280 / 776
第7章 使用人を帯同しない女子寮の秘密
279.国と王家に忠誠を捧げてきたが、変わらぬ忠誠を受け取ってもらえなくなった男。職業、組織の頭で医者、シグル・ドレマン。
しおりを挟む
「そんな言い方。それじゃ。まるで。」
と医者。
「医者が、貴族として生きていくには、分家に名をあげさせることなく、現状維持させておくこと。」
とマーゴット。
「分家だぞ?本家を出し抜いて、しかも、そんな。」
と絶句する医者。
「現状、分家は名ばかりながら家名を背負うポジション。
医者は、下々に人気だが、権力者から疎まれ遠ざけられている。
分家がぱっとしない間は、下々の反発を抑えるために、医者も医者に従う者も生かされる。
ならば、分家が自身で力をつけた後は?
医者のみならず、医者に従う者は、一掃される。
不穏分子は残さない。」
とマーゴット。
声を出す余裕もなく沈黙する医者。
「お見事でございます。」
と声をあげたのは、切り裂き男。
「感服いたしました。」
と切り裂き男。
「それで?」
とマーゴット。
「私ども一党を配下にお加えください。」
と切り裂き男。
「おい!」
と医者。
「シグル様。我が国の王家の力は絶大です。
ひとたび、王家に睨まれたら、貴族として生きていくことはかないません。
シグル様が、貴族として返り咲きを願ってこられたのは、全員知っています。
これまでは、シグル様の願いを見守るだけで良かったのです。
ですが、王家が分家を使って、積極的にシグル様の排除に乗り出してきた今。
これまで通り、とはいかなくなりました。
シグル様が処刑にでもされた日には、街の住民は暴徒と化し、制圧の後に、多くの命が失われることでしょう。
この街の住民にとっては、シグル様は、永遠に若様です。」
と切り裂き男。
「だが、こいつらは、外国人だ。こいつに忠誠を誓えば、国に仇なすことになる。」
と医者。
「シグル様。残念なことに、国も王家もシグル様の忠誠は、もう必要としていません。分家がそれを叶えています。」
と切り裂き男。
「俺は、貴族として、この国で。」
と言葉を絞り出す医者。
「シグル様が、家の復興を目指せば目指す程、分家は権勢をほこり、反比例して、シグル様の幸先は良くないものとなっていします。」
と切り裂き男。
医者は、黙って聞いている。
「シグル様の守るものは、守ってきたものは、シグル様に従う私達の誇りです。」
と切り裂き男。
医者は、目を開けた。
「シグル様。
シグル様の命を危うくし、シグル様の守ってきたものをなくす未来が来る前に、シグル様の忠誠を捧げる先を選び直していただきたい。」
と切り裂き男。
「シグル様が、国と王家に忠誠を捧げた結果、国と王家に殺されるのは、私達も街の住民も我慢出来ません。」
と切り裂き男。
「どうぞ、ご決断を。」
と話すと、切り裂き男は、頭を下げた。
切り裂き男の後ろに集まっていた男が、次々にひざまずいて、頭を下げていく。
と医者。
「医者が、貴族として生きていくには、分家に名をあげさせることなく、現状維持させておくこと。」
とマーゴット。
「分家だぞ?本家を出し抜いて、しかも、そんな。」
と絶句する医者。
「現状、分家は名ばかりながら家名を背負うポジション。
医者は、下々に人気だが、権力者から疎まれ遠ざけられている。
分家がぱっとしない間は、下々の反発を抑えるために、医者も医者に従う者も生かされる。
ならば、分家が自身で力をつけた後は?
医者のみならず、医者に従う者は、一掃される。
不穏分子は残さない。」
とマーゴット。
声を出す余裕もなく沈黙する医者。
「お見事でございます。」
と声をあげたのは、切り裂き男。
「感服いたしました。」
と切り裂き男。
「それで?」
とマーゴット。
「私ども一党を配下にお加えください。」
と切り裂き男。
「おい!」
と医者。
「シグル様。我が国の王家の力は絶大です。
ひとたび、王家に睨まれたら、貴族として生きていくことはかないません。
シグル様が、貴族として返り咲きを願ってこられたのは、全員知っています。
これまでは、シグル様の願いを見守るだけで良かったのです。
ですが、王家が分家を使って、積極的にシグル様の排除に乗り出してきた今。
これまで通り、とはいかなくなりました。
シグル様が処刑にでもされた日には、街の住民は暴徒と化し、制圧の後に、多くの命が失われることでしょう。
この街の住民にとっては、シグル様は、永遠に若様です。」
と切り裂き男。
「だが、こいつらは、外国人だ。こいつに忠誠を誓えば、国に仇なすことになる。」
と医者。
「シグル様。残念なことに、国も王家もシグル様の忠誠は、もう必要としていません。分家がそれを叶えています。」
と切り裂き男。
「俺は、貴族として、この国で。」
と言葉を絞り出す医者。
「シグル様が、家の復興を目指せば目指す程、分家は権勢をほこり、反比例して、シグル様の幸先は良くないものとなっていします。」
と切り裂き男。
医者は、黙って聞いている。
「シグル様の守るものは、守ってきたものは、シグル様に従う私達の誇りです。」
と切り裂き男。
医者は、目を開けた。
「シグル様。
シグル様の命を危うくし、シグル様の守ってきたものをなくす未来が来る前に、シグル様の忠誠を捧げる先を選び直していただきたい。」
と切り裂き男。
「シグル様が、国と王家に忠誠を捧げた結果、国と王家に殺されるのは、私達も街の住民も我慢出来ません。」
と切り裂き男。
「どうぞ、ご決断を。」
と話すと、切り裂き男は、頭を下げた。
切り裂き男の後ろに集まっていた男が、次々にひざまずいて、頭を下げていく。
1
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる