子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

375.チェール・モンス。『私を特別にしてくれた人と私の出会い。』

チェール・モンスは、施設の中で、可もなく不可もない子どもだった。

平均よりはやや下回る出来だが、問題を起こしたことはない。

言われたことを言われたようにする子ども。

教えられた通りにしているが、要領が悪いのか、何をさせても、褒めるには至らない出来栄えになる子ども。

それが、チェール・モンス。

チェール・モンスが、視察にくる人々に紹介されたことは一度もない。

目玉商品ではなく、セット売りで、在庫処分のような立ち位置にいたチェール・モンス。

そんなチェール・モンスは、ニンデリー王国の王太子殿下と出会うまで、自分は、平均より下だと思ってきた。

最初から、そうだった。

何もしなければ、平均寄りにもなれない。

だから、チェール・モンスは、要領の悪さを埋めるために、一人で、こつこつと努力を続けていた。


施設側が、ニンデリー王国の王太子の目の前に、優秀な子どもを揃えた結果。

ニンデリー王国の王太子は不機嫌になったそうだ。

『優秀な子どもだけではなく、普通の子どももいるだろう。
普通の子どもの様子こそ視察の価値がある。』

ニンデリー王国の王太子は、そう言うと、視察側が用意した部屋を出ていった。

チェール・モンスは、一人で部屋の中にいた。

そのときは、特に何かをしていたわけじゃない。

視察の人が来る間は、部屋の中でいる決まりだったから、チェール・モンスは、部屋の中にいた。

突然扉が開いたときは、もう視察が終わったんだと思った。

『終わった？』
とチェール・モンスが聞いた相手は、見たことがない小綺麗な少年だった。

チェール・モンスが不思議がるより前に少年は、部屋に入ってきた。

『何が？』
と小綺麗な少年。

『視察。終わったら、動きたい。』
とチェール・モンス。

生活空間に、見知らぬ他人がいると、落ち着かない。

見られないように、見られなても、目立たないように、と言われているようなチェール・モンスは、特に。

『動けないことはないだろう？』
と少年。

『視察の間は、ダメ。』
答えながら、チェール・モンスは、思った。

偉い人の子どもって、こんな感じかな？と。

偉い人の子どもは、チェール・モンスの隣に座った。
『視察は、まだ終わっていない。私と話をして待とう。』
チェール・モンスを見ながら、少年は、チェール・モンスを話に誘った。

こうして、チェール・モンスとニンデリー王国の王太子の縁は繋がった。