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96.出口のない部屋から、出る要件は、加地ツグミと野村レオの死。生きたいなら、命を刈れ。『手に掛けるからには、俺が盛大に弔ってやる。』

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野村レオが、刑事であったことを匂わせるだけで、刑事だったと明言しないのは、警察組織への不信か。

今どき。
『あいつを始末して、ブタ箱で臭い飯を食ってこい。』
と言われて、何割が嫌がらずに鉄砲玉になるか。

野村レオの場合は、エースとして活躍していたにもかかわらず、警察組織から、何の保証もなく切り捨てられた。

頼りにしたい上司は、心身の故障で頼れず。

事情を知る仲間は、非業の死を遂げ。

何の保証もなく警察から放り出されたが、結婚の約束をしていた彼女は、野村レオと共にいようとした。

野村レオが、自暴自棄にならなかったのは、彼女との未来があったからだろう。

野村レオは、生きていくのを諦めなかった。

野村レオを加地さんに紹介した人物は、警察か、野村レオを免職に追い込んだ勢力か、どちらかと繋がりがあってもおかしくない。

野村レオの動向を把握するために、よく見える場所に置いていた可能性はないだろうか。

野村レオが、デスゲームに参加しているのは、不幸な偶然か、既定路線か。

不幸な偶然の一致が起きず、野村レオが、加地さんに別件の重要参考人情報を提供しなかったら。

加地さんは、野村レオの担当した別件の真相にたどり着かず、野村レオも加地さんも、デスゲームに参加することはなかっただろうか?

警察を免職になった後に生かされる未来を用意されていたとしたら。

野村レオは、事件の解明という動機で、自らの生きていく可能性を潰したことになる。

その場合。

野村レオを加地さんに紹介した人が、後継者にその立ち位置を譲ったことの意味も変わってくる。

加地さんのファンが、後継者に対して、危険な目にあわせる云々は、加地さんと加地さんの関係者向けの説明だ。

野村レオを加地さんに紹介した人物は、野村レオの動きをセーブできなかった。

保身とけじめのために、野村レオと加地さんと加地さんの仕事に協力していた人をまとめて切って、後継者にその座を譲った、ということにならないか。

一方。
デスゲーム参加までが、野村レオの既定路線だった場合。

野村レオを加地さんに紹介した人物は、快適に過ごしているはず。

野村レオをデスゲームに送り届けるという仕事をやり遂げて、報酬をもらっているかもしれない。

いずれにしろ。

どちらの場合でも。

野村レオの彼女は、もう。

野村レオも、俺と同じ結論に至ったのだろう。

俺の首から手を離した野村レオは、北白川サナのところに歩いていく。

「俺を出口に案内する燕はいなかった。」

野村レオは、北白川サナの斜め前に立った。

「サナは、出られるだろう?
燕の代わりに俺を連れて行け。」

北白川サナは、つまらなそうにしている。

「レオは、どこにも行けないです。今日ここで死にます。」
と北白川サナ。

「こんなわけの分からない場所で死ねるか。
俺は、帰る。」
と野村レオ。

「やる気があるのは、いいことです。

ぼんやり燕もやる気を見せるときです。」
と北白川サナ。

燕?
俺か?
誰がぼんやり燕だ!

北白川サナは、俺に、鎌を取りに行けと言った。

「ぼんやりしているうちに死にたくないなら、鎌を持って、レオを襲うのです。」
と北白川サナ。

「野村レオに歯が立たなかった俺を見ていただろう?

俺に加勢してくれるのか?」

ダメ元で、北白川サナに聞いてみた。

「本気で、レオを殺しに行くなら加勢してもいいです。」
と北白川サナ。

「二対一か。」

「二に足りるように、頑張るのです。私は余裕です。」
と北白川サナ。

俺が、北白川サナの足を引っ張るのは前提か。

「鎌をとりにいく。」

俺は、鎌を取りに行ってきた。

加地さんと、野村レオ、加地さんの協力者が死ぬことは決定している。

俺だけは、未知数だ。

俺に生き残る未来があるから、ではない。

俺は、大勢を左右しないオマケ。

野村レオと加地さんが死ぬまで、新人歓迎会は終わらない。

加地さんと野村レオの二人が生きている間は、殺し合いをし続けることになる。

加地さんと野村レオが生きている間は、この部屋のロックが解除されないから。

俺が死ぬより前に、野村レオと加地さんが死ねば、俺は次のデスゲームの舞台に移動できる可能性がある。

俺が先に力尽きたら、加地さんや野村レオと一緒に、俺の人生も終わる。

人殺しになんか、なりたくなかった。

人殺しなんて、したくない。

その気持ちは変わらない。

何もしなければ、閉じられた空間で、死ぬときを待つことになる。

俺は、俺が死ぬことに納得しない。

だから。

鎌を取りに行ってきた。

俺は、人を殺すための凶器を握っている。

野村レオにふるうための鎌を握ったときに、俺は気づいた。

野村レオに、俺を殺す気はなかったのだろう。

最初から。

野村レオは、免職になっても、刑事の心を失わなかった。

俺は、清廉な心の持ち主ではない。

俺は、いつだって、我が身が一番可愛い。

だから。

俺に、正義をうたう気はないが。

野村レオを嵌めたやつらの思惑通りになるのは、癪に障る。

真面目に生きてきたやつが、馬鹿を見るなんて、つまらない世の中だ。

野村レオを嵌めたやつに、一泡吹かせてやりたい。

俺が、野村レオに勝つには、北白川サナの活躍次第だが。

野村レオは、デスゲームの中で、誰にも知られずに死んでいくが、俺は、野村レオの死をなかったことにはしたくない。

決めた。

俺、デスゲームを脱出したら、野村レオと彼女さんの供養をしてやる。

墓をたてるのは、ハードルが高い。

俺は腹をくくった。

舐めくさったやつらにカウンターパンチを。

「聞け、野村レオ。
野村レオと彼女さんの菩提寺があるなら、死ぬ前に俺に話しておけ。

希望通りになるかは分からないが、俺が、二人分の供養しにいってやる。

墓は諦めろ。」
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