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131.未来に希望があるなんて、誰が言った?欲望を叶えようとしたその先にある未来は?

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タケハヤプロジェクトの学生は、俺のように、昨日、今日の参加者ではない。

友達の話も含めて、聞きたいことを聞いておこう。

「タケハヤプロジェクトの学生だけがこの建物に入った。
この建物は、今と、そのときとで、変わったところはあるか?」

建物に仕掛けはあるのか。

「変わったことばかりだ。

来たときは、建物内の移動を制限されていた。

今は、その制限がなくなった。

行きたい場所にいけるようになった。

建物の外でなければ、どこにでも行ける。」
と話し手。

「建物内に入ってから、行き先の指定はされなかったのか?

俺は、あった。」

「行き先の指定は、あった。

建物の入口を見たときは、都会に立っているオフィスビルだと思った。

やつらが、欲しがるはずだと。

建物の中は、美術館のように、廊下に順路があって、順路通りに進まないと進めなかった。

進んだら、元に戻れない。

建物の入り口に忘れ物をしたから、取りに戻ろうとしたが、来た道は塞がっていた。

道は壁になっていた。

戻れないことに気づいた俺達は、スマホで、支援団体のやつらに連絡を取ろうとした。

出入り口が、一つしかない建物だと、出入り口に戻れないのは困る。

支援団体のやつらに直接連絡できなかったから、SNSを使おうとした。

SNSは、なぜか、使えなかった。

スマホは、圏外になっていなかったのに、誰のスマホも使えない。

俺達は、支援団体のやつらではなく、家族や友達に連絡を取ろうとした。

家族とも友達とも、連絡が取れなかった。

捨て垢も含めて、何も使えない。

誰一人として、外部と連絡が取れなくなっていた。

出入り口に戻る道は、次々と塞がっていく。

俺達は、戻れないなら進むしかない、と結論づけて、進んだ。

励まし合いながら。

佐竹ハヤトは、入ったのは初めてだから、と、一人で楽しそうにしていた。

天才の感覚は、俺達には理解不能なままだった。

タケハヤプロジェクトに参加している人に会うか、と思っていたが、建物内では誰にも会わなかった。

俺達以外が、いないのか、と思ったくらいだ。

誰もいないはずがないのに。

俺達は、立ち止まらずに先へ先へと進んだ。

上の階へと進み、最上階についた。

屋上には、出られなかった。

屋上から、建物を出て、非常階段を使えばいいと、探した。

屋上への出入り口が、見つからなかった。

非常階段も、見えなかった。

来た道は、やっぱり塞がった。

俺達は、最上階の部屋に閉じ込められた。」
と話し手。

廊下が塞がる、か。

聞いておけてよかった。

デスゲームに参加しないように部屋に入らず、廊下に待機、はできないということか。

「建物の上階へ進むときに、途中、途中で、誰か一人が残ることは試さなかったのか?」

人がいれば、廊下が廊下のままだった可能性を試さなかったのか?

人がいても、廊下が塞がる可能性は否定できないが。

出入り口への廊下が塞がれている時点で、タケハヤプロジェクトの学生は、出入り口に戻れない。

出入り口は使えない、と分かった時点で、建物からの脱出を考えるなら?

一階か二階にいたときに、窓から外に出る方法を思いつかなかったのか?

建物の窓付近には、階段がない。

階段を上ってすぐに窓を開けて、外に出ることは不可。

この建物で、窓から外に出ようとすると、廊下を歩いて、窓まで来る必要がある。

「試そうとしたが、誰も、廊下に残りたがらなかった。

佐竹ハヤトは、見学に来たのに、最後まで見学しないで、途中に残る意味が分からないと言っていた。」
と話し手。

佐竹ハヤトに廊下に残るようにと言って、正論で拒否されたか。

佐竹ハヤトは。

俺の友達は。

この建物に入った時点で、外には出られないと認識していただろう。

俺の知る佐竹ハヤトは、合理性に欠けた行動をしなかった。

外に出るという目的のためなら、佐竹ハヤトは動かない。

「この建物に入ったら、出られないことを学生は、知らずに入った。

支援団体が、入らなかったのは、一度入ったら、この建物から出られないと知っていたからだと推測できるが。

そのことをタケハヤプロジェクトの学生に教えなかった理由は、推測できるか?」

俺は、俺の推測を学生に伝える気はない。

学生にとって、希望とはほど遠い話になる。

タケハヤプロジェクトに関わっている学生を全員、社会から隔離した後の話。

タケハヤプロジェクトの参加者を、全員、支援団体の学生に入れ替えることを考えたら?

タケハヤプロジェクトの功績をまるまる支援団体のものにするためには、逆らわなくなった程度の学生よりも、支援団体に所属する学生が成し遂げたことにしてしまえば。

社会から隔離されたタケハヤプロジェクトの学生が、タケハヤプロジェクトの功績を奪われたと抗議する機会は永遠にこない。

支援団体に所属する学生が、成功したタケハヤプロジェクトの参加者として顔を出し、タケハヤプロジェクトという名称も公に変更してしまえば、会員制有料配信サービスとの関係を、表面上は断てる。

支援団体は、孤立していた佐竹ハヤトと、烏合の衆と化したタケハヤプロジェクトの学生が、自主的に仲直りする場をもうけた。

仲直りの場所は、タケハヤプロジェクトが実施されている会場。

仲直りという名目で、孤立した天才を烏合の衆に屈伏させるために。

「支援団体のやつらに確認する機会はなかったが、やつらは、知っていたはず。

俺達が、建物内に全員入るまで、建物の出入り口で、俺達を見ていた。

あれは、思い返すと、見送りではなかった。

全員が建物に入ったことを、見届けていた。

建物から出られなくなったことを考察するようになってから、俺達は気づいた。」

俺の友達を追い詰めた、支援団体のやつらは、デスゲームに参加していないのか。

参加させたい。
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