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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

332.ナーシン王国と魔法使いの不幸の始まりは、ボタンのかけ違えから。

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レベッカ・ショアは、マーゴットに教えを請うた。

世界や、家の歴史について、歴史家くらいにマーゴットが詳しいので、レベッカ・ショアは、驚いたことがある。

『知らないと、自分の首を絞める。』
というマーゴットなら、知っているだろう。

今は、4人バラバラにならない方がいい。

マーゴット、キャスリーヌ、バネッサ、レベッカ・ショアは、4人で、貴族エリアに行った。

「ソラニアの話に、ナーシン王国の名前が出てきたのは、2つの関わりが深いから。」
と、マーゴットは話し始めた。

「ナーシン王国は、元々、魔法使いに対して、フラットな位置づけをしていた。」
とマーゴット。

「特別視しない?」
とレベッカ・ショア。

「そう。国策で、魔法でできることは、魔法以外でもできるようにしていた。
能力の大小はあっても、貴族階級に、魔法使いは多かった。
でも、平民には、魔力持ちがいない。
そういう国だから。」
とマーゴット。

「そういう国は、よくあるの?」
とレベッカ・ショア。

「貴族階級と、平民は、元々が別々の集まりだった。
2つが、同じ場所に住んで、1つの国ができた。」
とマーゴット。

「征服したの?」
とレベッカ・ショア。

「魔法使いと職人が手を組んだイメージ。
国としてたつには、魔法を使える方を国の顔にした方が、都合がいいから。」
とマーゴット。

「合理的な国。」
とレベッカ・ショア。

「ナーシン王国は、魔力の大小に限らず、
誰でも同じことをしたら、
同じ結果を出せるように、を目指した。

魔法を簡略化して普及させたり、道具との互換性を高めたり。」
とマーゴット。

「ある時、男爵家や、騎士爵などの後継ぎでない子どものうちの何人かが、たいそうな、魔法の才能に恵まれた。」
とマーゴット。

「魔法使いの才能を見た国は、魔法使いを取り立てた。国の発展と、人々の生活が豊かになることを期待して。」
とマーゴット。

「立身出世の始まり?」
とレベッカ・ショア。

「後から、振り返ると、その魔法使いを国が雇用したことが、不幸の始まりだった。」
とマーゴット。

「不幸?」
と驚くレベッカ・ショア。

「最初のボタンのかけ違えにどちらも気づかずにいたことが、悲劇の引き金になった。」
とマーゴット。

「魔法使いは、魔法使いとして才能を評価されないことに、すぐに不満を抱くようになった。

魔法使いが考えついた魔法を突き詰めるのではなく、
その魔法を誰もが使えるように簡略化して、
誰もが同じ成果を得るために、リリースするという仕事に嫌気が差した。」
とマーゴット。

「魔法使いは、国に務める魔法使いになって魔法を使えば、特別視されると思っていた。

魔法使いの周りには、魔法使いのように魔法を使える人より、使えない人が多かった。

魔法使いの周りにいた魔法を使える人は、魔法使いよりも、上手ではなかった。

魔法使いは、下位貴族の出身だったから、周囲にいる人は、魔法を使わない人の比率が高かった。」
とマーゴット。

「特別視されたい魔法使いは、自分の特技を一生懸命磨き上げた。

『魔法使い様、お願いします。』

『魔法使い様しかいないんです。』

『魔法使い様、頼りにしてます。』

魔法使いが、聞きたかったのは、魔法使いが、魔法使いとして努力して、できるようになったことへの称賛。

一方。

魔法使いのできることを全国民が出来るようにして、国民のできることの底上げをしたい国。

魔法使いと、雇い主の方向性は、最初から真逆だった。」
とマーゴット。

「それは、不幸かも。」
とレベッカ・ショア。

「評価されない、ならば、評価するしかないように、目にもの見せてやると、魔法使いは、寝食を忘れて、魔法技術を向上させた。

魔法使いにできることを魔法使いにしかできないこととして、魔法使い自身をアピールした。」
とマーゴット。

「魔法使いの意欲は、魔法使いの思惑通りに受け取られることはなかった。

魔法使いに、魔法使いにしかできないことを見せられた上司は、
誰もができるように、と、魔法使いに、もうひと工夫させようとした。

魔法使いは、魔法使いのしてきたことの評価が、不当に低く見積もられていることを、上司に抗議した。

魔法使いの評価を訂正するように迫った。」
とマーゴット。

「上司は、魔法使いが、いつまで経っても、己の役割を理解しないことを良くないと、説いた。」
とマーゴット。

「魔法使いが、自分のできることやしたいことを、魔法でできるようになりました、仕事ができた、と報告してくることは。
上司にとっては、魔法使いが、途中で仕事を投げているように見えていた。」

「魔法使いに、求められていた仕事は、魔法使いが
考え出した高度な成果を出せる魔法を、全国民に使える方法を編み出すこと。」

「上司の説得に、魔法使いは、魔法使いの存在を馬鹿にしていると腹を立て、仕事をボイコット。」

「魔法使いの上司は、交代した。」

『宮仕えの悲哀。期待の新人の教育に失敗したとみなされたね、上司は。』
と前世の意識。

「魔法使いの上司は、なかなか固定せず、最終的には、王女殿下が監督することになった。」

「その後、魔法の才能を見出されて、国に雇用される若者が、ちらほらと増えていったが、全て、王女殿下の監督下におかれた。」

「なんで?」
とレベッカ・ショア。

「上司が交代できることを覚えた魔法使いは、気に入らない上司を交代させるために、魔法を使うようになった。」
とマーゴット。

「王女殿下は、魔法使いより年上で、地位もあり、魔法にも長けていた。
包容力があり、魔法使いが唯一、王女殿下には逆らわなかった。」
とマーゴット。

「今、絶対に上司になりたくない!と前世の意識が悲鳴を上げたよ。」
とレベッカ・ショア。
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