《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第1章 異世界人になっていました。早く日本に帰りたいです。どうやったら、帰れますか。

1.出会いと堅実な人生設計のために転職希望。

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気がつけば、異世界の人になっていた。

昨日まで、日本で生きていたのに、今日は、当たり前に異世界で出勤し、異世界の部屋に帰ってきた。

異世界のオレの住まいは、大きな家の一室を借りている。

風呂・トイレは、共用。

食事は大家さん提供。

下宿である。

仕事は、近所の店の配達。

台車に乗せたり、手で持ち運んだり。

毎日、仕事はあるけれど、稼ぎは多くない。
体を壊したら、どうしよう?という不安が常にある。

この世界は、神様にお祈りすると、たまに、ヒントをもらえる。

元の世界に帰りたいオレも、神様にお願いしてみた。

翌朝、枕元に、神様からのお便りがきていた。

〔元の世界に帰りたいと願う者へ。
その者、この地で結婚し、その者の夫と冷めきった関係になったとき、夫が真実の愛を捧げる者を得れば、帰れる。〕

え?
結婚して、夫婦関係が冷めきったから、真実の愛を見つける相手を夫が見つける?

不倫は、嫌だな。

真実の愛を見つけたら、日本に戻るってことは。

オレに好意を寄せてくれる女の人を2人も犠牲にするのか?

クズすぎる。

俺には、無理だなー。

オレは、日本に帰る方法は、他にもあるはず。

諦めないで探すぞ。

この世界では、2人も、好意を持ってくれる異性に出会える!とオレは、るんるんしていた。


一ヶ月後。
オレは、異世界の人生をナメていたと気づいた。

下宿先と職場と近距離の配達では、新しい出会いがない。

このあたりの住人は、一通り顔見知り。

このコミュニティでのオレは、配達する人。

オレの住んでいる場所は、人の出入りが、多くなかった。

配達する人としか認識されていないオレは、なんとなく余所者扱いを感じていた。

踏み込めない壁がある。

オレは、体を壊す前に転職して、違う街へ行くことを真剣に考え始めた。


しかーし。

転職サイトなんてない世界。

斡旋と紹介がナンボ。

今している配達だけでは、斡旋も紹介も期待できない。

仕事ないかなー。

伝手、ほしいなー。

オレは、全身から、求職中のオーラを出していた。


そんなオレに。

なんと!

お仕事のお話が飛び込んできた!

街で見たことがない男だ。

「モノを運ばないか?」
と仕事を持ちかけてきた男は言った。

「目的地まで、運んだら、後は好きにしていい。」
と。

男は、報酬の話を自分からしようとしなかった。

オレは、必要経費は先払いだと言って、
交通費とか移動時の食費や宿泊費、
モノを渡すときに、人に会うなら、身だしなみを整える費用と、
配達料金の前払いを要求した。

モノを運んでいったはいいけど、届け先がどんな人か知らなければ、誰に支払ってもらうんだ、て話。

知らない人しかいない土地に1人になったら、金がないと生きていけない。

下宿には、毎朝、宿泊費と食事代を払うから、遠出するオレは、下宿を引き払う。

寝泊まりするところがなくなるのだ。

しっかり、お金は確保しておかねば。

そう思って、意気込んでいたら。

「一緒に行くから、支払いの必要はない。」
と男に言われた。

「何それ。必要ない、なんてことはない。
オレに仕事を頼むんだから、仕事を依頼する側は、必要経費と報酬を支払えよ。」
オレが言うと。

「仕事?いつ仕事をしている?毎日、遊んでいるではないか、と。」
と男は、のたまった。

男にとって、オレは、毎日ほうぼうに出没する暇人に見えたらしい。

若いのに、うろうろして、暇そうだから、何かさせるか、と考えたと言われた。

フザケンナ。

「仕事じゃないなら、この話は受けない。本当に暇なやつに付き合ってもらえばいい。」
オレが断ると。

「受けていながら、断るのか!」
と男は言い出した。

「話を聞いただけで、承諾前に物別れに終わっただろう。条件が合わなかったんだから。」
と、オレが冷静に話しても、聞きやしない。

男にとって、男の話を聞いたら、受けたことになるらしい。

そんな、面倒なやつ、仕事でも、お断りだ!

オレは、男を置いて、下宿に帰った。

翌朝、出勤しようと下宿を出ると、昨日の男が立っていた。

「行くぞ。」
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