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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

53.『愛するヒサツグに不貞を働かせるわけにはいかない。』公爵が、仕事の合間に屋敷に帰ってくるようになりました。オレ、外出禁止になりました。

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男?

なぜ、男?

疑問しかない。

公爵に、神子様と公爵の仲の進展のため、と言ってしまえる雰囲気ではない。

となると、玉虫色の回答の出番だ。

「男子禁制で無い限り、どこに行っても男は、いる。逆に女もいる。」

明言を避けた。

すると。

「ヒサツグは、私以外と外出する日は、来ないと心得るように。」

はい?
屋敷から出たらダメだと?

「何を言って。」

「私に会えないあまりに、私に隠れて、一人で外出しようとするほど、思い詰めていたとは。」

公爵が嘆き出した。

どうしよう。

公爵の嘆きポイントが、オレには、さっぱり分からん。

外出が悪い?

いや、視察には行ったぞ。

視察は、一人では、なかったなー。

一人で、か?

一人で外出がダメなのか?

治安がどうの、という流れじゃなかったぞ。

「ヒサツグ。私は、ヒサツグの控えめさに甘えすぎていた。」

オレが控えめ?

ノー、ノー。

オレは、主張すべきことは主張するよ。

公爵の頭の中で、何が起きている?

「ヒサツグ。私は、ヒサツグ一人を愛し続ける。ヒサツグにもそうであってほしい。ゆえに、私は、ヒサツグを一人で、外出させることはしない。」

なんですと?

公爵は、オレのことを愛している?

瓢箪から駒!

公爵がオレを愛してる、なんて初耳。

公爵がオレを愛する要素なんて、どこに?

神子様は、どうなっている?

「愛しているから、一人で外出させないって、どういう意味?」

「私は、愛するヒサツグに不貞を働かせるつもりはない、ということだ。」

「ふ、ふ、不貞?オレが?」

不貞を働くのは、オレじゃないって。

オレは、日本に帰るために、夫の公爵に愛人を斡旋するだけだから。

あれ?

愛人を斡旋しようにも、一人での外出が出来なかったら、どうやって探す?

万事休すじゃないか。

どうしよう?

そのとき、オレは、自分の考えを追っていて、公爵の動きを意識の外に追いやっていた。

だから、気づくのが遅れた、公爵の反応に。

公爵は、オレの一挙手一投足、顔色や、目の動きまで、隣に張り付いて観察していたようだ。

「図星か。」
公爵は、誤った確信を持ってしまった。

「違う!」
とオレが否定しても、後の祭り。

「今日からは、合間、合間に帰ってくる。」

公爵は、そう言って、仕事に行った。


そして、この日から、公爵は、本当に、一日のうちに、数回、時間はバラバラで、屋敷に帰ってくるようになった。

日中は、帰ってくると、オレが屋敷にいることを確認して、ヤグルマさんと打ち合わせをして、仕事に戻っていく。

約二週間に一度くらいの割合で行っていた王城も、オレは行かなくなった。

国王陛下の姉や、宰相の娘、司祭の従兄弟とも会っていない。

お誘いが来なくなった。

お誘いが来なかったんで。

「そろそろ王城に行く頃合いだから。」
と公爵に言ったら。

「私のヒサツグなので、私に返してもらっている。ヒサツグは、私の伴侶だ。」
と言われた。

それ以来、誰とも音信不通。

愛しているって、オレのどこを?

一体、いつから?

このまま、何もしなければ、完全に外部との繋がりが断たれる。

外部との繋がりは、数少ないオレの生命線なのに。

オレは、公爵がボンクラだと知っている。

公爵をあてにしない方が、安心。

というか、さ。

この世界。
オレ自身しか信用できないんだよな。

そんなオレは、公爵のせいで、金魚鉢の金魚だ。

なんとか、現状を打破しないと。
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