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第9章 2年目のニンデリー王立学園での生活は、波乱含みの授業参観から。

750.スラッルス・トークンを見ていた長身の男性は?

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「そちらは?」
とハーマルが、長身の男性に問いかける。

「私は、このスラッルス・トークンの父だ。」
と長身の男性。

キャスリーヌは、納得した。

スラッルス・トークンが、長身の男性からの視線に鈍感だったのは。

ずっと見られていたからだ。

慣らされていたからだ。

長身の男性は、純粋な視線だけを向けているわけではない。

魔法を使って、スラッルス・トークンを見ている。

魔法に精通していなかったら、気づけないほど、細く絞って、スラッルス・トークンを見ていた。

キャスリーヌが気づいていたように、マーゴットもスラッルス・トークンへ向けられている視線に気づいていた。

マーゴットは、視線の送り主が行動に移すまで、泳がせていたのだ。

「スラッルス・トークンを買ったと主張するニンデリー王国の貴族である教授の近くにいる人物と、スラッルス・トークンの父と名乗る人物も一緒に連れていこう。」
とハーマルは、マーゴットに声を掛ける。

マーゴットは、鉄扇をスイスイと動かして、スラッルス・トークンの恩人を釣り上げるように、宙に浮かした。

「場所を移すので。」
とハーマルは、スラッルス・トークンの父を名乗る長身の男性を促した。

マーゴットは、キャスリーヌに移動の合図を出す。

マーゴット達は、マーゴットの呪術で尻もちついているニンデリー王国の教授や護衛達を避けて進んでいく。

「パパ、行っちゃうけど?」
とハーメリー・ジョンストンが、父親に確認する声が背中越しに聞こえてくる。

「行かせておこう。」
とハーメリー・ジョンストンの父親。

ハーメリー・ジョンストン一家は、また後で絡んでくるだろう、とマーゴットは予想した。

ハーマルは、ニンデリー王国側を煽っても反応がなかったので、すぐに頭を切り替えた。

ハーメリー・ジョンストン一家が、マーゴットの偵察に来ていることは、確かだが、ハーメリー・ジョンストン一家を使う黒幕は、姿を現さなかった。

目の前にある問題から解決していこう。

スラッルス・トークンの父親は死んだ、とスラッルス・トークンは聞かされてきたようだけど、スラッルス・トークンの父親を名乗る人物は、死人ではない。

外交担当のハーマルとしては、他所の国の貴族のお家騒動になんて、関わらないにこしたことはない。

今回は、可愛い妹のマーゴットが使う予定のスラッルス・トークンだから、マーゴットが困らないように、どうにかしてみよう、とハーマルは考えている。

スラッルス・トークンは、死んだと聞かされている父親が名乗り出てきたことに驚かなかった。

父親が死んでいる、と聞かされて育ったが、実は父親は健在だった、という事例を前世で見聞きしていたスラッルス・トークン。

父親については、そういうことも、あるか、と考えていた。

生きているなら、話せる、と。
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