378 / 800
第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。
377.チェール・モンス。『たった一瞬の奇跡。ぼくは一生忘れない。15歳まで施設にいても、同じ景色は二度と見れない。だから、決断したんだ。』
しおりを挟む
小綺麗な少年とチェール・モンスは、手を繋いで走った。
後から大人が追いかけてくるのが、面白かった。
慌ているに、慌てていないように振る舞うんだ?
小綺麗な少年とチェール・モンスは、手を繋いで、施設の外に一歩踏み出した。
確かに一瞬だった。
一瞬だけ、チェール・モンスは、目にすることが出来た。
耳にすることが出来た。
空気中に色彩が踊り狂う。
無限に広がる色付いた世界。
ふぉん、と音がした後、チェール・モンスの意識は暗転した。
目が覚めたら、小綺麗な少年が怒られていて、チェール・モンスも一緒に怒られた。
怒られるのも、初めて。
誰かと一緒に怒られるのも、初めて。
こんなにおかしいことだった。
チェール・モンスは、怒られながら、楽しくなった。
「ぼく、あの景色をまた見たい。」
チェール・モンスが無邪気こぼしたのは、チェール・モンスの初めての希望。
生活するため、売りを作るため、特技を作るか、特技がないなら、平均的にできるように、と、下を向いて努力を続けてきたチェール・モンス。
「余計なことをしたから、無謀なことを言い出したではありませんか。」
と施設の大人は怒った。
「この子どもは、特技も取り柄も何もない中で、生活する術を身につけている最中だったのに。
夢や希望よりも、地に足のついた生活がどれ程大切か。
何もかもが平均以下の子どもに夢を見せて、責任なんか取れないでしょう?
エゴで、子どもの未来を歪めたのは、どんな気分ですか?
さぞ、いい気分ですよね?
一瞬のためだけに、全部無くして、それでも、平気だっていうんですから。」
施設の大人は、小綺麗な少年に話しているのに、チェール・モンスは、悲しくなった。
施設の大人が、小綺麗な少年に対して話している内容は、全て、チェール・モンスの出来の悪さを語っていたから。
ぼくは、一瞬の煌めきに、夢や希望を持って生きることさえできない?
でも、あの煌めきを見たら、見る前には、戻れない。
ぼくは、あの煌めきを一生諦めて、平均寄りの平均以下として、これからも、ここで暮らす?
暗く悲しい気持ちになって、チェール・モンスは、小綺麗な少年を見た。
小綺麗な少年は、怒っていた。
「大人が、この子どもができるようになるまで、待つことさえしないせいじゃないのか?
この子どもは、どれもこれも平均以下だと言う。
他の子どもが先に出来るようになったから、と、
この子どもの学習を後回しにすることばかりを繰り返せば、この子どもは、いつまで経っても、学習が終わらない。
子どもは、自分で、努力していたが、指導を途中で投げ出された子どもが、一人で努力をしていても、何の手助けもしてこなかったのか。」
と小綺麗な少年。
チェール・モンスは、小綺麗な少年が自分のために怒ったのだと、嬉しくなった。
小綺麗な少年の怒りに、施設の大人は取り合わなかった。
「貴方様がなさったことはなかったことにしません。」
と施設の大人。
小綺麗な少年は、強制送還を宣言されて、大人に囲まれた。
「強制送還?次はいつ会える?」
とチェール・モンス。
「会えません。災難でしたよ。本当に。」
と施設の大人。
会えないなんて、嫌だ!とチェール・モンスは思った。
気づいたら、走って、追いかけて、大人の足の間をすり抜けて、強制送還されそうになっている小綺麗な少年めがけてダイブしていた。
「もう会えないなんて、嫌だ。ぼくは、また、あの景色を見るから、一緒に見ようよ。」
チェール・モンスは、少年に飛びついて、まくしたてた。
「二人とも、見ることはありません。」
施設の大人が冷めた目で、チェール・モンスを呼ぶ。
「戻って、部屋に入り、反省しなさい。」
「もう会えないなら、ぼくは戻らない。ぼくは、あの景色を二人で一緒に見たいんだ。」
チェール・モンスは、小綺麗な少年の体を掴んで離さなかった。
「何も満足に出来ないんだから、こじんまりと身の丈にあった生き方をしなければ、不幸になります。」
施設の大人の言葉に、チェール・モンスは、泣きながら抗った。
「不幸にならない。ぼくは不幸にならない生き方を見つける。」
その時。
「この子どもは、もらい受ける。」
と小綺麗な少年が言った。
小綺麗な少年の服は、チェール・モンスが握りしめたせいで、ぐしゃっとなっている。
「名前は?」
と小綺麗な少年。
「ぼくは、チェール・モンス。」
「返品交換は受け付けていません。」
施設の大人は言った。
チェール・モンスは、小綺麗な少年と、サルバルタルを後にしたのだ。
後から大人が追いかけてくるのが、面白かった。
慌ているに、慌てていないように振る舞うんだ?
