子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

499.レベッカ・ショアと、休眠する前世の意識。

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マーゴット、キャスリーヌ、バネッサと出会う前のレベッカ・ショアは、自分自身が無知なことに気づけなかっただろう。

何かがおかしいと感じたとき。

周りを見て、自分自身を振り返って、また周りを見る。

そうやって、何がおかしいのかを追求した後。

今のレベッカ・ショアは、自分に足りないところは、どれで、今、何を自分に足していかないといけないか、を考えられるようになった。

大きな進歩だ。

昔のレベッカ・ショアは、前世の意識の感覚をそのまま自分のものとして使っていた。

前世は、前世。

今は、今。

前世のレベッカ・ショアは、日本という異世界で生きてきたけれど、今のレベッカ・ショアは、日本という国が存在しない世界で生きている。

前世と今世が同じ、なんてことはない。

別々の人格、別々の人生。

レベッカ・ショアは、レベッカ・ショア。

前世の意識は、とても静かだ。

前世の意識は、先に気づいて、眠っているのかもしれない。

前世の意識は、消えていない。

休眠中。

前世の意識が、前世の感覚で今世のレベッカ・ショアの考え方の方向付けをしてきた自覚が、前世の意識にはあった。

前世の意識は、自分の存在が今世のレベッカ・ショアに与える影響が、良いことばかりではないと感じた。

己の存在に危機感を覚えた前世の意識は、レベッカ・ショアが、前世のなんやかんやを心から欲するときまで、眠ることにしたのだ。

レベッカ・ショアは、いつも賑やかな前世の意識が眠ってしまったのが寂しい。

寂しいけれど、レベッカ・ショア自身が、前世の意識に頼る習慣は、レベッカ・ショア自身の思考を深める訓練にはならない。

レベッカ・ショアは、前世の意識がいたら、どうしても頼ってしまう。

前世の意識は、黙っていられず、レベッカ・ショアに口出ししてしまう。

前世の意識も、レベッカ・ショアも、今までずっと2人で、二人三脚で今世のレベッカ・ショアの人生を歩いてきた。

片方がいなくなったら、物足りない。

寂しい。

だけど。

レベッカ・ショアが、今世を生きるためには、もう一皮むける必要がある。

おくるみに包まれていられる赤子の時代は過ぎた。

自分の足を出して、歩き出そう。

自立への一歩。

大丈夫。また会える。

今はおやすみ、前世の意識。

たくさん相談にのってくれて、意見をくれた前世の意識。

的外れだったことも、的確だったこともあった。

大人として、子どものレベッカ・ショア助けようとしてくれていた。

前世の意識がなければ、レベッカ・ショアは、貴族令嬢として、問題なく母国で暮らせていただろう。

レベッカ・ショアは、前世の意識がそこにあることが当たり前に生きてきた。

前世の意識があるからこそ、レベッカ・ショアなのだ。

レベッカ・ショアは、もう前世の意識とだけで会話を完結することが少なくなっている。

迷ったとき、困ったとき、嬉しいとき、悲しいときに、話す生身の友達ができた。

レベッカ・ショア自身と、レベッカ・ショアの取り巻く環境の変化を前世の意識も感じとっていた。

今が、そのとき。

レベッカ・ショアは、前世の意識というおくるみを、大切に畳んだ。

ありがとう。

レベッカ・ショアは、一人で、心の中を整理した。
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