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55.加地さんの、後ろ姿だけでは分からない真の姿。加地さん絡みで大注目の俺。

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目元が前髪で隠れている女の襟元を締め上げている男は、女の言い分を聞いた俺の反応が知りたいんだろう。

「おたくは関係ないのか?」
と確認してきた。

俺は、金輪際、関係したくない。

「締め上げられている女が俺に、風呂椅子を当ててきて、俺が当て返した。

俺は、投げて当てるが済んだから、他に行こうとしているところだ。」

答えながら、一番可愛い女の子のグループだけではなく、どのグループにも行けないような気がしてきた。

俺は、今、部屋の中で、大注目を浴びている。

部屋中の目が俺に向いている。

人生で、注目してください、と言われる前に、注目されたのは初めてかもしれない。

俺に知名度はない。

知名度があるのは、誰か、と考えてみる。

目元を前髪で隠している女が有名なのか。

女を締め上げている男が有名なのか。

両方か。

「そっちの問題に巻き込まれて、注目を集めることになるとは予想しなかった。

この注目度だと、そっちの集まりしか、加われそうな場所がない。」

俺が言うと、それを狙ったんじゃないだろうな、と言われた。

「俺から話しかけに行くから、俺には小細工をする理由がない。

俺にはないけど、そっちには?」

そこまで言えば、疑って悪かったな、と男がひいた。

「疑わせたやつには、利用する目的で、二度と俺に近寄らせるな。」

目元を前髪で隠している女が俺に近づこうとしなければ、俺は撲殺魔を警戒しないで済む。

俺は、方向転換して、行き先を加地さんへ変えた。

「なんのつもりだ?」
と目元を前髪で隠している女の襟元を締め上げていた男は、女から手を離して、加地さんの元へ。

「今の騒動で、そっちにしか行く場所がなくなったから、そっちに合流することにした。

そっちの関係者は、どこからどこまでだ?

俺以外は、全員、見知った仲か?」

俺は、せっかくなので、男から情報収集することにした。

痛みに悶絶している加地さんよりも、会話する気がある男の方が喋ってくれそうだ。

「大まかに言うと、おたくとあと二人以外、部屋の中にいるのは、全員顔見知りだ。」
と男。

「顔見知りだけど、繋がりのある団体として一つではない、ということか?」

「そうだ。これ以上、おたくに話すことはない。」
と男。

男は、加地さんの面倒を見るために、いるのか?

デスゲーム内で、そんな暇があるか?

「俺が加地さんに近づくことを警戒して、いちいち牙をむき出しにするのは、お門違いだ。

俺は、最初、加地さんに近づく予定はなかった。

団体さんのトップなら、責任持って、迷惑をこうむった俺に説明してもらおうというハラなだけだ。

そっちが加地さんに近づかれたくない、というなら。

俺が加地さんに近づかなくても十分なくらいに、そっちから説明してくれ。

そっちの関係性と、加地さんがいるのはどんな団体かは、最低限、話してもらうぞ。

デスゲームの中にいるなら、生きている限り、これからも顔を合わせる。

適切な距離をそっちが願うなら、そっちが先に説明してからだ。

加地さんに近づく誰かがいるという状況で睨んでくるというのは、加地さんが、顔見知りのまとめ役なのか?」

俺は話をしているだけなのに、加地さんを囲む人が、全員睨んでくる。

「警戒し過ぎて、自ら敵を増やすこともないだろう、と俺は思う。

俺達がどこにいるか、忘れていないか?

ここは、デスゲームの中だ。

無闇矢鱈に敵意を振りまく結果を考えてみたか?」

俺が言ってやると。

「彼の言い分には一理ある。彼とは話をしよう。」
と加地さんが喋った。

声!

俺は、加地さんの声にびっくりして、大して気にしていなかった加地さんの後ろ姿を、よくよく、見てみた。

首、肩、腰のラインは、遠目には分からない。

「ですが。」
と男が渋る。

「今の距離でも会話はできる。この距離を保っているなら、何かあっても、動けるはず。」
と加地さん。

「分かりました。そうおっしゃるなら。」
と男は、加地さんと受け答えをして、俺に、その場で座ってくれ、と言ってきた。

座る場所に関しては、俺も異存はない。

加地さんには近づかない方がいい、と俺は判断した。

加地さんの声は、ソプラノボイス。

後ろ姿だけでは、男装が成功していて分からなかったけれど。

話し声は、完全に女性のそれ。

デスゲームに、護衛つきで参加している女性と親密になったら、俺の寿命が縮む。

加地さんには護衛つきでデスゲームに参加する財力やらがある。

いったい何をやらかして、デスゲームに参加することになった?

加地さんは、椅子の向きを変えた。

周囲が加地さんを過保護に守ろうとしたわけが分かった。

美女がいた。

メグたん、とは別枠の、涼しげな美女が、俺に微笑んできた。

加地さんにも、もれなく、美女の法則が適用された。

加地さんは、俺の真正面じゃなく、三十度くらいズレた位置にいる。
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