子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

445.マーゴット。魔法システムの解明には、異世界転生者の協力を得られるかどうかだけど？

「ヒイロ・ゼーゼ教授の下には、異世界転生者が何人もいた。彼らに協力を頼めば。」
とシグル・ドレマン。

「ニンデリー王立学園で既に把握されている異世界転生者で、ヒイロ・ゼーゼ教授の管理下の異世界転生者は、進んで協力しない、もしくは、できない状況だとわたしは予想する。

ソラッドロス王太子殿下は、把握している？」
とマーゴットは、ソラッドロス王太子殿下に尋ねた。

ソラッドロス王太子殿下から返事はない。

ソラッドロス王太子殿下の表情から。
ニンデリー王立学園内で、身柄を確保した異世界転生者の健康状態は、ソラッドロス王太子殿下の興味をひかなかった、と、マーゴットは察した。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、手持ちのカードを切らずに、ソラッドロス王太子殿下の期待に応えてきたのだろうか？

ヒイロ・ゼーゼ教授は、貴族社会での立ち回りは、ともかく、研究者としての経験が足りない王太子殿下の目を誤魔化すくらいは、わけなかったのか。

「研究者本人が割り切るだけの保障と、よほどの好条件を提示しない限りは。」
とマーゴット。

ソラッドロス王太子殿下の研究への協力を、ヒイロ・ゼーゼ教授が管理している異世界転生者に求めても、期待薄だとマーゴットは思う。

ニンデリー王国の根幹、建国の祖が作り上げた魔法システムに関わることは、ニンデリー王国に、一生縛られることになる。

ニンデリー王国と、ニンデリー王家にとって、建国の祖の魔法システムを研究して解明して、今の王家にぴったりと合うものに作り直すことがゴール。

ニンデリー王国とニンデリー王家の命運を左右するため、失敗したら、文字通り、研究者の首がとぶと分かっている研究に手を挙げる研究者はいるのだろうか？

ニンデリー王国とソラッドロス王太子殿下は、異世界転生者から協力を得られるような交渉材料を用意しなくてはならない。

話を聞いて、研究に協力しない方が、ニンデリー王国に縛られず、いつでも逃げ出せると考えるのは、マーゴットだけではないと、マーゴットは思う。

愛国心が強い人。
他に行く場所がない人。
なんらかの意図がある人。
何も考えていない人。

そういう人は、手を挙げる？
と、マーゴットが考えていると。

「ヒイロ・ゼーゼ教授は、指導している学生に無体な真似はなさらない。」
とシグル・ドレマン。

シグル・ドレマンの知っているヒイロ・ゼーゼ教授は、そうだったんだろう。

人材集めも、人材育成も、ソラッドロス王太子殿下がどう動くか、にかかってくる。

「解明が困難なのは、理論が不明だったから、だけ？」
とマーゴット。

「理論もだが、異世界の言語が用いられている可能性もある。」
とネッド・チリル教授。

「可能性の話をするということは、魔法システムには、一切手を付けていない？」
とマーゴット。

「分からないものを触って壊すわけにはいかない。」
とネッド・チリル教授。