子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

506.研究者の青年。無意識に前世の感覚で判断していた結果、やらかした。レベッカ・ショアは、前世の意識が遠慮してくれたのかも、と考えている。

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「魚には人権ならぬ、魚権があったり?」
と研究者の青年は、恐る恐るキャスリーヌに確認する。

魚を大量虐殺した罪に問われる未来なんて、予想していなかった。

「魚なら、実験に使っても大丈夫だと考えた根拠は?」
とマーゴット。

「四つ足の動物や、鳥を切り刻むのは、抵抗があった。
魚を切り刻む方が、まだ、抵抗が薄かったんだ。」
と研究者の青年。

「研究者の忌避感を根拠にした?」
とマーゴット。

「魚が問題になるとは思わなかったんだよ。魚類だから。」
と研究者の青年。

「魚類だから大丈夫だと考えた根拠を、詳しく。」
とマーゴット。

「魚類って、一番下だから。」
と研究者の青年。

「何が下?」
とマーゴット。

「哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類だから。

哺乳類と鳥類は、実験に使ったらダメな気がするし、爬虫類と両生類は、そのへんにいないし、いても触れないし。

魚なら、まあ、なんとかなりそうかなって。」
と研究者の青年。

「哺乳類から魚類までの分類と、ダメそうな気がする、という感覚は、いつ身につけたもの?」
とマーゴット。

問われた研究者の青年は、はっとした。

やってしまった。

やらかした。

前世の知識と、前世の感覚で判断していた。

無意識に。

研究者の青年は、マーゴットに返答する前に、キャスリーヌを見た。

キャスリーヌが頷いたのを見て、研究者の青年は、マーゴットに対し、正直に返答した。

「前世に身につけました。分類は、似たようなものを今世でも、聞いたことがあります。
感覚については、完全に前世のものです。」
と研究者の青年。

「カレンジは、今世の常識を学ぶところから始めるよ。

常識を知らないことには、身についた習性が今世でも問題ないかを判断できないよね。

意識せずに、前世の善悪や倫理観で判断した結果、今回は、問題を引き起こしたということだからね。」
とキャスリーヌ。

マーゴットのカバンに入っているミノカサゴのように、この世界には、意思を持つ魚が存在している。

ニンデリー王立学園のジュゴン先生は、ジュゴンであって、人ではない。

研究者の青年は、これから急ピッチで学ぶことになるだろう。

「よろしくお願いします。」
と研究者の青年は、頭を下げた。

レベッカ・ショアは、研究者の青年が頭を下げる姿を見て考えていた。

異世界転生して前世の人格が勝った場合。

今世で、取り返しのつかない失敗をしてからじゃないと、失敗に気付けない場合がある。

自分の判断が間違っている可能性を考えなければ、失敗したことに自分自身で気付けないかもしれない。

レベッカ・ショアの場合は、前世の意識とレベッカ・ショアの今世の人格は別人格だった。

前世の意識に引っ張られて常識が曖昧だったレベッカ・ショアが、比較的スムーズに今世の常識を習得できたのは。

今世の人格が、レベッカ・ショアとして、確立していたからではないか。

前世の思考や常識に引っ張られても、今世の常識を学び、自身で思考を修正することに抵抗がなかったレベッカ・ショア。

成人前に、バネッサやキャスリーヌという良き指導者にも恵まれた。

レベッカ・ショアは、異世界転生者としては、運が良かった。

ひょっとすると、前世の意識は、異世界転生するにあたり、今世の人格のレベッカ・ショアに遠慮してくれたのかもしれない。
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