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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

486.レベッカ・ショア。気の進まない相手に話しかけないといけないとき。その相手が、待ちの姿勢のとき。なんと話しかけよう?

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男子学生は、待ちの姿勢を貫いている。

レベッカ・ショアが話しかけてくるのを男子学生が待っている気配は、ひしひしとレベッカ・ショアに伝わってくる。

特に名案が思いつかなかったレベッカ・ショアの前世の意識。

「最初は、無難に、名前と年齢を聞いてみる。」
と前世の意識。

レベッカ・ショアは、前世の意識の案を採用した。

「あなたの名前と年齢は?」
とレベッカ・ショア。

男子学生は、沈黙したまま。

「無言の行?」
と前世の意識。

「答えないのは、なんで?」
とレベッカ・ショア。

「人格が入れ替わったせいで、名前と年齢が分からない。

男子学生の2番目の人格の性格が日本にいたときと変わっていないなら、分からないことを分からないと自己申告はしない。

分からないのか?と聞かれたら、分からないと答えるけれど、分からないからどうすればよいか、と自ら指示を仰いだりはしなかった。

一を聞いて十を知るタイプで、分からないこと自体があまりなかったけど。」
と前世の意識。

「常に待て、の姿勢?」
とレベッカ・ショア。

「人と関わりが必要な場面でも、積極的にいくところは、ほとんど見なかった。」
と前世の意識。

「わざわざ、聞いてあげる必要はある?」
とレベッカ・ショア。

「ない。」
と前世の意識。

「答えない質問は、終わったことにして、次にいこう。」
とレベッカ・ショア。

レベッカ・ショアは、暖簾に腕押しの男子学生に違う質問をした。

「何をしていたか覚えている?」
とレベッカ・ショア。

男子学生は、まだ無言。

レベッカ・ショアは、友達と話すことが好きだ。

友達と過ごす時間は、宝物だと感じている。

レベッカ・ショアは、侍女から良くない扱いをされてきたけれど、人嫌いになっていない。

マーゴット、キャスリーヌ、バネッサとの出会いは、レベッカ・ショアの心身を強くした。

レベッカ・ショアは、自分から、新しい境地へ飛び込むことをためらわない。

必要に迫られたから、とはいえ、見ず知らずの男子学生と会話してみようとするくらい、積極的な性格だ。

理不尽な攻撃を受けていても、やりこめて、もう一度話をしようとするタフさがレベッカ・ショアにはある。

そんなレベッカ・ショアだが。

「どこの誰だか分からない上に、今の記憶があるかどうかも話そうとしないし、相手に一方的に話をさせることをなんとも思わない男子学生とは、向き合いたくない。」
とレベッカ・ショア。

「男子学生には帰ってもらおう。勝手に来たんだから、勝手に帰れと。」
と前世の意識。

レベッカ・ショアは、迷わず、男子学生に言った。
「あなたが、どこの誰でも構わない。帰って。」
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