子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

471.絶世の美少女が、普通の少女であるはずがない。

「ひかない者同士は、どうする？」
とレベッカ・ショア。

「男子学生が、口先で丸め込むか、バネッサの親切さに屈するか、しかない。」
と前世の意識。

「相互理解は？」
とレベッカ・ショア。

「交わらない世界の住人だから、会話は平行線が基本。

遠近法で並んでいる姿を遠くから見る分にはいいけど、決着がつくまで、隠れている方がいい。

自分達で、決着つけてもらうのが一番。」
と前世の意識。

「決着、つくの？」
とレベッカ・ショア。

「決着つくまで、さわらない。膠着状態が気になるなら、男子学生が何とかする。」
と前世の意識。

「バネッサじゃなく、男子学生が何とかするの？」
とレベッカ・ショア。

「バネッサには、退く理由がないから、多分退かない。」
と前世の意識。

「うん。ない。」
とレベッカ・ショア。

「あの男子学生は、もっと面倒なことに直面するくらいなら、のみこむ。」
と前世の意識。

「分かるの？」
とレベッカ・ショア。

「周りに埋没して、目立ちたくないオーラが出ている。」
と前世の意識。

「オーラ？全然分からない。どうやったら感じ取れる？」
とレベッカ・ショア。

「面倒そうで、目立ちそうなことには、逃げ腰になる性格。
バネッサだけを見ていたときは、周りを見ていなかった。
出会い頭は、ホイホイ釣れたけど、今の男子学生は、全力で釣り針を外そうとしている。

バネッサの釣り針は、外そうとすればするほど、外れにくくなるタイプ。」
と前世の意識。

レベッカ・ショアは、なんとなく理解した。

男子学生にとって、バネッサは、鬼門なのだろう。

「2人が勝手に解決するのを待てばいい？」
とレベッカ・ショア。

「正解。」
と前世の意識。


バネッサと男子学生の攻防は続いている。

男子学生は、どんなに辞退する意思を伝えても、目の前にいる絶世の美少女には、辞退が心からの願いだということが、伝わることがないと察した。

ならば。

「魚の解剖以外で、何か、レッスンは受け付けている？」
と男子学生。

「今日は、魚の解剖。何かレッスンして欲しいことが？」
とバネッサ。

マンツーマンレッスンを申し込むほど、学びに意欲的な男子学生に対して、努力を怠らないタイプのバネッサは親切さ全開。

「聞いてみただけ。」
と男子学生。

男子学生は、別のレッスンへの振り替えに失敗した。

「魚の解剖のレッスンをしたいのは、理由があるのか、聞いてもいい？」
と男子学生。

気を取り直した男子学生。

質問で時間を稼ぐ。

「ジュゴン先生の授業に出ていなかったり、途中で退席した学生に、魚の解剖について、伝えるためよ？

実体験からの学びは、身につくわ。」
とバネッサ。

おおう。
男子学生は、詰んだ、と思った。

目の前の美少女は、究極のボランティア精神と実行に移すだけの行動力を持ちあわせている。

逃げられないやつだ。

よく考えてみたら、夜中に男子寮の外に登場している段階で、普通の発想じゃない。

絶世の美少女なんだから、普通の少女のはずがない。

普通は、普通の枠から外れないから、普通なんだ。

やっちまったー。