《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

52.公爵が、オレに、亭主関白ムーブしてきます。

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結婚して、半年。

夫婦揃ってとる初めての朝食。

初夜は、無事に流れた。

オレが部屋に引き上げた後。
献身的な新妻を半年も放置した挙げ句、屋敷に帰ってきた第一声で言う台詞は、「初夜。」じゃない、と、ヤグルマさんが、お話したそうだ。

ヤグルマさん、あんたが行くところに、ついていくよ、オレ。

どう考えても、ヤりたくなったから、帰ってきた宣言だったからな。

オレが、公爵より若くて、右も左も分からない状態なら、泣いていたぞ?

オレの29歳の人生経験にバンザイ。

「公爵は、お仕事が落ち着いたから、帰ってこれたのか?オレ、公爵に相談することがあるんだけど。」

「勿論、私も、私のヒサツグに聞きたいことがある。」

和やかな朝食の後、公爵とオレは、別室に移動した。


オレ達は、ソファーとテーブルがあるこじんまりとした部屋にいる。

オレは、公爵の向かい、ではなく、隣に座っていた。

なぜ、隣?

オレの座る場所、おかしくない?

オレは、おかしいと思う。

最初、当たり前のように向かい側に座ろうとしたら、公爵に手を引かれて、公爵の隣に来ていた。

そのまま、流れるようにソファーに座らされそうになる。

オレは、踏みとどまって、確認した。

「話をするんだよな?」

まさか、ソファーに押し倒したりしないよな?

昨日の今日だからな。

「勿論。私のヒサツグは、包み隠さず私に話すように。」

おい、オレが話すのか?

オレは、聞く側では?

公爵は、オレの返事を待たずにオレの腰を引き寄せてソファーへ。

公爵が座ったので、オレもお隣に座った。

うーん。

公爵との距離が、近くて気になる。

隣に座ったのは、まあ、よしとしよう。

顔を直接見ない方が、話しやすいこともあるだろう。

浮気の件とか。

しかーし。

並ぶだけじゃなく、公爵とオレの体がぴとっと密着しているのは、なぜ?

結婚しているから、夫婦だとは言っても。

ろくに会話をしてこなかった夫と密着するのは、ちょっと。

オレは、公爵から体を離そうとした。

「どこへ行く?」
公爵の声が、急にきつくなった。

公爵は、がっつり、オレの腰をつかんできた。

え?どうした?

何が気に障った?

「近すぎる気がして。」

「私が近くにいないと、ヒサツグはダメだ。」
と公爵。

半年間、公爵に放置されても、生きてきたぞ、オレ。

半年前に、説明しとけ、と思わないでもないが、公爵には、今が説明するタイミングだったんなら、仕方ない。

話を聞いてやる、と思ったオレは、お人好しだったんだ。

公爵の言う、話とは、オレへの説明じゃなかった。

オレへの詰問だったのだ。

「ヒサツグ、なぜ、出ていこうとした?」

「へ?」
オレが出ていこうとしたのは、昨日の話で、全て未遂に終わっている。

ヤグルマさんから、報告がいったか?

公爵は、ヤグルマさんの主だしな。

公爵の聞き方は、まるで、オレに非があるみたいに聞こえるぞ?

しかし。
オレは、浮気者と罵ったりしない。

オレの最終目標は、日本へ元気に帰ること。

オレが、日本に帰るためには、条件をクリアする必要がある。

公爵が真実の愛を捧げる誰かを探し出して、公爵に斡旋し、公爵がその誰かに真実の愛を捧げること。

神子様いわく、神子様が該当するらしいから、オレは、神子様と公爵の仲の進展のために、屋敷から離れたいだけ。

「オレは、公爵と結婚して以来、夫のいない屋敷に一人でいた。
今も、公爵家から出かける先は、王城くらいしかない。
オレは、お出かけしたいんだ。
王城以外の場所に。」

「一人でか?
ヒサツグが一人で外出など、出来ると思うな。」

まさか、結婚したら、家庭に入って、夫に従えとか言い出すのか?

「一人で出かけることの何がダメなんだよ?」

「ヒサツグは、私の伴侶。私の伴侶が出かけたいというなら、私が連れて行く。
私と出歩くこと以外の外出は、許さない。」

亭主関白ムーブ?

どこで、何のスイッチ入った?

オレが公爵と一緒に出かけたら、神子様と公爵の仲が深まらない。

却下。

オレは、一人で、こそっと動きたい。

それに、一人の方が、オレの息抜きになる。

「一人でなら、いいだろう?」

「一人で?何の目的だ?」

公爵が、するどい!

「身軽にあちこち行きたいんだ。」

「あちこち?一人で?」

「そう。色々見に行きたい。一人で動きたいんだ。」

「ダメだ。ヒサツグ。ヒサツグは、私の伴侶という自覚が足りない。」

公爵の伴侶の自覚?

オレにそんなものを求めてくれるな。

オレにとやかく言うけど、公爵の方が、自覚ないぞ?

オレのツッコミまくりの胸中は、次の公爵の台詞に一旦停止した。

「ヒサツグは、旅先で男と会うのか?」
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