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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

433.噂をすれば、なんとやら、というよね。駆けつけてきた理由は、秘密の実験が荒らされているから?それとも、子飼いの危機だから?

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マーゴットは、呪術が使われる気配を感じた。
誰か、来る!

シグル・ドレマンを指定する。
「解除。」
とマーゴット。

シグル・ドレマンに、幾重にもかけられていた呪術が、外れていく。

マーゴットは、鉄扇を手に待ち構える。

どこからでもかかってくるといい。

「派手にやったな。」
という、若い男性の声がした。

バネッサの兄、アレックスに近い年齢の男性が、姿を現す。

チェール・モンスが、声を出さずに反応した。

間違いない。

ニンデリー王国の王太子殿下だ。

「かつて、ニンデリー王国で呪術を使う人は、異端だったけど、変わった?」
とマーゴット。

「変わらない。」
と若い男性。

呪術の縛りがなくなるにつれて、シグル・ドレマンは、体を大きく動かし始めた。

仮死状態から、復活出来たようだ。

けっこうなことだ。

後遺症は、残るまい。

シグル・ドレマンは、体を動かして起き上がってきた。

シグル・ドレマンは、青年の顔を見て、けろっとした様子で聞いた
「王太子殿下。悪巧みですか?失敗しましたか?」

シグル・ドレマンのこのどストレートさは、失敗を許されない立場の人には、疎ましがられるだろう。

チェール・モンスは、魔法で雁字搦めにされたままで、藻掻いている。

「どうかな。その者に、その魔法をかけたのが、ドレマンなら、魔法から自由にしてやれ。」
と王太子殿下。

シグル・ドレマンは、即答した。

「止めておきましょう。その者は、危険人物です。
使用人を帯同しない貴族の男子寮で、理由のわからぬ攻撃をしてきました。この者から話を聞くなら、このままが、よろしいです。」
とシグル・ドレマン。

王太子殿下は、不快げに眉をひそめた。

「命令だ。その者の魔法をとけ。シグル・ドレマン。」
と王太子殿下。

シグル・ドレマンは、静かにその場にひざまずく。

「王太子殿下。従わぬご無礼をお許しください。

これも全て、王太子殿下の尊い御身の安全のためです。

王太子殿下のいらっしゃる場所で、得体のしれぬ攻撃をしてくる得体の知れぬ子どもを野放しにするわけにはいきません。

ニンデリー王国の貴族として、王太子殿下の御身への配慮を、忘れることがあってはならないのです。
ご命令に背くことになったとしても。」
とシグル・ドレマン。

シグル・ドレマンは、飼い馴らせば、立派な番犬になる素質がある、とマーゴットは思った。
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