子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

411.魚の生臭い匂いの不意打ちには、どうする?換気がいいよ!換気しよう!あれ?廊下から、音がする?ずるずるひきずっている?こっちに来るな!

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暗闇の中に薄明かり。

真夜中、学生寮の建物の外から、響く音。

何かを切っているような音。

気になった男子学生は、そっと、寮の部屋の窓から、外の様子を見てみた。

直方体の発光体。

水のじゃぶじゃぶ言う音。

暗闇に光る鈍色の双眸。

闇に浮かび上がる白い三角巾と白い割烹着。

カーテンを開けて見てしまった男子学生は、ぶるぶる震えて、ベッドに戻った。

何かを切り刻んでいる?

死者が蘇った?

一人、二人、とカーテンを開けて外を確認する男子学生の数は増えていく。

ベッドでぶるぶるするだけではなく、外に確かめに行きたいと考える者も出始めた。

しかし。

使用人を帯同しない貴族の男子寮は、夜中に出歩いてはならないのだ。

怪奇現象に遭遇してしまう。

何人かの男子学生は考えた。

扉がダメなら、窓がある。

扉から廊下に出るのではなく、窓から直接、外に出たらいいじゃないか。

頭がいい!

何人かの男子学生が、部屋の窓を開けた。

生臭い!

使用人を帯同しない貴族の男子寮とは、遠からずの距離で。

バネッサが、次々に、生け簀から出した魚の解剖をしている。

使用人を帯同しない貴族の男子寮のあたりは、魚の生臭さと血生臭さで、充満していた。

今宵は、風も強くない。

風で匂いが拡散しない。

よって。
男子学生が開けた窓から入ってくる空気は、魚と、魚の血の匂いを、部屋の中に運んできた。

鼻が曲がる。

窓を慌てて閉めたが、窓を閉めると、生臭さが部屋中に染み込みそう。

部屋の外に出たらダメだけど、扉を開けたら、ダメとは聞かない。

部屋の中にいて、出なければいいんだ。

窓を開けてしまった男子学生は、そろそろ、と部屋の扉を開けた。

隙間ぐらいじゃ、空気は入れ替わらない。

開ける扉の幅は、徐々に広がり、最終的に全開になった。

生臭い匂いと血生臭い匂いは、廊下に流れていく。

びくびくしてみたけれど、平和だ。

扉を開けてみても、何も起こらない。

怖がることなんて、なかったなあ。

男子学生は、ほっと気を抜いていた。

その時、廊下を這い回るような、引きずるような音がした。

え?
なんか、怖い。

早めに扉を閉めよう。

男子学生は、扉を閉めようとした。

しかし。

扉は、ぴくりとも動かない。

なんで?

立て付けが悪い?

スムーズに開いたのに。

まさか、閉まらない?

男子学生は、一生懸命、ドアノブを引っ張る。

扉は、うんともすんとも言わない。

ずるずるとした動きは、だんだん、近づいてきて、はっきりと聞こえるようになった。

正体を見たら、連れていかれる!

男子学生は、扉を閉めるのは諦めて、ベッドにもぐった。

頭から布団を被る。

気づかれませんように。

気づかれませんように。

通り過ぎますように。

男子学生の願いも虚しく。

何かを引きずるような音は、男子学生の部屋の扉の前で止まった。

入ってくるな。

入ってくるな。

俺は、何も見ていない。

俺は、何も見ないから!

男子学生は、ベッドの上の布団の中で、丸くなった。

止まっていたずるずる音が再開した。

ずるずると、這いずり回るような動きをしているだろう何かは、男子学生の部屋の入り口を乗り越えてきた。
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