子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

520.レベッカ・ショア。私は、大人になったら、祖国に入れない。祖国の外から、祖国の家族に、元気だと伝えられる大人に、私はなりたい。

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マーゴットは、今、ここにいる人の中で一番小柄だけど、誰よりも、大きく見える。

マーゴットは、魔法を使うとき、『討伐』と一言、口にしただけ。

レベッカ・ショアは、マーゴットの魔法を見て、魔法の使い方、魔法をどういう風に見ているか、魔法の位置づけが、マーゴットとレベッカ・ショアでは違うのかも、と思った。

レベッカ・ショアは、魔法が使えるようになって嬉しい気持ちが大きい。

魔法への憧れについて、前世の意識に引きずられてきた自覚は、ある。

でも、前世の意識がなくても、魔法には心が惹かれていたと思う。

祖国にいて、何かのきっかけで、魔法の存在を知ったら、魔法が推奨されていない祖国を飛び出して、魔法が使える場所へ武者修行に行くことを望んだかもしれないと考えるくらいには。

魔法には、人の肉体を超えた現実を動かす力がある。

魔法は、なくても生きていける。

魔法は、あると楽しい。

魔法が使えない世界は、レベッカ・ショアには狭すぎる。

魔法が使えるようになったことで、レベッカ・ショアが祖国で貴族令嬢として生きる未来は、潰えた。

代わりに、無限の可能性を手に入れた。

祖国にいて、一人で魔法に憧れているだけだったら、今みたいに、顔をあげて、友達と話をしたり、アドバイスをもらいながら魔法を実際に試すことは、難しかったと思う。

魔法を推奨しない国の貴族令嬢が、魔法を知りたいからと未知の世界へ飛び出しても、魔法の不思議さを知る前に、身ぐるみ剥がされて、奴隷になっていることもありえる、と、現実を知るようになったレベッカ・ショアは想像できるようになった。

レベッカ・ショアが、ニンデリー王立学園に入学してから、もうすぐ1年。

夢を見ながらも、夢だけを見なくなった。

夢を見ながら、時々、現実を振り返る。

思いつくまま暴走することもなくなった。

私が、祖国の地を踏めるのは、卒業して、キャスリーヌの元で就職します、お世話になりました、と挨拶するときになる。

レベッカ・ショアは、今までとは違う思いで、祖国の家族を思った。

手紙には検閲が入っているらしいから、本音を伝えて問題ない範囲はどれぐらいかが、私には見当もつかない。

誰にも迷惑をかけない手紙の書き方が分からない今は、この1年で起きた変化の全部を手紙にしたためるわけにはいかない。

私のために、手を尽くして、ニンデリー王立学園に通わせてくれたことを感謝している、ということは、いつか、必ず伝えたい。

ありがとう。

苦労かけて、ごめんなさい。

だから。

祖国で魔法を見せることはできなくても、魔法を使って、自立して元気に楽しく暮らしているよ、と風の便りでもいいから伝えられるような大人に、私はなろう。

時間は、まだある。
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