小綺麗な少年とチェール・モンスは、手を繋いで、施設の外に一歩踏み出した。
確かに一瞬だった。
一瞬だけ、チェール・モンスは、目にすることが出来た。
耳にすることが出来た。
空気中に色彩が踊り狂う。
無限に広がる色付いた世界。
ふぉん、と音がした後、チェール・モンスの意識は暗転した。
目が覚めたら、小綺麗な少年が怒られていて、チェール・モンスも一緒に怒られた。
怒られるのも、初めて。
誰かと一緒に怒られるのも、初めて。
こんなにおかしいことだった。
チェール・モンスは、怒られながら、楽しくなった。
「ぼく、あの景色をまた見たい。」
チェール・モンスが無邪気こぼしたのは、チェール・モンスの初めての希望。
生活するため、売りを作るため、特技を作るか、特技がないなら、平均的にできるように、と、下を向いて努力を続けてきたチェール・モンス。
「余計なことをしたから、無謀なことを言い出したではありませんか。」
と施設の大人は怒った。
「この子どもは、特技も取り柄も何もない中で、生活する術を身につけている最中だったのに。
夢や希望よりも、地に足のついた生活がどれ程大切か。
何もかもが平均以下の子どもに夢を見せて、責任なんか取れないでしょう?
エゴで、子どもの未来を歪めたのは、どんな気分ですか?
さぞ、いい気分ですよね?
一瞬のためだけに、全部無くして、それでも、平気だっていうんですから。」
施設の大人は、小綺麗な少年に話しているのに、チェール・モンスは、悲しくなった。
施設の大人が、小綺麗な少年に対して話している内容は、全て、チェール・モンスの出来の悪さを語っていたから。
ぼくは、一瞬の煌めきに、夢や希望を持って生きることさえできない?
でも、あの煌めきを見たら、見る前には、戻れない。
ぼくは、あの煌めきを一生諦めて、平均寄りの平均以下として、これからも、ここで暮らす?
暗く悲しい気持ちになって、チェール・モンスは、小綺麗な少年を見た。
小綺麗な少年は、怒っていた。
「大人が、この子どもができるようになるまで、待つことさえしないせいじゃないのか?
この子どもは、どれもこれも平均以下だと言う。
他の子どもが先に出来るようになったから、と、
この子どもの学習を後回しにすることばかりを繰り返せば、この子どもは、いつまで経っても、学習が終わらない。
子どもは、自分で、努力していたが、指導を途中で投げ出された子どもが、一人で努力をしていても、何の手助けもしてこなかったのか。」
と小綺麗な少年。
チェール・モンスは、小綺麗な少年が自分のために怒ったのだと、嬉しくなった。
小綺麗な少年の怒りに、施設の大人は取り合わなかった。
「貴方様がなさったことはなかったことにしません。」
と施設の大人。
小綺麗な少年は、強制送還を宣言されて、大人に囲まれた。
「強制送還?次はいつ会える?」
とチェール・モンス。
「会えません。災難でしたよ。本当に。」
と施設の大人。
会えないなんて、嫌だ!とチェール・モンスは思った。
気づいたら、走って、追いかけて、大人の足の間をすり抜けて、強制送還されそうになっている小綺麗な少年めがけてダイブしていた。
「もう会えないなんて、嫌だ。ぼくは、また、あの景色を見るから、一緒に見ようよ。」
チェール・モンスは、少年に飛びついて、まくしたてた。
「二人とも、見ることはありません。」
施設の大人が冷めた目で、チェール・モンスを呼ぶ。
「戻って、部屋に入り、反省しなさい。」
「もう会えないなら、ぼくは戻らない。ぼくは、あの景色を二人で一緒に見たいんだ。」
チェール・モンスは、小綺麗な少年の体を掴んで離さなかった。
「何も満足に出来ないんだから、こじんまりと身の丈にあった生き方をしなければ、不幸になります。」
施設の大人の言葉に、チェール・モンスは、泣きながら抗った。
「不幸にならない。ぼくは不幸にならない生き方を見つける。」
その時。
「この子どもは、もらい受ける。」
と小綺麗な少年が言った。
小綺麗な少年の服は、チェール・モンスが握りしめたせいで、ぐしゃっとなっている。
「名前は?」
と小綺麗な少年。
「ぼくは、チェール・モンス。」
「返品交換は受け付けていません。」
施設の大人は言った。
チェール・モンスは、小綺麗な少年と、サルバルタルを後にしたのだ。
1
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。
後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。
その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。
世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。
王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる