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192.俺とラキちゃんとメグたん。
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俺は、木にぶつかってフラフラしているラキちゃんに手を貸して立ち上がらせようとした。
「ラキちゃん。このままでは、死んでしまう。いったん退避して体を休めよう。」
俺が、挨拶もなしにラキちゃんの体を支えようとしても、ラキちゃんは、驚かなかった。
「立ち去るようにと、言ったのに。」
とラキちゃん。
「ごめん。」
俺は、謝った。
ラキちゃんに会いにきたのに、ラキちゃんのいないところに行く気は、さらさらなかった。
「私達の会話は、聞いていた?」
とラキちゃん。
「現役の刑事だと聞こえていた。」
「聞いているなら。話は早いわ。早く私から離れて。私は捜査中だから。部外者の介入は、捜査の邪魔になる。」
とラキちゃんは素っ気ない。
感情的になっていたラキちゃんは、もうどこにもいなかった。
ラキちゃんは、女刑事として、俺に向き合っている。
「断る。フラフラしているラキちゃんを置いていってたまるか。」
ラキちゃんを抱き上げて移動するだけの体力の自信はない。
ラキちゃんを抱き上げて、メグたんから逃げ切れるだけの体力が俺にあれば、全て解決できたのだが。
できないことを嘆くより、足を動かす。
俺は、ラキちゃんの体を支えるようにして、ラキちゃんがぶつかった木から一歩、二歩と離れる。
「公務執行妨害よ。」
とラキちゃん。
口では俺に離れろと言うラキちゃん。
木にぶつかったときの当たりどころが悪かったのか。
メグたんに殴られたり、蹴られたりした場所が、的確にダメージを与えられたのか。
ラキちゃんは、俺の助けがないと歩けない。
そんな気がした俺は、ラキちゃんから離れようとは思わなかった。
「俺がラキちゃんを助けられたら、ラキちゃんが俺を逮捕しにくるのを待っていればいいか?」
「公務執行妨害罪よ?」
とラキちゃん。
「見逃してくれて、普通に会いに来てくれたら嬉しいが。
ラキちゃんが会いに来てくれるなら、逮捕しにくるラキちゃんを待っていようか。」
これは、言葉遊びだ。
俺もラキちゃんも分かっている。
ラキちゃんが、公務執行妨害罪で俺を捕まえるには、ラキちゃんと俺が、同時に、正義が勝たないデスゲームの外にいなくてはならない。
ラキちゃんは、死ぬまで、正義が勝たないデスゲームから脱出できない。
一方で。
俺は。
俺には、まだチャンスがある。
俺は、野村レオを鎌で切りつけたが、命を奪いことはしていない。
俺は、ラキちゃんを助けながら、俺のチャンスについて考えてもいた。
ラキちゃんと一緒に正義が勝たないデスゲームを脱出することはできない。
絶望と苦しみと後悔だけになったラキちゃんを正義が勝たないデスゲームに置いていくのか?
ラキちゃんとラキちゃんを支える俺の歩くペースは、遅い。
俺は、ラキちゃんの足元に集中していて、反応が遅れた。
「ラキちゃん、私と二人だけだと、寂しくなった?
もっと早くに三人になっておけば良かった?
ラキちゃんが仲間に入れてあげたの?
ラキちゃんは、優しいわね。
優しいラキちゃんのために、ご褒美が必要よね?」
とメグたん。
音もなく近づいてきたメグたん。
フラフラしていたはずのラキちゃんは、俺とメグたんの間に体を割り込ませた。
「ぐっ。」
とラキちゃん。
ラキちゃんは、胸部を押さえて倒れかけた。
俺は、ラキちゃんの体を俺の方に引き戻す。
俺は、ラキちゃんに庇われた。
ラキちゃんに庇われなかったら、俺は。
何も構えていないところに不意打ちで、メグたんから一撃をくらい、動けなくなっていただろう。
俺は、背中に冷たい汗をかいた。
話をしたことがある面識のある誰かから、明確に、実害のある害意を向けられた、と、俺は、体で理解した。
メグたんは、ラキちゃんに話しかけるが、俺には話しかけない。
「ラキちゃん、ご褒美はラキちゃんにあげるためのものじゃなかったのに。
欲張りね、ラキちゃん。
そんなにご褒美がほしいなら、ラキちゃんのために特注のご褒美を追加してあげるわ。」
とメグたん。
メグたんの標的は、ラキちゃん一人。
俺に攻撃がとぶのは、ラキちゃんの攻撃に有効だからか。
俺は、ラキちゃんの体を支えるのではなく、腕を回して抱えることにした。
「ラキちゃん、逃げよう。」
抱えたラキちゃんの体を俺に引き付けて、俺は、メグたんから距離をとる。
「ラキちゃんは、一人前の刑事だから、一般人を巻き込んだりしないわね?」
とメグたん。
「一般人も何も、関係あるか、この正義が勝たないデスゲームの中で。」
俺のメグたんへの声は、メグたんにスルーされる。
「ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームから脱出できなくなったけれど、無関係な一般人まで巻き込みたい?」
とメグたん。
「無関係も何も、話を聞いた後だが。」
「ラキちゃんを助けようとしているショウタくんは、まだ、誰も殺していない。
ショウタくんは、正義が勝たないデスゲームを脱出する資格がある。
ラキちゃん、将来性のある一般人を巻き込んで、正義が勝たないデスゲームを脱出できない仲間を作りたくなってこない?」
とメグたん。
ラキちゃんは、俺に預けていた体を自分で引き剥がした。
「ラキちゃん。」
