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第9章 2年目のニンデリー王立学園での生活は、波乱含みの授業参観から。

729.マーゴットとハーマルのやりとりを見ていたバネッサは、バネッサの家族と比較していた。『私の家族は、どこかおかしい。一体、いつから?』

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「ハーマルお兄様。スラッルス・トークンは、将来、クークード遺跡を継いで、わたしが遺跡に遊びに行くときに融通をはかります。」
とマーゴット。

「マーゴットは、スラッルス・トークンに、マーゴットの遊び場所を確保して管理することを任せるつもりなんだね?」
とハーマル。

「はい。
スラッルス・トークンがクークード遺跡を継ぐには、ニンデリー王立学園で、学ぶ必要があります。」
とマーゴット。

「スラッルス・トークンの叔父だという男達は、引き下がりそうにないよね。

マーゴットは、何か対策を考えている?」
とハーマル。

「わたしの邪魔をすることがどれほどの不利益をもたらすか、理解させます。」
とマーゴット。

「いいね。私も応援する。」
とハーマル。

マーゴットとマーゴットの3番目の兄ハーマルの会話は、キャスリーヌにとって聞き慣れている。

しかし。

バネッサにとっては、驚きの連続だった。

バネッサは、兄と親しく会話をした記憶がない。

オッドア伯爵家の娘として、役割を果たすことを叩き込まれてきたバネッサ。

父や兄から、何かを取り計らうようなことはされたことがない。

相談したこともなければ、相談を持ちかける形で意見を言う機会が作られたこともない。

父や兄は、伯爵家の仕事をバネッサがするのは当たり前と考えていて、バネッサ自身も当たり前だと考えていた。

母は、父と兄のすることに口出ししない。

バネッサの2人いる兄のうち。

長兄は、跡継ぎとして厳しく育てられたと聞いている。

長兄とは、次兄アレックスよりも接点がなさすぎて、どんな人となりをしているのか、よく知らないことにバネッサは、今さらながら気づいた。

バネッサは、バネッサの家族が次兄アレックスを中心に回っていた、と痛感した。

バネッサの生まれたときから、次兄アレックスは、優遇されるのが当たり前だったから、バネッサは、当たり前がおかしいことに気付けなかった。

貴族の嫡男である長兄に厳しくするのは分かる。

でも、次兄アレックスを甘やかす道理は?

伯爵令嬢であるバネッサに対して、型通りの養育と愛情、手はかけてくれていたけれど。

跡継ぎではないアレックスを、領地における戦いの主力として、妹のバネッサよりも有益な人材になるように育てない理由は、全くない。

誰にも指摘されず、好き放題して生きてきたアレックスは、国境の領地を預かる領主の息子としての義務を全て放棄して、外国の学校に逃げるように入学した挙げ句、外患誘致罪に該当する行為が発覚しても、何が悪いか分からない大人になってしまったのではないか。

バネッサは、ぞっとした。

私の家族は、どこかおかしい。

いつから、おかしかったのだろうか?
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