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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

493.男子学生。ボーイ・ミーツ・ガールが、ロマンスに発展しないときって?男子学生は、レベッカ・ショアを誤解している?

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男子学生は、目の前にいる普通の少女に確認することにした。

互いに、丁寧な言葉は崩れてしまったから、タメ口でもいいだろう。

「ええと、何と戦うことを想定している?」
と男子学生。

「闇に紛れて、襲ってくる敵。」
とレベッカ・ショア。

レベッカ・ショアの迷いのない回答に、男子学生は悟った。

俺の目の前にいる普通の女の子は、ちょっと夢見がちなお年頃なんだ。

多分、俺と同い年くらいだけど。

学園モノの冒険小説を愛読しているに違いない。

夜中に、敵に遭遇したら、戦うことを考えて、学園生活をしているなんて、そうとしか、考えられない。

家では、躾が厳しくて、冒険小説なんて知らずに育ってきたけど、親の目の届かない学園で、友達に教えてもらってハマったパターンじゃないか?

きっとそうだ。

最初は、ご令嬢会話していた。

冒険小説にハマっていくうちに、ご令嬢じゃない言葉を習得して、新しく覚えた言葉を色々使いたくなる時期に入ったんだろう。

悪いことは、学校で覚えて帰ってくるんだって、誰かも話していた。

ん?
ということは、この女の子。

男子学生は、目の前にいる少女の素性について、考えた。

夜中に、使用人を帯同しない貴族の男子寮まで、ふらふら足を伸ばすという危機感のなさ、と、冒険小説に出てくるような闇に紛れて襲ってくる敵の存在を信じている純粋さ。

平民なら、金持ちの家の箱入り娘だ。

世間知らずで純粋過ぎるところが幸いして、周りが悪事に引きずり込もうとしても、難を逃れてきた、のか。

貴族令嬢の可能性は?

まさか、貴族令嬢だったりしないよな?

少女の周りには、侍女らしき人は一人もいない。

侍女がついていたら、ご令嬢が夜中に一人で散歩するか?

侍女なら、全力で止めるはず。

異性の俺が、夜中に一緒にいることに対する危機感もないって、どういうことだ?

俺に緊張するという雰囲気もない。

呑気過ぎだろう?

この女の子は、
『男はみんな、オオカミなんだよ』と忠告されても、『耳も尻尾ないのに?』と真剣に返すタイプだ。

絶対、一人にしたらいけないタイプじゃないのか?

知らないうちにトラブルに突っ込んでしまい、帰れなくなって、見送った後に、見送った側が探しにいかないといけないタイプ。

男子学生は、そんなことはないよな、と思いながらも、懸念を払拭しておこうと、聞いてみた。

「侍女が、見当たらないけれど、一緒に連れてきていない?」
と男子学生。

「部屋にいると思う。夜遅いから、多分寝てる。」
とレベッカ・ショア。

男子学生が、うわっと叫ぶのをこらえた。

侍女持ち?

裕福な平民じゃなくて、ガチの貴族令嬢。

侍女が部屋で寝ているから、寝ている侍女を置いてきぼりにして、部屋を抜け出したってことか?

お嬢様、真夜中の大冒険へ、どころじゃない。

今さらなんだけど、どうしよう?

使用人を帯同しない貴族の男子寮の外で、この女の子と俺は、真夜中の逢瀬をしている構図になっている!

婚約、しないといけない感じ?
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