俺が呼んでも、ラキちゃんは俺を見なかった。
「一人で行って。立ち去ったら、二度と戻ってこないで。」
とラキちゃん。
「ラキちゃん。このままでは、死んでしまう。いったん退避して体を休めよう。」
俺が、挨拶もなしにラキちゃんの体を支えようとしても、ラキちゃんは、驚かなかった。
「立ち去るようにと、言ったのに。」
とラキちゃん。
「ごめん。」
俺は、謝った。
ラキちゃんに会いにきたのに、ラキちゃんのいないところに行く気は、さらさらなかった。
「私達の会話は、聞いていた?」
とラキちゃん。
「現役の刑事だと聞こえていた。」
「聞いているなら。話は早いわ。早く私から離れて。私は捜査中だから。部外者の介入は、捜査の邪魔になる。」
とラキちゃんは素っ気ない。
感情的になっていたラキちゃんは、もうどこにもいなかった。
ラキちゃんは、女刑事として、俺に向き合っている。
「断る。フラフラしているラキちゃんを置いていってたまるか。」
ラキちゃんを抱き上げて移動するだけの体力の自信はない。
ラキちゃんを抱き上げて、メグたんから逃げ切れるだけの体力が俺にあれば、全て解決できたのだが。
できないことを嘆くより、足を動かす。
俺は、ラキちゃんの体を支えるようにして、ラキちゃんがぶつかった木から一歩、二歩と離れる。
「公務執行妨害よ。」
とラキちゃん。
口では俺に離れろと言うラキちゃん。
木にぶつかったときの当たりどころが悪かったのか。
メグたんに殴られたり、蹴られたりした場所が、的確にダメージを与えられたのか。
ラキちゃんは、俺の助けがないと歩けない。
そんな気がした俺は、ラキちゃんから離れようとは思わなかった。
「俺がラキちゃんを助けられたら、ラキちゃんが俺を逮捕しにくるのを待っていればいいか?」
「公務執行妨害罪よ?」
とラキちゃん。
「見逃してくれて、普通に会いに来てくれたら嬉しいが。
ラキちゃんが会いに来てくれるなら、逮捕しにくるラキちゃんを待っていようか。」
これは、言葉遊びだ。
俺もラキちゃんも分かっている。
ラキちゃんが、公務執行妨害罪で俺を捕まえるには、ラキちゃんと俺が、同時に、正義が勝たないデスゲームの外にいなくてはならない。
ラキちゃんは、死ぬまで、正義が勝たないデスゲームから脱出できない。
一方で。
俺は。
俺には、まだチャンスがある。
俺は、野村レオを鎌で切りつけたが、命を奪いことはしていない。
俺は、ラキちゃんを助けながら、俺のチャンスについて考えてもいた。
ラキちゃんと一緒に正義が勝たないデスゲームを脱出することはできない。
絶望と苦しみと後悔だけになったラキちゃんを正義が勝たないデスゲームに置いていくのか?
ラキちゃんとラキちゃんを支える俺の歩くペースは、遅い。
俺は、ラキちゃんの足元に集中していて、反応が遅れた。
「ラキちゃん、私と二人だけだと、寂しくなった?
もっと早くに三人になっておけば良かった?
ラキちゃんが仲間に入れてあげたの?
ラキちゃんは、優しいわね。
優しいラキちゃんのために、ご褒美が必要よね?」
とメグたん。
音もなく近づいてきたメグたん。
フラフラしていたはずのラキちゃんは、俺とメグたんの間に体を割り込ませた。
「ぐっ。」
とラキちゃん。
ラキちゃんは、胸部を押さえて倒れかけた。
俺は、ラキちゃんの体を俺の方に引き戻す。
俺は、ラキちゃんに庇われた。
ラキちゃんに庇われなかったら、俺は。
何も構えていないところに不意打ちで、メグたんから一撃をくらい、動けなくなっていただろう。
俺は、背中に冷たい汗をかいた。
話をしたことがある面識のある誰かから、明確に、実害のある害意を向けられた、と、俺は、体で理解した。
メグたんは、ラキちゃんに話しかけるが、俺には話しかけない。
「ラキちゃん、ご褒美はラキちゃんにあげるためのものじゃなかったのに。
欲張りね、ラキちゃん。
そんなにご褒美がほしいなら、ラキちゃんのために特注のご褒美を追加してあげるわ。」
とメグたん。
メグたんの標的は、ラキちゃん一人。
俺に攻撃がとぶのは、ラキちゃんの攻撃に有効だからか。
俺は、ラキちゃんの体を支えるのではなく、腕を回して抱えることにした。
「ラキちゃん、逃げよう。」
抱えたラキちゃんの体を俺に引き付けて、俺は、メグたんから距離をとる。
「ラキちゃんは、一人前の刑事だから、一般人を巻き込んだりしないわね?」
とメグたん。
「一般人も何も、関係あるか、この正義が勝たないデスゲームの中で。」
俺のメグたんへの声は、メグたんにスルーされる。
「ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームから脱出できなくなったけれど、無関係な一般人まで巻き込みたい?」
とメグたん。
「無関係も何も、話を聞いた後だが。」
「ラキちゃんを助けようとしているショウタくんは、まだ、誰も殺していない。
ショウタくんは、正義が勝たないデスゲームを脱出する資格がある。
ラキちゃん、将来性のある一般人を巻き込んで、正義が勝たないデスゲームを脱出できない仲間を作りたくなってこない?」
とメグたん。
ラキちゃんは、俺に預けていた体を自分で引き剥がした。
「ラキちゃん。」
俺が呼んでも、ラキちゃんは俺を見なかった。
「一人で行って。立ち去ったら、二度と戻ってこないで。」
とラキちゃん。
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