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第9章 2年目のニンデリー王立学園での生活は、波乱含みの授業参観から。

717.スラッルス・トークンは、母親から拒絶されていると分かっても、何でもないように、母親に笑ってみせた。お母さんに縋ったらもっと嫌われる。

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スラッルス・トークンは、初めて母親の前に座ったときとは別の緊張を強いられていた。

お母さんは、俺を歓迎していない。

俯くことなく、母親の顔を見ていたスラッルス・トークンは。

母親が、スラッルス・トークンを視界に入れないようにしていると気づいている。

母親は、子どもの扱い方が分からないために、スラッルス・トークンから目を逸らしているわけではない。

一片たりとも、スラッルス・トークンを見たくないのだ。

母親に拒絶されていることを自覚したスラッルス・トークンは。

咄嗟に、母親に抱いていた幻想を遠くに押しやった。

いらない、いらない、余計な感情は、あっちいけ。

俺は、お母さんの愛情なんか、最初から期待していない。

だって。

お母さんは、始めから喜んでいなかった。

スラッルス・トークンは、母親を恋い慕う感情を、遠くへ追いやろうと必死だった。

俺のことを嫌いなお母さんに、お母さん、お母さんと泣き縋ったら、もっと嫌われてしまう。

スラッルス・トークンは、母親に拒絶されても、何ともないような顔をしようと思った。

笑わないと。

貴族らしい感情を覆い隠す笑顔を浮かべないと。

必死に笑おうとするスラッルス・トークンを一瞥した母親は、温度のない声を出した。

「気味悪い顔で笑いかけないでくれる?

楽しいと思ってもいないのに、笑われても気持ち悪いのよ。」
と母親。

母親は、相変わらず、部屋の壁から視線を外さない。

ぎこちない微笑みを浮かべていたスラッルス・トークンの心は、血を流しきってカラカラになった。

スラッルス・トークンの涙は、流す前に枯れてしまった。

「今の今まで、私の存在を気にしたことなんかなかったくせに。」
と話す母親は、壁を向いたまま、スラッルス・トークンに視線を向けない。

「トークン家で用済みになって、行く場所がなくなったら、私を頼りにきたの?」
と母親。

母親の言う通りだが、スラッルス・トークンは、肯定も否定もできなかった。

お母さんに全身全霊で嫌われている、とスラッルス・トークンは分かってしまった。

お母さんは、俺と会うことを喜んでいないんだ。

俺と会いたくなかったんだ。

「お母さんは、俺と生活したくない?」

スラッルス・トークンは、声を絞り出した。

「顔も見たくない。」
と母親。

「お母さんのいない場所で俺が生きていくことはできる?

お母さんのいる場所でないと、俺は生きていくことを許されない?」
とスラッルス・トークンは、執事に尋ねた。
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