子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

350.ベリーベリー・イニーの父親。『父さんは、身元がはっきりしていて、契約書を書いてくれる貴族としか、仕事をしないよ。』

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「終わったことをいつまで引きずっているんだ?と叩き出されたよ。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「終わったことだからって、お祖父さんが助けたけど、お祖父さんを助けてくれないんだ?」
とベリーベリー・イニー。

「実質的に、助けたのが、お祖父さんじゃなく、貴族だった、という点も大きかったんだよ。
後から思えばね。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「複雑。」
とベリーベリー・イニー。

「父さんは、無理やり伝手を作って、問題を解決した貴族に、仕事がなくなったお祖父さんに仕事をください、と頼みにいった。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「どうなった?」
とベリーベリー・イニー。

「頼みにいった貴族は、お祖父さんではなく、父さんになら、仕事を紹介する、と言ったんだ。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「父さんに?」
とベリーベリー・イニー。

「父さんは、その貴族に、お祖父さんの話をしたよ。

すると。
『お祖父さんが、どこかの貴族の後ろ盾を得てから、行動に移していたら、今のように困窮はしなかっただろう。』
と、その貴族は言うんだよ。

持て囃されていた時は、平民の希望だ、英雄だ、とお祖父さんは騒がれていた。

時の人になったお祖父さん自身は平民で、お祖父さんを持て囃した人も、皆、平民だったよ。

だから、貴族の後ろ盾なんて、お祖父さんも父さんも考えたことがなかった。

この喧騒がずっと続くと思っていた。

考え込む父さんに、その貴族は、貴族から見た平民の生態を話してくれた。

『平民は、移り気だ。
問題が、解決したら、誰も振り返らない。
毎日の生活の彩りや一杯の酒のために、身内の話をする。』

確かに、そうだと頷いた父さんに、その貴族は続けたよ。

『思い返してみるといい。
お祖父さんを時の人にしていた人に、問題の関係者はいたか?
全員、赤の他人だっただろう?
酒の肴にして、楽しんで、旬が終わったら、見向きもしない。

自由で、責任がないのが、この国の平民の生き様だ。

お祖父さんのことを思い出すことは、もうない。』

父さんは、その貴族の言葉がとても印象深かった。

父さんは、その貴族に国外の貴族相手の仕事を斡旋してもらうようにした。

父さんの生まれた国は、平民も勢いがあったんだけど、その勢いは、勢いのままに、お祖父さんを溺れさせた。
お祖父さんが沈みかけて、困っていた父さんに手を差し伸べてくれたのは、全く縁のなかった一人の貴族だけだった。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「あたしも、父さんが行かない国は、行かない。」
とベリーベリー・イニー。

「父さんは、身元がはっきりしていて、契約書を交わしてくれる貴族としか、仕事をしていない。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「ベリーベリーの友達が、貴族と聞いて、まともな貴族かどうかだけが、父さんの心配だった。」
とベリーベリー・イニーの父親。

「どうだった?」
とベリーベリー・イニー。

「ベリーベリーの友達は皆、ベリーベリーが自慢できる友達だよ。
ベリーベリーは、一人の人間として、意思表示をしたらいい。
どんな結果でも、ベリーベリーの友達は、ベリーベリーの意思を尊重してくれるよ。」
ベリーベリー・イニーの父親は、両手で頭の上に大きな丸を作った。

「素敵な友達が得られて良かったね。ベリーベリー。心は決まったかい?」
とベリーベリー・イニーの父親。
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