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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

403.キャスリーヌ。『貴族として、教授として、学園改革反対の声をあげようとしていたヒイロ・ゼーゼ教授。研究室の在籍者の反応は?』

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「『魔法の進化』を専攻した異世界転生者は、二度目の人生の出だしでつまずいた人がちらほらいた。

異世界転生者がちやほやされるストーリーは、異世界転生者が作り出した幻想なんだって、俺は思った。」
と青年。

「異世界転生者が目の前にいても、私はちやほやしない。ちやほやする理由がない。」
とキャスリーヌ。

おっしゃる通り、と、青年は苦笑い。

「ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室は、二度目の人生の開始早々につまずいた異世界転生者の居場所になっていた。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、異世界転生者の見解や、思考から、魔法を進化させたいと考えた人だからね。

ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室は、年齢制限がなかったんだよ。

異世界転生者の、今世の肉体年齢なんて、あてにならないから。

ヒイロ・ゼーゼ教授の『魔法の進化』は、在籍者の口コミで、学生が集まる研究室だった。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、この世界に生まれて、行き場をなくした異世界転生者に居場所をくれた。

異世界転生者の在籍者の中には、ヒイロ・ゼーゼ教授のことを、この世界が生み出した異世界転生者のための神だと言っている人もいたな。

ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室の在籍者は、皆、ヒイロ・ゼーゼ教授を慕っていたよ。

ニンデリー王立学園の方針について、ニンデリー王国の王太子と真っ向から対立する意見を、ヒイロ・ゼーゼ教授が、王太子に上奏すると聞くまではね。」
と青年。

「在籍者は、ヒイロ・ゼーゼ教授に反対したんだ?」
とキャスリーヌ。

ヒイロ・ゼーゼ教授のすることに、異世界転生者は反対しないんじゃないか、と思ったから、キャスリーヌは驚いた。

「意外か?
異世界転生者の在籍者が、反対したのは、異世界転生者の自分本位な理由から、だけどな。」
と青年。

「異世界転生者の在籍者は、教授の言うことを盲信しなかったんだ?」
とキャスリーヌ。

冷静だよね、とキャスリーヌは思った。

「異世界転生者は、身近な権力者との関係作りに失敗して、二度目の人生に躓いていることが多い。

俺も含めて、権力者と対立する危うさを理解していたよ。」
と青年。

「身近な権力者?」
とキャスリーヌ。

「貴族だと、当主の親や、発言力のある兄弟姉妹。
一族の繋がりが強固だと、長老とか。」

確かに、人生を左右する、一番最初の権力者である。
納得。

「異世界転生者の在籍者は、
ニンデリー王立学園に来る前の失敗から、
権力に逆らわない方が良い、
権力者に嫌われない方が良い、
権力者との対立は不利になる、
という考え方が身についていたんだ?」
とキャスリーヌ。

「ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室にいた異世界転生者の在籍者は、
ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室という居場所を失いたくなかった。
他に行くあてがなかったからな。
自分達の居場所を確保するために、
ヒイロ・ゼーゼ教授に失脚するような真似をしてほしくなかったんだ。」
と青年。

「異世界転生者の在籍者は、
ヒイロ・ゼーゼ教授が、
王太子主導のニンデリー王立学園改革に反対派として、声を上げれば、
ヒイロ・ゼーゼ教授が失脚すると予想がついていた?

王国における王侯貴族の在り方を、生粋の貴族のヒイロ・ゼーゼ教授よりも、理解しているよ。」
とキャスリーヌは評価した。

王家か政治的に機能してきたニンデリー王国において、王太子の権力を軽く見る行いは、自殺行為だ。

ヒイロ・ゼーゼ教授が、貴族の義務とか、教授としての責任感とか、気にしたところで、学園改革の話に、一枚噛ませてもらえなかったヒイロ・ゼーゼ教授は、どんなに足掻こうと、最初から、王太子の敵ではない。

ヒイロ・ゼーゼ教授は、玉砕覚悟だったのだろうか?
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