床に絨毯を敷いた。
ヨガマットを敷いているみたいな感じになったけど、ヨガは知らないから、絨毯の上で、柔軟とストレッチもした。
足を伸ばして座る公爵の背中をオレが押した後は、オレの背中を公爵に押してもらったり。
気づけば、運動公園で、トラックを何周もするアスリート並みに、準備運動をしていた。
公爵と、公爵の伴侶相手に、
『出発時間もありますし、そろそろ、切り上げてもいいんじゃないですか?』
と止める人は、いなかったのだ。
明日は、時間を教えてもらうように頼んでおこう。
「今日は、手始めに散策するぞ。」
オレが誘うと、公爵はニコニコとオレの隣に並ぶ。
オレ達は、建物を出て歩き出した。
すると。
「「あ、若様。」」
「「若様だよー。」」
「「若様がお見えだ。」」
「「若様、どこ行くの?」」
一歩踏み出す事に、声がかかる。
公爵は、若様と呼ばれて、領民に親しまれているようだ。
公爵の雰囲気が、王都にいた時より、柔らかい。
公爵は、領地と領民が好きなんだな、と一目瞭然。
行き先を聞かれた公爵は、うーんと考えている。
オレの要望を出しておこう。
「歩いて、夕ご飯までに帰ってこれる距離がいい。腹を空かせながら、走って帰りたくない。」
「そうだな。」
と頷く公爵。
「ファミリー初心者向けの行き先で、夕飯までに徒歩で帰れるオススメはないか、街の人に聞いてみてくれ、若様。」
オレが、公爵をツンツンとつつきながら頼むと、公爵は、驚いた顔をした後、笑った。
確かに、笑ったんだ。
はにかむように。
オレは、公爵の笑顔を初めて見た。
オレは、公爵と出会った日から、公爵の笑顔を見たことがなかった。
公爵とオレは、夫婦といえど、接点がなかった。
互いに気づかないことは、今もある。
でも。
公爵の笑顔を見たことがない、なんて。
どうして、今まで、気づかなかったのか。
そのことに、オレはショックを受けた。
公爵?
ひょっとて、笑えなかったのか?
仕事に忙殺されて?
魔王を討伐した英雄と崇められている24歳が?
働きすぎだ。
過重労働じゃないか!
衝撃を受けたオレは、公爵領にいる間は、公爵に家族孝行をしてやることにした。
その日、五人くらいの領民が、近場の花畑へ、オレと公爵を案内してくれることになった。
気遣いのできる文官が、オレ用に、ガイドを一人、つけてくれた。
ありがとう。
お花畑への道。
公爵は、ずっと領民に話しかけられて、楽しそうにしている。
オレと公爵は、隣り合わせで歩いているが、オレ達の間に会話はない。
オレは、公爵が、領民に囲まれて、寛いだ表情を出し始めたのを見て、散策の成功を確信した。
オレのガイドが、公爵と反対側で、行き先の解説をしてくれる。
お花畑は、近隣の領民が、植えたい花を好きなだけ植えていく場所だという。
フリーダムだなー。
お花畑には、多種多様な花が咲き乱れていた。
「見ていて、楽しい花畑だなー。」
ガイドは、誇らしそうにしている。
ガイドによると。
『まとまりや美観は気にしないで、植えたいものを植えて、花畑を楽しもう。』
と先代公爵夫人、公爵の母親が始めたそうだ。
先代公爵夫人は、美的センスが壊滅的だったらしい。
美的センスが、なくても、美しいものに携わりたい、と考えた先代公爵夫人は、美しいと感じる花を手当たり次第に植えていき、花畑を作ってみた。
先代公爵夫人の花畑は、格式を取っ払っているため、いつしか、領民に親しみやすい場所となり、領民の憩いの場へと発展した。
先代公爵夫人が、魔王により消失した後は、領民が、先代公爵夫人の遺志を守って、花畑に花を植え、憩いの場を維持してきた。
いいなあ。
「この景色と、文化を守りたいなあ。」
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