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277.俺が見えていなかったもの。『メグが私を殺そうとしていたのは、早めに死んでおかなかったら、こうなると分かっていたから?』とラキちゃん。
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ラキちゃんが今、俺の目の前で苦しんでいるのは、正義が勝たないデスゲームへの俺の理解が甘かったせいか?
きっとそうだ。
俺は、正義が勝たないデスゲームに参加しても、俺だけは無事に脱出できると疑わなかった。
俺は、正義が勝たないデスゲームが、どんな危険性を内包しているか、理想と現実がどうか、など、これっぽっちも考えていなかった。
正義が勝たないデスゲームを運用しているのは、AIだが、参加者は人なのに。
俺は、人がどういうものかを知らずに生きてきたわけではないのに。
正義が勝たないデスゲームは、殺し合いをして生き延びる場所だが、殺し合いだけで済まないこともあるという警告を俺は受けていた。
俺は、それが、俺自身への行動の戒めだととらえていた。
これから正義が勝たないデスゲームに参加する俺自身への行動の戒めが、俺だけの戒めであったはずがない。
正義が勝たないデスゲームに参加する前の俺に。
美形枠がわざわざ、正義が勝たないデスゲームの禁止事項の説明を入れたのは、禁止しなければ、やるやつがいるからだ。
禁止しなければいけないことを禁止してもやるやつがいる。
それが、社会だ。
俺は、そういう社会から正義が勝たないデスゲームに参加している。
俺以外の参加者も。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、タケハヤプロジェクトの参加者とは異なり、参加する前に人格についてのチェックを受けていない。
人格のチェックがないのは、正義が勝たないデスゲームの参加者には、長生きする予定がないからではないか。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、殺し合いで死ぬことを前提に参加しているが、参加者の意向は、生死に反映されない。
参加者のうち、誰が死ぬかを決めているのは、正義が勝たないデスゲームを運用するAIだ。
正義が勝たないデスゲームに参加者の中に、正義が勝たないデスゲームの中で、ルール破りをすることを問題だと思わない参加者がいてもおかしくない。
ルールを守るという意識を倫理感だけで保ち続けるには、参加者同士の関係性が重要になってくる。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、社会から省かれた人間だ。
理由はどうあれ、社会の中で生きていることを望まれなかった。
正義が勝たないデスゲームを生き延びることに、ルールを守ることを結びつけない参加者がいても、おかしくはない。
俺は、楽天的すぎた。
社会を知らなすぎた。
人というものへの理解が足りなかった。
だから、俺は。
肝心なときに、ラキちゃんのいない場所にいて。
正義が勝たないデスゲームについての話をしていた。
なぜなら。
俺は。
男と一対一のラキちゃんは。
五分五分でもちこたえられると思っていたから。
男との戦いで不利になるなら、圧倒的に北白川サナだと思っていた。
俺の中で、北白川サナの優先順位は低かった。
俺がラキちゃんに加勢して、ラキちゃんを助けた後。
ラキちゃんと俺の二人で、北白川サナを助けにいく。
北白川サナが負けかけていても、ラキちゃんと俺がいれば逆転できる。
まずは、ラキちゃんの安全確保。
次に、北白川サナ。
これで問題ない。
そんな風にずっと考えていた。
俺は。
ラキちゃんが、男と二対一になることを想定していなかった。
いったい、いつから二対一になったのか?
