子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

641.トレメイヤ王国民が、積極的に動き出した理由。門番は、首が飛びそうな選択を突きつけられている。

「こっわ！お嬢様を下に見ることに、俺達を巻き込むのは、やめろー。」

「お嬢様を敵に回すとか、正気じゃない。」

トレメイヤ王国民のマーゴット評が急上昇。

なぜかというと。

マーゴットが、物理的に紳士の口を塞いだのを確認してしまった後だから。

マーゴットが、紳士を黙らせる前のトレメイヤ王国民は、適当にやるかー、と手を抜いていた。

お嬢様を満足させればいいんだろ？

簡単簡単。

疲れないようにやろうぜ。

屋敷の庭に散ったトレメイヤ王国民は、マーゴットの下についたと見せながら、マーゴットを舐めきっていた。

でかい口は叩いているけれど、実害のある魔法は使ってこなかった。

しょせん口だけ。

お嬢様の自己満足をクリアするだけなら、楽勝。

紳士の姿は、そんな風に気を抜いていたトレメイヤ王国民の空気を一変させた。

『お嬢様は、流れるように、口を塞ぎやがった。』

『大人しそうな少女の皮を被っているが、自然体でヤバいやつだった。』

トレメイヤ王国民のマーゴットへの認識は一変した。

本気を出さないと、自分達の安泰ライフが頓挫してしまう。

トレメイヤ王国民は、一致団結した。

マーゴットの機嫌を損なうことはしない。

なんなら。

マーゴットの望みを最優先で叶えて、ゴマすりしとこう。

全ては。

トレメイヤ王国民が、マーゴットの下で、安穏と生きるために。

一致団結してからの、トレメイヤ王国民の動きは早かった。

迅速に、屋敷の中に潜入した。

マーゴットがやりたいように振る舞えるように、屋敷の主人をとっ捕まえた。

後は、マーゴットが、屋敷の主人と話をするだけ。

屋敷の主人に素直さが見られない場合は、喜んでお仕事する所存。

「というわけで、門の外にいるお嬢様方を丁重に、屋敷の主人のいる部屋まで案内するのが、門番の役目だから。」
とトレメイヤ王国民。

「ええ！」
門番は、拘束されなかった理由を知って、自分も拘束されたかったと思った。

門番なのに、襲撃してきた親玉を屋敷の中へ案内して、ご主人に会わせてもいいのか？

ダメだろう。

クビだろう。

物理的に、首が飛ぶ案件ではないだろうか？

門番は、ちらちら、と上司とご主人をうかがう。

上司もご主人も、困りきった門番に頷いてはくれなかった。

門番は、窮地に立たされた。

「門番が、迎えに行かないなら、この部屋のいる屋敷の主人を縛ったまま、庭に出して、門の外にいるお嬢様のところまで連れて行くけど？」
とトレメイヤ王国民。

「目撃者多数！ニンデリー王国の話題をかっさらいそうだね？
醜聞という話題を。」
とトレメイヤ王国民。

「連れてこい。」
とご主人様は、唸る。

門番は、1秒でも早く、居心地の悪い空間を辞することにした。

「迎えにいきます。」
と門番。