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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

44.近衛騎士団長の甥は、自分自身の人生を真剣に考える時期だとオレは思います。

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近衛騎士団長の執務室と宰相の執務室は、そんなに離れていなかった。

上役同士、話す機会が多いのか?
機密保持のためのセキュリティー重視か?
重要人物の安全確保のためか?

到着まで、5分も歩いていない。

待たされはしたけれど。

俺は、近衛騎士団長の執務室にご案内されて、向かいあっている。

近衛騎士団長と。

なんでだよ?

オレを呼び出した当人は、どこ行った?

なんで呼び出した部屋にいない?

オレは、担任の先生じゃないぞ?
保護者と面談するいわれはない。

「オレは、近衛騎士団長の甥と会う約束をした。
近衛騎士団長と会う約束はしていない。
近衛騎士団長の執務室を指定されたんだけど、あんたの甥はどこにいる?」

「甥は、後で来るよ。慌てなくてもいいじゃないか。」
と近衛騎士団長。

「いないなら、帰る。
甥に伝えておけ。

人を待たせると分かった時点で、呼んだ側は、やっておくことがある。

それをしないで平気なやつとは、感覚が合わないから付き合いたくない。

今後、オレとの付き合いは、考えるな。」

オレは、席を立った。

その瞬間。

近衛騎士団長の執務室の廊下に面していない側の扉が開いた。

近衛騎士団長の甥が、ゆうゆうと、扉を開けてもらって出てくる。

「せっかく来たんだから、話をしよう。」
と近衛騎士団長の甥。

茶番か?

やっすい茶番だな。

茶番に付き合う義理は、オレにはない。

「遅かったな。時間切れだ。あんたに使う時間はもうない。」

オレは、席を立って、廊下側の扉に向かう。

「近衛騎士団長の執務室から、出ていけると思っているのか!」
と近衛騎士団長の甥。

「オレに何をする気だ?
オレは、公爵の伴侶だが?」

近衛騎士団長の甥自身には、何の肩書きもないことをオレは知っている。

「オレが、わざわざ出向いてやった結果が、やっすい茶番か?」

オレは、近衛騎士団長の甥に向き直り、低い声を出した。

「これは、公爵がナメられているのか?
公爵の伴侶のオレがナメられているのか?
両方か?
答えろ。」

近衛騎士団長の甥は、言葉に詰まった。

「なかなかの御仁だ。うちの甥では、勝負にならなかったな。」
と近衛騎士団長。

「伯父さん!」
近衛騎士団長の甥が、伯父にすがっている。

職場で、『伯父さん』呼びはありなのか?

オレの常識とは違う。

「茶番を仕組んで、見破られたやつらが偉そうに。」

「なるほど、公爵の伴侶たりえる人物だ。」
と近衛騎士団長。

近衛騎士団長が、上から、人を評価してくるのは、何なんだ?

公爵の両親が、息子の伴侶を認めるなら、まだしも。

ん?

「近衛騎士団長は、公爵の両親と親しかったのか?」

「察しが良いところも、申し分ない。」
と近衛騎士団長。

「近衛騎士団長のそれは、親目線だろ?
甥に対してじゃない。
公爵に対して、だ。」

「え?伯父さん?」
近衛騎士団長の甥が驚いている。

近衛騎士団長の甥は、伯父を慕っている様子。

「甥から公爵に近づいたのか?
近衛騎士団長が、公爵に甥を近づけたのか?」

「先代公爵夫妻とは長い付き合いでね。公爵も、子どものころから見てきたから、他人とは思えない。」
と近衛騎士団長。

「やり過ぎだ。甥の人生を台無しにすることを、甥も了承しているのか?」

「そんなことになるかな?」
と近衛騎士団長。

「公爵の伴侶は、オレで確定した。
甥に、公爵の伴侶以外の道を示して、教育をやり直さないと、甥は、行き場をなくすぞ。
利用した自覚があるなら、育て直してやれ。」

「全く、肝がすわっているな。」
と近衛騎士団長。

近衛騎士団長の甥は、目を白黒させた。

「話しは、まだ!」
という近衛騎士団長の甥。

「今日は、なしだ。
理由を理解するまでは、呼ぶな。胸糞悪い思いは、一度で十分だからな。」

オレは、誰にも邪魔されることなく、近衛騎士団長の執務室を出て帰った。

近衛騎士団長の甥が、執務室を出ようとしたオレの進路に立ちはだかろうとしたが。

『オレは、公爵の伴侶だ。オレの前に立てるのか。』
と言って、甥を退かした。

近衛騎士団長の甥にはどれほどの価値があるか。
甥自身で、一度、確認させないと分からないだろうな。
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