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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

565.師匠レーイーエール・サバンナパークとひよっこ4号。ひよっこ4号は、決断する。

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キャスリーヌが忍ばせた平べったいミミズは、まだひよっこ3人に潜んでいる。

ひよっこ3人は、まだ息がある。

ひよっこ3人が息絶えれば、魔法で形成された平べったいミミズも霧散する。

キャスリーヌの目から見てひよっこ3人が今すぐ死ぬことはない。

ひよっこ3人の命は、布人間レーイーエール・サバンナパークの次の行動次第。

ひよっこ4号も息がある。
ひよっこ3人とは違い、ひよっこ4号は意識もある。

ひよっこ4号は、罪人として、生きていなくてはならないという制限がかかっているから、まだ死なない。

ひよっこ4号は、手足の自由と魔法を失った体で、残りの時間を生きることになる。

ひよっこ4号は、選択を誤ったことに気づけただろうか?

マーゴットは、布人間レーイーエール・サバンナパークの決断を待っている。

布人間レーイーエール・サバンナパークの口から、『降参します。』以外の言葉を聞く気はない。

キャスリーヌが、布人間レーイーエール・サバンナパークに使っている嫌な音を繰り返す魔法は、継続中。

ケトケト、ケトケト。

布人間レーイーエール・サバンナパークは、嫌な音に苛々しながらも、短気にならなかった。

粘り強い性質の布人間レーイーエール・サバンナパークは、降参するまで時間がかかるだろう。

時間がかかるといっても、今だけだ。

マーゴットもキャスリーヌも鷹揚に構えている。

今、布人間レーイーエール・サバンナパークの心を折っておけば、この先はスムーズにことが運ぶ。

キャスリーヌは、冷静に周りを見ていた。

布人間レーイーエール・サバンナパークに、ひよっこ3人の健康状態を確認する余裕はない。

布人間レーイーエール・サバンナパークの目の前には、不自然に手足の曲がったひよっこ4号。

恐ろしいことに、ひよっこ4号からは、魔力を感じ取れないのだ。

ひよっこ4号は、ひよっこ達の中で、一番魔力が潤沢にあったはずなのに。

魔法陣を投げつけて発動させながら、他の魔法を使うくらい、お茶の子さいさいだったひよっこ4号。

「魔力は、どうした?
何があった?」
布人間レーイーエール・サバンナパークは、ひよっこ4号の意識が混濁していないことを確認して、聞いてやる。

「突然、魔法が使えなくなりました。
手足も自分の意思では、動かせません。

逃げ出すと言っていたのにすみません。

俺は、どうなりますか?」
とひよっこ4号は、青ざめた顔で、師匠レーイーエール・サバンナパークに報告する。

「一生、そのままだ。

自由を得るための条件を達成できなかったから、代償として、自由になっていたものを失ったんだ、永遠に。」

布人間レーイーエール・サバンナパークは、誤魔化さなかった。

誤魔化して、希望を持たせる段階は、とうに超えている。

「そうですか。師匠。俺達は、捨て置いてください。今さら、助かる命でもないですよね?」
とひよっこ4号。
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