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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

649.マーゴットに命じられた屋敷の使用人は、仲間を呼び集めようとしたけれど?『地下に投げ込まれるか、階段を二足歩行するか、選びなさい。』

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1分後。
誰も寄ってこない。

2分後。
近づいてくる足音さえ聞こえない。

使用人は、うろうろして、誰かを呼びに行きたい。

ついでに、逃げ出したい。

でも、マーゴットの魔力による圧をかけられながらじゃ、うろうろできない。

人の近づいてくる気配なし、とマーゴットは、判断した。

来ない人を待つ?

そんなことはしない。

「行きなさい。」
とマーゴットは、使用人に階段を示した。

「まだ、誰か来るかもしれないから。」
と渋る使用人をマーゴットは、魔法で引き寄せ、地下への階段の上に浮かせる。

「二つに一つ。地下に投げ込まれるか、階段を二足歩行するか、選びなさい。」
とマーゴットは、使用人に迫る。

「魔法、反対。二足歩行で。」
と使用人。

マーゴットは、階段の中程に、使用人を立たせた。

「部屋の準備をする者の手配が間に合わないことは、咎めない。」
とマーゴット。

「部屋の準備なんてする暇なかったけど?」
と使用人は、ぶつくさ言いながら、階段をおりていく。

ベリーベリー・イニーは、屋敷の使用人のフレンドリーさに首をかしげる。

マーゴットとベリーベリー・イニーに見つかった後も、使用人には慌てた様子がなかった。

階段をおりていく使用人は、軽快な足取りだ。

マーゴットは、使用人が、一介の使用人ではないことを見抜いている。

屋敷の使用人ではない。

屋敷に潜んでいた、他所からの侵入者だ。

マーゴット達の先客。

マーゴットがベリーベリーと屋敷に入ってくる前に、屋敷に潜入していた先客は、トレメイヤ王国民が魔法で屋敷を閉じてしまったために、出られなくなった。

マーゴットとベリーベリー・イニーについていけば、出られるとふんで、使用人のフリをして近づいてきている。

マーゴットは、屋敷の警備がなっていないのではないか、と思っている。

他所の国の貴族の警備の質について人前で語るほど、品がないことはないので、口には出さないが。

マーゴットが、思っているほど、屋敷の警備の質が悪かったわけではなかった。

トレメイヤ王国民による急襲が、先手を打った分、マーゴット側が有利だったのだ。

地下への階段をおりていく使用人もどきは、この屋敷の地下がどんな場所かよく知っている。

人が、長居する場所ではない。

使用人もどきに命令しなれている少女は、人を使うことが身についている身分だから、足を踏み入れなかったのだろう。

好奇心に負けて、足を踏み入れては、見たくないものを見ることになっていた。

使用人もどきは、すたすたと歩いて、ナンシー・ボーンの母の元へ向かった。
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