子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

625.ベリーベリー・イニー。囲まれている？紳士とマーゴットは、一歩もひかない。

「お嬢さんは、獲物と言ったかな？」
と紳士。

「わたしにとっての獲物。貴殿にとっては、何になる？」
とマーゴット。

「お嬢さんは、物怖じしない性格だねえ。」
と紳士。

「怖気づく相手がいるとでも？」
とマーゴット。

紳士とマーゴットのやり取りを見ていたベリーベリー・イニーは、アレックスが静かになったな、と思った。

静かなはずだ。

マーゴットと手を繋いでいなかったら、ベリーベリーのイニーは、悲鳴をあげていたかもしれない。

マーゴット、ベリーベリー・イニー、アレックスの３人は、囲まれていた。

紳士は、のんびりと話しているが、紳士以外の人は、紳士の合図を待っているように見える。

いつの間に？

しかも、舞台の上にいるみたいに、マーゴット、ベリーベリー・イニー、アレックス、３人を取り囲む人達と紳士以外の人がいなくなっている！

ベリーベリー・イニーは考える。

可能性としては、通行人がはけて、紳士の手勢だけが道に残った？

アレックスが、この場所に来ることは決まっていた。

アレックスを連れていく予定を強行しようとしている？

アレックスに投げられた刃物は、逃げるな、逃さない、という、アレックスへの警告だったりする？

アレックスは、逃げるな、という警告だとは受け取らなかった。

アレックスの言動から察するに。

アレックスの思考は、以下の２つで占められていた。

飛んできた刃物から逃げること。

アレックス自身のストーカーだと思い込んだマーゴットから逃げること。

アレックスは、警告を警告だと受け取る冷静さに欠けているのかもしれない。

マーゴットが、アレックスを縄でぐるぐる巻きにして獲物扱いしているのは、アレックスは、獲物の立ち位置がぴったりくるから？

ひょっとして。
アレックスは、落ち着いて行動するのが苦手で、目先の出来事に気を取られて、全体が見渡せない人だったりする？

アレックスを単独行動させることは、誰にとっても良くない結果になると、マーゴットは、分かっていた？

マーゴットが、アレックスを縄でぐるぐる巻きにしたのは、アレックスが、アレックスの考えで行動するのを防ぐため？

ベリーベリー・イニーは、周りを囲む人から、明らかな害意を向けられて不安げなアレックスを見て、ベリーベリー・イニー自身の方向性を決めた。

マーゴットが動いたら、あたしは、マーゴットに合わせて動く。

あたしは、マーゴットの足を引っ張らない。

やるべきことが決まったベリーベリー・イニーは、マーゴットと紳士のやり取りをわくわくしながら見ている。

「怖いもの知らずのお嬢さんの獲物は、気の毒なくらい怯えている。
これ以上、お嬢さんに付き合わせたら、死んでしまいそうだ。」
と紳士。

「死にたくない！」
とアレックス。

「お嬢さんから縄を受け取って、私のところに来ると安全だ。」
と紳士。