子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

678.ガラン領民。『私のお仕事なのに、私に死にたくないなどと言ってくるなんて。死にたくないなら、死ぬ前に素直になれば済む話ですよー。』

使用人もどきは、足掻いた。
「まだ死にたくない。」
と使用人もどき。

「苦しんで死ぬも、苦しんで生きるも、あなた次第なところがあるので、私にはなんとも。」
とガラン領民。

「手馴れていそうだ。」
とトレメイヤ王国民。

「そうなんですよね。私のお仕事なのに。

死にたくない、なんて、私に言われましてもね、あはは。

死にたくないなら、死ぬ前に素直になれば済む話ですからねえ。

私に期待するのはお門違いですよー。」
とガラン領民。

ケラケラと笑うかのように話すガラン領民に、トレメイヤ王国民は、思った。

専門家だ！

初っ端から、尋問のプロを出してきやがった！

「使用人は、たとえ話せなくなっても、絶望しなくてもいい。」
とマーゴット。

「話せなくても、聞き出す方法はありますよー。」
とガラン領民。

トレメイヤ王国民は、可哀想なものを見る目で、使用人もどきを見た。

「そんな、可哀想なものを見る目で俺を見るな！」
と使用人もどき。

「ゲロっちゃえば、苦しい思いをしなくて済むかもしれないぞ。」
とトレメイヤ王国民。

「親切ぶって、裏切りを勧めてくるな！」
と使用人もどき。

「いやあ。だって。勝ち目ないよ？」

「詰んでるよ？」

「捕まった時点で、諦めておくべきだったと思う。」

「今ならまだ、間に合う。さあ、裏切りを宣言しよう？」

トレメイヤ王国民の親切な勧誘。

「同業者のくせに！」
と使用人もどき。

「同業者だから、知っている。」
トレメイヤ王国民は、真面目に話し始めた。

「逆らったら、ダメ。目をつけられたら、ダメ。」

「関わりを持ってはダメ。
なぜなら、勝てないから。」

「そんな相手に戦いを挑もうとする新参者に対する助言みたいなやつだよ？」

「素直になろうよ？」

使用人もどきは、ぎっぎっぎっ、とトレメイヤ王国民からガラン領民へと視線を動かす。

「ここで、身の振り方を決めるも、決めないも、あなた次第ですが。」
とガラン領民。

「どう転ぼうと、使用人の結末は変わらない。」
とマーゴット。

「自我が残っているうちに決めておくことを勧めますよね。

老婆心ながら。」
とガラン領民。

「理由を聞いてもいいですかね？

後学のために。」
とトレメイヤ王国民。

「案内先が変わります。」
とガラン領民。

「行き先？これから向かう部屋？」
とトレメイヤ王国民。

「全部ですね。部屋も含めて、まるっと全部。」
とガラン領民。

ガラン領民の返事を聞いたトレメイヤ王国民は、ブルっと身震いした。

「「「俺達の選択は、間違いではなかったー。」」」

もし、トレメイヤ王国民が、マーゴットに従う選択をしなかったら？

マーゴットに捕まった時点で、トレメイヤ王国民が生きていられる保証は、なかったのだ。

さて、使用人もどきは？