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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

458.マロン・ニャスター教授とネッド・チリル教授が持ちこたえた秘密。

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チェール・モンスが呪術を解除し終えた。

同時に。
ソラッドロス王太子殿下の底上げされていた魔力が、元の値にまで、急激に下がっていく。

ソラッドロス王太子殿下の魔力を底上げしていたマロン・ニャスター教授の魔力とネッド・チリル教授の魔力は、それぞれの体に戻った。

ソラッドロス王太子殿下がふらつくのを、チェール・モンスを抱えたままのシグル・ドレマンが背中にもたれかからせている。

部屋の中で、一番元気に見えるのは、マーゴットだが、シグル・ドレマンは、一番小柄で線の細い少女に、成人男性であるソラッドロス王太子を支えさせることを良しとしなかった。

シグル・ドレマンの中では、して良いこと、と、してはいけないことが、はっきり分かれている。

マーゴットは、両教授の状態を確認していた。

チェール・モンスは、呪術を解除した途端に、酷い疲労に見舞われている。

マロン・ニャスター教授とネッド・チリル教授が、ソラッドロス王太子殿下の魔力を底上げすることで、ソラッドロス王太子殿下は、チェール・モンスが、支障なく呪術を解除できるようにすることに注力できた。

チェール・モンスがスムーズに呪術の解除を進められたのは、両教授がソラッドロス王太子殿下を助けたおかげ。

ソラッドロス王太子殿下に支えられていたものが急に消えていき、ゼロに落ちたところに、呪術を解除した疲労が重なったチェール・モンス。

マーゴットは、疲労困憊のソラッドロス王太子殿下とチェール・モンスに、最後の確認をさせる。

マロン・ニャスター教授とネッド・チリル教授は、生命力が、ぐんと落ち込んでいる。

快活に話をすることは、虫の息の両教授にはもうできない。

マーゴットは、ソラッドロス王太子殿下とチェール・モンスに、目を開かせた。

「ソラッドロス王太子殿下、チェール・モンス。
実験の結果を見なさい。
人と魚の実験は、終了。
実用化ならず。
今後、同じ実験はしないこと。

了承の返事をしなさい。」
とマーゴット。

「ああ。」
と息もたえだえのソラッドロス王太子殿下。

「うう。」
と、口を開くことも億劫になっているチェール・モンス。

「シグル・ドレマン。
ニンデリー王国では、今後、魚と人の実験はなし。
証人として、宣言しなさい。」
とマーゴット。

「ニンデリー王国では、魚と人の実験はなし。」
シグル・ドレマンは、素直に宣言した。

「マロン・ニャスター教授とネッド・チリル教授は、完全に人に戻った。

両教授が、人としての意識を保ち続けることができたのは、両教授の魔力量が多かったこともあるけれど、人としての意識を保つために、肉体を捨てる覚悟があったから。」
とマーゴット。

「肉体を捨てる覚悟。」
とシグル・ドレマンは繰り返す。

「そう、肉体が滅ぶことは避けられない。
肉体と一緒に魂まで死滅したら、遺志を継ぐ者を待てない。
肉体が滅んでも、遺志を継ぐ者に、継がせたいことがあるから、両教授は、自分自身の魔力で、魂を肉体から分離させた。」
とマーゴット。

「だから、会話がスムーズに出来たのか。
精神が、体の苦痛に引っ張られないから。」
と納得するシグル・ドレマン。

「両教授の遺志を継ぐ者に、継承ができたなら、両教授が霊体となって、魂を彷徨わせる必要はない。」
とマーゴット。

「そうだ。」
とシグル・ドレマン。

「今、全部、終わった。両教授は、人として、人の肉体に、人の魂が戻った。両教授は、このまま身罷れる。」
とマーゴット。

「分かった、死亡の確認か。」
とシグル・ドレマン。

「確認は、シグル・ドレマンに任せる。」
とマーゴット。

マーゴットは、両教授の側に立った。

「永遠に休むときがきた。眠るように旅立ちなさい。」
とマーゴット。

両教授は、静かに息を引き取った。
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