俺は、ラキちゃんの側で、北白川サナを問い詰めることはしない。
北白川サナの口から出てくる話題で、今のラキちゃんに聞かせられる話はないと思う。
今、俺がすることは、北白川サナに問い詰めることではない。
「ラキちゃんは、俺が危ない目にあわないように考えていたのに。」
俺は、男二人を交互に蹴ることにした。
男二人は、股間を押さえて悶絶している。
俺の急襲により股間に不具合が起き、俺に構うどころではなくなっている二人。
「俺は、ラキちゃんが危ない目にあうことを考えもしなかった。」
俺は、男二人の急所を集中的に狙うことにした。
ラキちゃんをこんな目にあわせた男二人。
どちらか一人でも、復活したら、俺一人では抑え込めない。
暴力に慣れていない俺は、効果がある場所を蹴るの一択。
「考えるのは、ショウタの役割ではなかった。
リーダーの私の役割だったから。」
とラキちゃん。
ラキちゃんの唇は、腫れ上がり鼻も口も血だらけになっている。
俺は、正義が勝たないデスゲームに参加していたが、参加者ではなく、お客様だったのかもしれない。
お客様だった俺は、俺が見たいものしか見ていなかった。
俺は、臍を噛む。
「ラキちゃん。
メグたんが、もうすぐ、こちらにくる。
メグたんが着いたら、俺はメグたんと交代する。」
俺は、ラキちゃんが安心できる言葉を探して伝える。
俺では、ラキちゃんを安心させられない。
ラキちゃんは、俺に優しい言葉をかけてくるが、喉にひっかかったような声になって、緊張している。
ラキちゃんは、俺がいると緊張を強いられる。
それでも、ラキちゃんは。
同じチームのメンバーだから、と、リーダーとして俺と話をしてくれている。
リーダーとしての責任感で、恐怖心を抑え込んでいるラキちゃん。
俺は、ラキちゃんのために、ラキちゃんの側にいない方がいい。
「待っているわ。」
とラキちゃんは、開かない目を開けた。
メグたんを待ち望むラキちゃん。
ラキちゃんの心が分かった俺は、もう一歩、ラキちゃんから離れて、男二人を蹴る。
何もかもが、無茶苦茶だ。
俺の計画も。
ラキちゃんの希望も。
北白川サナは、男二人を交互に蹴る俺ではなく、ラキちゃんを無表情で見つめている。
「ぎゃ。」
とラキちゃんの姿を確認したキノは、短い悲鳴をあげて足を止めた。
メグたんは、キノの横をすり抜けて、ラキちゃんの元へ。
「ラキちゃん。」
とメグたんは、ラキちゃんの側に膝をつく。
「メグ。」
とラキちゃん。
メグ、と呼んだラキちゃんの口からは、嗚咽がもれた。
「メグが、私を殺そうとしていたのは、早めに死んでおかなかったら、こうなると分かっていたから?」
とラキちゃんは、泣きながらメグたんに問うた。
きっとそうだ。
俺は、正義が勝たないデスゲームに参加しても、俺だけは無事に脱出できると疑わなかった。
俺は、正義が勝たないデスゲームが、どんな危険性を内包しているか、理想と現実がどうか、など、これっぽっちも考えていなかった。
正義が勝たないデスゲームを運用しているのは、AIだが、参加者は人なのに。
俺は、人がどういうものかを知らずに生きてきたわけではないのに。
正義が勝たないデスゲームは、殺し合いをして生き延びる場所だが、殺し合いだけで済まないこともあるという警告を俺は受けていた。
俺は、それが、俺自身への行動の戒めだととらえていた。
これから正義が勝たないデスゲームに参加する俺自身への行動の戒めが、俺だけの戒めであったはずがない。
正義が勝たないデスゲームに参加する前の俺に。
美形枠がわざわざ、正義が勝たないデスゲームの禁止事項の説明を入れたのは、禁止しなければ、やるやつがいるからだ。
禁止しなければいけないことを禁止してもやるやつがいる。
それが、社会だ。
俺は、そういう社会から正義が勝たないデスゲームに参加している。
俺以外の参加者も。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、タケハヤプロジェクトの参加者とは異なり、参加する前に人格についてのチェックを受けていない。
人格のチェックがないのは、正義が勝たないデスゲームの参加者には、長生きする予定がないからではないか。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、殺し合いで死ぬことを前提に参加しているが、参加者の意向は、生死に反映されない。
参加者のうち、誰が死ぬかを決めているのは、正義が勝たないデスゲームを運用するAIだ。
正義が勝たないデスゲームに参加者の中に、正義が勝たないデスゲームの中で、ルール破りをすることを問題だと思わない参加者がいてもおかしくない。
ルールを守るという意識を倫理感だけで保ち続けるには、参加者同士の関係性が重要になってくる。
正義が勝たないデスゲームの参加者は、社会から省かれた人間だ。
理由はどうあれ、社会の中で生きていることを望まれなかった。
正義が勝たないデスゲームを生き延びることに、ルールを守ることを結びつけない参加者がいても、おかしくはない。
俺は、楽天的すぎた。
社会を知らなすぎた。
人というものへの理解が足りなかった。
だから、俺は。
肝心なときに、ラキちゃんのいない場所にいて。
正義が勝たないデスゲームについての話をしていた。
なぜなら。
俺は。
男と一対一のラキちゃんは。
五分五分でもちこたえられると思っていたから。
男との戦いで不利になるなら、圧倒的に北白川サナだと思っていた。
俺の中で、北白川サナの優先順位は低かった。
俺がラキちゃんに加勢して、ラキちゃんを助けた後。
ラキちゃんと俺の二人で、北白川サナを助けにいく。
北白川サナが負けかけていても、ラキちゃんと俺がいれば逆転できる。
まずは、ラキちゃんの安全確保。
次に、北白川サナ。
これで問題ない。
そんな風にずっと考えていた。
俺は。
ラキちゃんが、男と二対一になることを想定していなかった。
いったい、いつから二対一になったのか?
