子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第7章 使用人を帯同しない女子寮の秘密

316.マーゴット。シグル・ドレマンに説く。人体実験の被験者だった女子学生の今後は？

現時点で、ナンシー・ボーンの魚憑き問題は、マーゴット達の介入する範囲ではない。

シグル・ドレマンが手ぶらで、女子寮から出てきた。

シグル・ドレマンに刺す杭を探しておくか、と考えるマーゴット。

シグル・ドレマンは、マーゴット達に向かって、一目散に駆け出してくる。

「貴族の躾を誰もしなかったの？」
とバネッサ。

「興味のないことは身につかないタイプかも。」
とレベッカ・ショア。


「いた、消えた。ナンシーは、学生生活無理だな。」
とシグル・ドレマン。

マーゴット達の近くにきてのシグル・ドレマンの第一声を聞いて、マーゴットは、ナンシーは、一目瞭然と手短に返事をした。

「何が、いた？何が消えた？」
とマーゴット。

「ゼーゼ教授。」
とシグル・ドレマン。

「わたしは、連れ出せ、と命じた。」
とマーゴット。

「あ？ああ。そうだった。最後は、消えた。」
とシグル・ドレマン。

4人の少女は、シグル・ドレマンが命令を忘れていた、と理解した。

「杭を買い出しに行かせる。」
とマーゴット。

「待て。杭は、死ぬ。」
とシグル・ドレマン。

「死んだ方が、邪魔しないだけ、役に立つ。」
とマーゴット。

「本気？待て。待て。
そうだ！顔だけナンシーを見た後、ゼーゼ教授と話をした。」
とシグル・ドレマン。

そのまま往来で話始めようとするシグル・ドレマンの足を思いっきり踏みつけてから、結界を張るマーゴット。

「使用人を帯同しない貴族の女子寮での人体実験に、
ヒイロ・ゼーゼ教授と『魔法の進化』の研究室が関わっていて、
朝から嗅ぎ回るシグル・ドレマンに王太子が直々に出てきたなら、この一件は王太子案件。
誰に聞かれているか分からない状況で、話す内容ではない。
結界内で話せ。」
とマーゴット。

「王太子殿下は、俺を嫌ってなんかいないと、教えただろう？分かっていないな。」
とシグル・ドレマン。

「シグル・ドレマンは、王太子に操られて、わたしの邪魔をした。
シグル・ドレマンが自分の手駒でいるうちは、王太子も嫌わなかったが、今は？」
とマーゴット。

「王太子殿下が、俺を操る？」
とシグル・ドレマン。

「じゃあ、ゼーゼ教授も操られた？」
とシグル・ドレマン。

「話しなさい。」
とマーゴット。

結界内で、シグル・ドレマンの話を聞いた4人の少女。

「操られていない。過去の選択を後悔している。」
とマーゴット。

「シグル・ドレマンを見ると、ヒイロ・ゼーゼ教授は、過去の過ちを突きつけられた気になるんだから、シグル・ドレマンと同じことをしたか、反対のことをしたか、だよ。」
とキャスリーヌ。

「部屋のものと一緒に姿を消したなら、もう、戻らないわ。
魔法で、研究室と女子寮の部屋を繋いでいたけれど、繋いでいた魔法を解除して、
女子寮の中に研究室があり、研究室から、研究員が出入りする環境はなくなったわ。」
とバネッサ。

「普通の女子寮に戻った？カローナは、女子寮で暮らせるかな？」
とレベッカ・ショア。

「そうね。」
とバネッサ。

喜ぶレベッカ・ショアに、待ったをかけるシグル・ドレマン。

「女子寮は、元に戻っても、患者は元に戻らない。」
とシグル・ドレマン。

「患者？具合悪そうな人いるの？」
と首を傾げるレベッカ・ショア。

シグル・ドレマンは、医者としての見解を語る。

「シグル・ドレマン。
医者として、学園側と国へ、問題提起と提案を出しなさい。

使用人を帯同しない貴族の女子寮に住んでいる女子学生の健康状態は把握しているわね？

女子学生の家に、同時に連絡を入れる。

その後は、
国と王立学園と女子学生の家の話し合いになるわ。」
とマーゴット。

「すぐに療養できる場所もある。医者なら、俺がいる。」
とシグル・ドレマン。

「命の終わりが見えている娘とその家族には、娘の命が尽きる前に話をする時間がいるわ。」
とマーゴット。

「話し合いは、いるな。」
とシグル・ドレマン。

「既に、薬を常用しなければ延命できない状態の娘を延命するかどうか、も含めて。」
とマーゴット。

「医者として、見殺しにするのは。」
とシグル・ドレマン。

「薬代。他にも、娘にかかる費用は多い。」
とマーゴット。

「それなりに、かかるが、そういうものだろう？家族だぞ。久しぶりに会う娘だぞ。」
とシグル・ドレマン。

「シグル・ドレマン。
娘は、人質として、女子寮にいた。

王太子案件に人質として、差し出した娘が帰ってくるとは、考えないのが貴族。

娘を差し出しているうちは安泰と考えるのが貴族。

女子寮にきたときから、その家で、娘の予算枠は、消えていると考えていい。

医療費の嵩む娘が家に戻ってきても、医療費をかけた分以上に、娘の働きを期待できるならともかく。

療養する娘を生かせるだけの余裕がある家も、長期間の療養となると、考えるわ。」
とマーゴット。

「シグル・ドレマンは、医者として、医者と患者以上に関与しないこと。

シグル・ドレマン自身の問題ではないから、シグル・ドレマンは、倫理観を語り、正義を振りかざす。

現実に直面しているのは、シグル・ドレマンの患者であった女子学生と、その家。

シグル・ドレマンの思いは、医者として、患者の治療方針を相談されたときに発揮しなさい。」
とマーゴット。