《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
43 / 673
第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

43.宰相の娘は、外でお仕事するのが向いていました。公爵との結婚という縛りがなくなった方が、イキイキしているように見えました。

しおりを挟む
次は、侯爵家のご令嬢である宰相の娘とのアポイントがある。

お招きの場所が、宰相の執務室になっているのは、なぜかな?

未婚女性の娘と二人っきりは、お父さんが許さない?

場所は聞いていたので、宰相の執務室に向かう。

国王陛下の姉の執務室へは、王城に着いてから、案内役がついたので、後ろについていった。

宰相の執務室は、国王陛下の姉の執務室より、出入りしやすい場所のようだ。

宰相に用事があるんだろう人が出入りしている。

オレは、執務室の受付に、名前と公爵の伴侶という肩書きを伝えた。

程なく、案内された部屋には、侯爵家のご令嬢がいて、何やら忙しそうにしている。

出直すか?
確認しよう。

「来たけど、どうしてほしい?」

「椅子に座って、五分、待っていなさい。」
と侯爵家のご令嬢。

ご希望通りに、椅子に座って、なんとなく、侯爵家のご令嬢がすることを見ていた。

仕事しているんだ。

オレ、侯爵家のご令嬢は家庭にいたいタイプかと思っていた。

違ったらしい。

オレのお茶会にきたときは、チクチク、カリカリ、イライラしていたけれど、今はイキイキしている。

外で働く方が性にあったのかな。

「待たせましたわね。」
と言って、椅子に座る侯爵家のご令嬢は、お茶会のときのような、けんがとれていて、話しかけやすくなっていた。

「宰相の執務室に入る経験は、なかなかない。オレにしては、珍しい経験が出来たと思う。」

日本に住んでいても、官邸に行く機会なんてなかったからなあ。

異世界でも、宰相の執務室に入るのは、一般人にはない経験じゃないか?

「そう。そういう受け答えをする人だったの。」
と侯爵家のご令嬢。

「さっきまで、楽しそうにしていたのに、急にどうした?」

「わたくし、楽しそうでした?」
と侯爵家のご令嬢は、どことなく沈んでいる。

自信がないのか?

仕事に、じゃないな。

楽しんでいたぞ?

一体、何に不安を覚えているんだ?

オレが、社会人の先輩として、新人の相談にのる流れか?

「オレが比較するのは、お茶会でのあんたの姿になる。
お茶会のときのあんたは、キリキリして、楽しくなさそうだった。」

侯爵家のご令嬢は、すん、とした表情になった。

思い当たることがあるもんな。

オレも、年下の女の子にキツいことを言っていた自覚はある。

「さっきまでのあんたは、違った。
オレの目には、仕事を楽しんでいるように見えた。」

「そう。」
侯爵家のご令嬢の表情は、まだ、すん、から動かない。

仕事を楽しんでいる姿が、ネックなのか?

仕事を楽しんでいない誰かに指摘されたかな?

「肩の力が抜けて、表情にも言葉にも、けんがなくなっている。
お茶会で見た姿よりも、今のあんたの方が、好感が持てる。」

侯爵家のご令嬢は、はっきりと、びっくりした。

仕事をしている姿に好感が持てると言われたことがなかったのか?

正反対の評価を得たか?

「職場環境がいいか、悪いかは、仕事を続ける上で、重要だぞ。
職場環境は、仕事を辞める理由の一つだから。

環境が合っていて、仕事が違法じゃなくて、生活に少しゆとりが出る給料を貰えるなら、オレは続ける。

続けてみて、違うな、と思うときがきたら。
配置換えを希望するとか、
責任あるポストへ挑戦する。

もしくは、勤め先を変える。

その頃のあんたは、今よりも仕事に詳しくなっていて、経験も積めている。

未来のあんたなら、他にも、仕事を楽しくする方法を考えつくことができるんじゃないか?」

オレは、異世界の王城での仕事や職場環境がどんなものか、知らない。

個人的なトラブルがあった相手でも、前向きに仕事に取り組んでいる姿を、貶そうとは思わない。

足を引っ張るのは、違うと思うから。

侯爵家のご令嬢は、明るい表情で、オレに言った。

「今日は、十分です。もう帰りなさい。また、呼びます。」

心のしこりが、とれたらしい。

長居は無用。

「またな。」

公爵と宰相の娘は、幼馴染みだから、仕事を通して、新しい関係を作れたらいいなあとオレは思う。


この国は、魔王の消失により、国王陛下や、公爵のように、急遽、後を継いだ若者が何人もいる。

後を継いだ若者の同世代が、後を継いだ若者と一緒に仕事をする機会があるなら、あった方がいい。

魔王による消失がなかったら、今頃、同世代で力を合わせている顔合わせをしていたかもしれない。

本来の形に戻しながら、足並みを揃えていけたらな。

公爵と宰相の娘は、仕事で信頼を勝ち取り、互いに敬意をはらえる関係になってくれたらいいなー。

そうしたら、さあ。
公爵も、宰相の娘も息がしやすくならないかな?


国を運営するのは、重い責任を伴うから。



オレは、宰相の執務室を出て、近衛騎士団長の執務室に向かう。

次は、近衛騎士団長の甥とのアポイントだ。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

処理中です...