俺は、ラキちゃんの側で、北白川サナを問い詰めることはしない。
北白川サナの口から出てくる話題で、今のラキちゃんに聞かせられる話はないと思う。
今、俺がすることは、北白川サナに問い詰めることではない。
「ラキちゃんは、俺が危ない目にあわないように考えていたのに。」
俺は、男二人を交互に蹴ることにした。
男二人は、股間を押さえて悶絶している。
俺の急襲により股間に不具合が起き、俺に構うどころではなくなっている二人。
「俺は、ラキちゃんが危ない目にあうことを考えもしなかった。」
俺は、男二人の急所を集中的に狙うことにした。
ラキちゃんをこんな目にあわせた男二人。
どちらか一人でも、復活したら、俺一人では抑え込めない。
暴力に慣れていない俺は、効果がある場所を蹴るの一択。
「考えるのは、ショウタの役割ではなかった。
リーダーの私の役割だったから。」
とラキちゃん。
ラキちゃんの唇は、腫れ上がり鼻も口も血だらけになっている。
俺は、正義が勝たないデスゲームに参加していたが、参加者ではなく、お客様だったのかもしれない。
お客様だった俺は、俺が見たいものしか見ていなかった。
俺は、臍を噛む。
「ラキちゃん。
メグたんが、もうすぐ、こちらにくる。
メグたんが着いたら、俺はメグたんと交代する。」
俺は、ラキちゃんが安心できる言葉を探して伝える。
俺では、ラキちゃんを安心させられない。
ラキちゃんは、俺に優しい言葉をかけてくるが、喉にひっかかったような声になって、緊張している。
ラキちゃんは、俺がいると緊張を強いられる。
それでも、ラキちゃんは。
同じチームのメンバーだから、と、リーダーとして俺と話をしてくれている。
リーダーとしての責任感で、恐怖心を抑え込んでいるラキちゃん。
俺は、ラキちゃんのために、ラキちゃんの側にいない方がいい。
「待っているわ。」
とラキちゃんは、開かない目を開けた。
メグたんを待ち望むラキちゃん。
ラキちゃんの心が分かった俺は、もう一歩、ラキちゃんから離れて、男二人を蹴る。
何もかもが、無茶苦茶だ。
俺の計画も。
ラキちゃんの希望も。
北白川サナは、男二人を交互に蹴る俺ではなく、ラキちゃんを無表情で見つめている。
「ぎゃ。」
とラキちゃんの姿を確認したキノは、短い悲鳴をあげて足を止めた。
メグたんは、キノの横をすり抜けて、ラキちゃんの元へ。
「ラキちゃん。」
とメグたんは、ラキちゃんの側に膝をつく。
「メグ。」
とラキちゃん。
メグ、と呼んだラキちゃんの口からは、嗚咽がもれた。
「メグが、私を殺そうとしていたのは、早めに死んでおかなかったら、こうなると分かっていたから?」
とラキちゃんは、泣きながらメグたんに問うた。
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