子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
338 / 800
第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

337.シグル・ドレマン。使用人を帯同しない貴族の男子寮の偵察、初日。

しおりを挟む
夕陽が眩しい時間は、もうすぐ終わる。

スラッルス・トークンが使用人を帯同しない貴族の男子寮に戻る前に、男子寮の寮内の偵察をマーゴットに命じられたシグル・ドレマン。

貴族の男子なんて、シグル・ドレマンには、親切にしてくれない上に、一緒にいても面白くない相手。

気が進まないったら、ない。

キリルにサボるな、と言われて、しぶしぶ、目的地に向かったシグル・ドレマン。

王立学園の敷地へは、使用人を帯同しない貴族の女子寮の医者の肩書きで、顔パスのシグル・ドレマン。

王立学園の敷地にいると、身の回りに、活気のあった頃を思い出すシグル・ドレマン。


王太子とか、その周りの人間との交流は、シグル・ドレマンの楽しみでもあった。

周りは、顔を曇らせていたけど、王太子もその側近も、シグル・ドレマンを見て、顔をしかめたりしたことはない。

話しかけたら、普通の会話になるし。

聞かれたことに答えると、褒めてくるし。

王太子の質問内容は、シグル・ドレマンにとって、興味深いものばかりだった。

王太子は、シグル・ドレマンより年下だったけど、未来への意欲があって。

王太子が気に入ったシグル・ドレマンは、王太子に頼まれたことは、最優先で調べたりした。

王太子とシグル・ドレマンの相性は悪くなかったとシグル・ドレマンは思っている。

それが、なぜ、歩む道を違えてしまったのだろう。

シグル・ドレマンには、さっぱり分からない。

キリルに話すと。

『シグル様は、王太子に利用されたんです。
シグル様に利用価値がなくなったから、シグル様は、王太子に切られたんです。

学園生活は楽しかった、と気持ちを切り替えてください。

シグル様の学園生活は、もう終わっています。

過去は、過去。
今は、今。

過去は、いつでも、綺麗なんです。

手が届かないものほど、美化されますから。』

「意味が分からない。
人の時間は途切れたりしない。
過去があるから、今があるのに、キリルは。」

つらつら考えていると、使用人を帯同しない貴族の男子寮についた。

男子寮の職員に、中を見ると断って、入ったシグル・ドレマン。

「薄暗くないか?」

シグル・ドレマンは自宅通学だったから、寮という建物の造りを知らない。

箱の中に小さい箱を並べているみたいだ。

シグル・ドレマンは、廊下を歩いている。

シグル・ドレマンの靴の音だけが響く廊下。

寮というものは、男子学生が集まっている。
騒がしい場所を想定していたシグル・ドレマン。

廊下で話している寮生は、1人もいない。

わいわいがやがやしている空間が1つもない。

静まり返っている。

夕食の時間が、終わったら、部屋に1人でこもるんだろうか?

「何が楽しくて、寮にいるんだ?」
と口に出してしまうシグル・ドレマン。

『初日、立ち止まらずに、歩き回れ。
止められるまで進め。
止められたら、進路変更するか、来た道を戻れ。』
というマーゴットの言いつけに従い、ひたすら歩く。


進行方向の寮の床に、大きく、バッテンが描かれている。

「派手に落書きしているな。」

気にせず、踏み越えようとするシグル・ドレマン。

「そっちは、立入禁止区域なんで。」
と後ろから、声をかけられた。

寮の職員が、シグル・ドレマンの背後に立っている。

こいつ、さっきまでは、いなかった。

バッテンを踏み越えようとするまで、シグル・ドレマンの靴音しか聞こえていなかった。

『どっから、湧いた?』
と聞いてみたくなったシグル・ドレマンは、職員の目と表情を見て、聞くのを止めた。

見開いた目と作り笑いしている顔。

精神的ストレスか?

医者として、職員を刺激しない方がいいと判断したシグル・ドレマンは、素直に従った。
「ああ。じゃ、通っていい道は?」

元の道を戻るシグル・ドレマン。

職員は、何も話さないで、シグル・ドレマンの前を歩く。

玄関に着いた。

今日は、もう帰っていいよな。

シグル・ドレマンは、寮の外に出た。

日は沈んだが、まだ暗くはない。

報告しろ、と言っていたから、真っ直ぐ帰るか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。

あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。 後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。 その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。 世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。 王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・ ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...