子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第9章 2年目のニンデリー王立学園での生活は、波乱含みの授業参観から。

711.商人魂を持つ男爵令嬢キャスリーヌ・ベイモン。厄介そうな大人を発見。大人は、スラッルス・トークンをじっと見てから、姿を消した。

キャスリーヌは、バネッサとレベッカ・ショアの真ん中を歩いている。

キャスリーヌの家ベイモン男爵家は、豊富な資金と歴史を活かし、世界各地で手広く商売をしている。

固定客を大切にしながら、新規開拓にも精を出すベイモン家。

キャスリーヌは、いたるところにいる、学生の保護者に注目している。

ニンデリー王立学園に通う学生は、将来的にベイモン家の客になる見込みが少ない。

新規開拓するなら、裕福な保護者一択。

というのも。

ベイモン家は、お金を自由にできない人とは取引をしない。

品物は、支払い時に引き渡しが鉄則。

家のお金はあるけれど、財布の紐を握られているので、支払いを融通してほしい、などのお願いには、全て、『隠して使える商品の取り扱いは、ない』と却下している。

ベイモン家は、決裁権のある当主と取引を決めることがほとんど。

ニンデリー王立学園に通うニンデリー王国以外の貴族階級の学生は、将来的に、当主になる見込みが薄い。

ニンデリー王立学園の設立目的が、魔法に関する学術研究であるため、跡継ぎになるような学生は、ニンデリー王国の貴族階級の子ども以外入学してこない。

ニンデリー王立学園は、魔法立国ニンデリー王国に、初代ニンデリー国王陛下の肝いりで建った教育機関。

ニンデリー王国の平民とニンデリー王国を含む各国の貴族階級の12歳以上の子どもで、入学試験に合格した者の入学を認めている。

ニンデリー王立学園は、学生になっても、貴族階級に必要な人脈づくりに事欠くことになるため、人脈づくりが生きていく上で必須であるなら、通わない。

ニンデリー王立学園に通う外国の貴族の学生の家は、跡継ぎではない学生を外国の学校に進学させられるくらい裕福だということだ。

新規開拓していくには、ちょうどいい。

たまに、レベッカ・ショアや、スラッルス・トークンのような、複雑な事情持ちの学生も紛れている。

キャスリーヌは、ある人に注がれている視線の強さに違和感を覚えて、そちらに視線を流す。

キャスリーヌの視線を感じたらしい視線の主は、すいっと姿を隠した。

キャスリーヌは、誠に遺憾。

あれは、客にならない類の大人だとすぐに分かった。

客にならない。

トラブルを持ち込んでくる類の大人だ。

その厄介な人物は、姿を隠す前、スラッルス・トークンをじっと見ていた。