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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

340.ベリーベリー・イニー。父親と一緒に、母親の容態を確認する。『あたしは、母さんをあたしの元に取り返したいよ、父さん。』

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ベリーベリー・イニーは、父親と共に、母親のベッドの脇に立っている。

「私が、顔を見たときは、意識があったんだけど、その後は。」
とベリーベリー・イニー。

「頑張ったな。母さんは、なんて?」
と父親。

「ナンシーの家族が、いきなり家を壊しだしたから、外に出たんだって。
ナンシーの弟とお母さんにやられて。
ナンシーのお父さんは、母さんが開けた玄関から、家に入ったって。
ナンシーのお父さんが、まだいると危ないから、家に入らないで寮にいなさい、って。」
とベリーベリー・イニー。

「その後は、全然、目を覚まさなくなった。
呼んでも、動かしても。
体は拭いたりしたけれど。」

ベリーベリー・イニーは、反応の返ってこない母親に戸惑いと恐怖を感じている。

「母さん、ずっと、このままになったら、どうしよう。」
とベリーベリー・イニー。

ベリーベリー・イニーは涙を流しながら、母親の体にしがみついた。
「こんなの、母さんなのに、母さんじゃない。
あたしの母さんは、いつも元気で、あたしより喋りが多くて、あたしより先に、あたしより多く喋るんだよ。」

「いつも、あたしのことが、一番大好きって、あたしの話は楽しい、今日の話はまだかな?って。」

「あたしの、あたしの母さん。
どこに行っちゃった?
帰ってきてよ。
あたしはずっと呼んでいるのに。
返事をしてよ。もう、待てないよ。」

母親の体にしがみついて泣くベリーベリー・イニーの背中を父親は、撫で続けた。

夫の目から見て、妻の容態は、現状維持さえも厳しいように思う。

寝たきりの妻を介助する人手がない。

どうしたものか。

父親が、困っている気配を察したベリーベリー・イニー。

ひとしきり、泣いた後。

「母さんは、このあたりの医療で治療出来ないって聞いたよ。
ここのお医者さんと一緒に外国に行くほうが、母さんを人質にとられることもないし、治療できる、という話しをマーゴットがしていたから、今からその話をすると思う。

あたしは、母さんをあたしの元へ取り返したい。」
とベリーベリー・イニー。
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