上 下
405 / 776
第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

404.キャスリーヌ。『ヒイロ・ゼーゼ教授を突き動かしたものは?』『使命感。』『止まらないヒイロ・ゼーゼ教授。研究室の在籍者はどうした?』

しおりを挟む
「王太子の掲げる学園の改革がどんなものだろうと、異世界転生者の在籍者は、学園の方針変更に何の関心もなかった。

他の誰でもない、唯一の世継ぎ、王太子が旗振り役で進める施策だ。

どんな内容の施策でも、世継ぎの名前を使っているなら、失敗で終わらせるはずがない、と異世界転生者の在籍者は考えていた。

異世界転生者の在籍者の見通しは、外れていないだろ?」
と青年はおどけた。

「的確。」
とキャスリーヌ。

「学園改革派の王太子を批判して、改革反対を唱えるのは、勝ち目のない選挙に出て売名行為との評価を得るようなもの、と異世界転生者の在籍者は考えていた。

異世界転生者の在籍者をはじめとする、ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室の在籍者は、全員で、ヒイロ・ゼーゼ教授に、王太子と対立するのは得策じゃない、と、説得し続けた。」
と青年。

「研究室の在籍者の説得は、指導教授のヒイロ・ゼーゼ教授に、全く響かなかった。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、貴族としての誇りを胸に、王太子の改革の反対派として名乗りをあげると心を決めていた。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、勝負の行方より、貴族の誇りを大切にしていた。

『ニンデリー王立学園で教鞭を執る教授の一人であり、ニンデリー王国の貴族であるからこそ。

王太子の学園改革に黙っているわけにはいかない。

ニンデリー王立学園の良き伝統を自分達の代で失くすわけにはいかない。』
と、ヒイロ・ゼーゼ教授自身が語っていたよ。

敗者になると決まっているんだから、王太子に逆らってくれるな。

と、考えた異世界転生者の在籍者を中心に、毎日のようにヒイロ・ゼーゼ教授を説得しても、いつも、暖簾に腕押しで終わった。」
と青年。

「ヒイロ・ゼーゼ教授は、説得に応じなかった?」
とキャスリーヌ。

「ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、勝つための工作じゃなく、王太子への抗議に重きをおいていた。」

「ヒイロ・ゼーゼ教授は、自ら、分かっていて敗者への道を突き進んでいった?」
とキャスリーヌ。

キャスリーヌには、ヒイロ・ゼーゼ教授の行動原理が、さっぱり分からない。

勝負は勝たなくて、どうする?

不思議がるキャスリーヌ。

ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、理解に苦しむよな、と青年は、キャスリーヌに理解を示した。

「敗色濃厚と気づきながらも、ヒイロ・ゼーゼ教授を突き動かしていたのは、ヒイロ・ゼーゼ教授が持ち合わせていた使命感。

研究室の在籍者全員の反対よりも、教授の使命感が勝ったんだ。」
と青年。

「ヒイロ・ゼーゼ教授の自己犠牲に見える精神は、指導教授として、問題がある。
学生が、指導教授を失う。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、玉砕覚悟で、自業自得。
学生は、とばっちり。」
とキャスリーヌ。

「ヒイロ・ゼーゼ教授の説得が無理だと理解した在籍者のうち、在籍者の過半数は、ヒイロ・ゼーゼ教授が行動に移す前に、ヒイロ・ゼーゼ教授の指導から外れる選択をした。」
と青年。

「穏当。」
とキャスリーヌ。

「残った在籍者は、ヒイロ・ゼーゼ教授が、直前で踏みとどまることを期待した人と、
ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室以外に、行き先がない人。」
と青年。

「ワンマンの組織の終焉の図を見たり。」
とキャスリーヌ。

「ワンマン、終焉、その通りだ。」
と青年。

青年は、愁嘆場を思い返す。

魔法の力で、時間が巻き戻って、全部なかったことになれば、今も、変わりない日常だったのに。

魔法が日常使いされている異世界に転生しても、一番使いたい魔法は、おとぎ話の世界にしか存在しなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...