子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

666.マーゴット。ドレマンの民のナンシー・ボーンを使った魚憑き実験。王太子を止めたが、主君が手を引いた実験を主君に黙って続けた者がいる。

マーゴットは、ドレマン家とドレマンの民とニンデリー王国の関係を再考し続けた。

ニンデリー王国の初代国王は、ドレマンの民との共生を望んだのだろうか？

共生を望んでいた場合、ドレマンの民の在り様は、ニンデリー王国に溶け込まない現状も許容しただろうか？

ドレマンの民は、シグル・ドレマンを筆頭に、魔法が使えないわけではない。

ドレマンの民は、ドレマンの民だけで生きてきた。

独自に発展させてきた技術と持って生まれた丈夫さが、ドレマンの民の特徴。

ドレマンの民の体質は、呪術と親和性が高いのかもしれない。

ナンシー・ボーンの魚憑きに成功した理由は、チェール・モンスの呪術の研究が成果をあげたから、ではなく、ナンシー・ボーンがドレマンの民だったからではないだろうか。

ドレマンの民に使うと呪術の効果が上がる、と仮定するならば。

マーゴットは、ドレマンの民に無関心でいてはいけない。

魚憑きの実験は、ジュゴン先生が出てきたので、終わりを迎えたと確信していたマーゴット。

魚を憑けなくなっただけで、呪術を使って、人に何かを憑かせる実験はまだ続いている可能性が出てきた。

ニンデリー王国の王太子殿下とチェール・モンスが開発した技術は、そのまま盗用されているか、一部だけ利用されているか、不明だが、まだ、使用されている。

技術を生み出したチェール・モンスと、技術開発を主導した王太子殿下に技術開発を止めさせただけでは、魚憑きの技術を葬り去るには足りなかったのだ。

魚憑きの技術は、一番目立つ王太子殿下とチェール・モンスという目印が開発に関わらなくなったことで、水面下での開発へと移行した。

一網打尽にできなかったのは、マーゴットの失策。

マーゴットは、この事態を予想していなかった。

マーゴットの常識では、主君が言うことは絶対。

主君が手を引いた実験を堂々と水面下で続ける者がいるとは、思いもしなかった。

マーゴットは、考えを改めた。

ナンシー・ボーンの父と弟が既に死んでいる件については、調査が必要だ。

ニンデリー王国の王太子殿下とチェール・モンスに魚憑きの実験を止めたからには、その先の水面下に潜った実験も阻止するために動かなくてはならない。

チェール・モンスの生み出した技術が、この世で改良されるということは、決してあってはならない。

魚憑きの実験の内容は、国際的に公開されてはいなかった。

ニンデリー王国内では、どうだろう？

魚憑きの実験について、何らかの情報を公開していただろうか？

現状、ニンデリー王国内で、魚憑きの実験が継続中であるという事実が示すことは。

王太子殿下に警戒されずに王太子殿下の情報を集めることが出来る人物は、実験の手順を知ることが可能であったという事実。

マーゴットに、ドレマン家とドレマンの民を放置するという選択肢はなくなった。

建国以来、魔法立国の名をとどろかせていたニンデリー王国の礎となった魔法システム。

魔法システムが、国の存続を左右すると気づいた人物が、ニンデリー王国にいるのだろうか？

その人物は、ニンデリー王国の存続のために、ドレマンの民を実験に使うことを考えたのだろうか？